労働分配率
人件費はどの会社でも固定費の多くを占める重要な経費です。経営上、その人件費を適正な金額に保つための方法として、「労働分配率」を見ていく方法があります。この労働分配率は、売り上げに対する人件費の割合を示すものではなく、限界利益に対する割合を示すものです。
この限界利益とは、売り上げから変動費(仕入れや外注費など売り上げと一緒に変動する経費を指します。)を差し引いたものです。通称あら利と言っているものです。
そして業種により、若干の差はあるものの、その割合は、約50%前後が理想とされています。しかし、ここで人件費の中には役員報酬が含まれることに気をつけなければなりません。ご存知のとおり役員報酬は、同族オーナー企業ではある程度、自由に設定することができるからです。毎月の役員報酬を取らず、労働分配率が低いと喜んでも始まりません。
そしてこの人件費には役員報酬のほか、会社の社会保険料の負担分、福利厚生費なども含まれることに注意が必要です。従って、私は役員報酬と給料を分けて見る必要があると考えています。
目安は、役員報酬の限界利益に対する割合は10%から20%、給料の割合は30%から40%と考えています。労働分配率は低いが、各人の個々の給料は高いという経営を目指さなければならないということは、言うまでもありません。
さて、ここで考えなければならないのが役員報酬の取り方です。役員報酬をどのように設定すべきか、経営者から良く聞かれる問題です。私は、そのような時、まず「役員報酬は給料ではない。」と答えています。役員報酬は節税上のただの数字であることを経営者の方に認識してもらうようにしています。その年度に予測される経常利益から役員報酬を決めていきます。
すなわち、節税上、最も有利な金額が法人に残るように役員報酬を決めていきます。中小同族企業は、法人と個人で内部留保の蓄積効率を最大限に上げ、会社を強くしていかなければならないからです。
一人当たりの経常利益は、黒字企業の平均で約67万円、優良企業の平均は約200万円です。20人の優良企業なら4000万円の経常利益が目標となります。仮に、決算書上の経常利益が2000万円でしたら、ただの数字である役員報酬の金額から2000万円を差し引いた金額が、社長の本当の給料となります。
もし役員報酬が2500万円なら、社長は個人的には500万円しか使えないということを肝に銘じて、(通帳を別にするのも一法です。)おかなければなりません。そして、残りのお金はあくまでも会社から預かっているものと考え、手はつけず、会社が困ったときは優先的に会社に出さなければなりません。勘違いして全部個人的に使ってしまうと大変なことになります。多くの社長さん方、身に覚えがあるのでは・・。
社長は、連帯保証はしなければならないし、その上、役員報酬も自由に使えないのでは、なんとも割りに合わない商売だと、愚痴の一つも出てしまいがちですが、それに負けないくらい利益を出せる強い会社にしていきましょう。応援しています。
2011年8月30日 著 者 千葉 和彦