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2011年8月 3日 (水)

母の内職

 私が小学生から中学生にかけて、母は内職でセーターを編んでいました。朝早くから夜中まで、ブラザーの編機の音が鳴り響きました。地元の洋品店の下請をしていたのです。

弟は小さい頃から手が器用だったので、毛糸をほぐし上手に丸く毛玉を作り上げ、良く母の手伝いをしていました。私は不器用なものですから、ただ感心して見ているばかりでした。

ある日、小学校から家に帰ると担任の先生が自宅に来ていて、母と何やら楽しそうに話していました。その先生は、セーターをいつもその洋品店に頼んでいたのですが、母がその下請をしていることを知り、(私が小学校で先生のセーターを指差し、「そのセーター、僕のお母さんが作ったんだよ」といったことが原因でした。)直接頼みに来るようになっていたのです。今思うと、その洋品店と母には迷惑をかけてしまいました。

 岡山県倉敷市児島には、内職の主婦たちが戦力となり、子供服を大ヒットさせている会社があります。「㈲マルミツアパレル」という会社です。子供服はすべて1955円、ブランド名はJIPPON(ジポン)で、月3500着を売り上げます。

中国にも負けない低価格、しかも、高品質を実現させ国内では大評判、さらに中国に輸出も始めました。倉敷市児島は、もともと学生服縫製で日本一の街です。過去には、全国から集団就職でミシン掛けの女性が集められました。

その女性職人たちの多くがこの土地との「つながり」ができて、住み着いているのです。もう一度彼女たちの力を生かせないだろうか。社長は何度も何度も内職の主婦を探しながら駆けずり回りました。

その結果、今ではミシン歴40年以上のベテランが26名いて、一日80着~100着を縫い上げます。ミシンは主婦持ちで完全出来高制ですから、10万円以上の収入があります。ある内職の主婦は「私はミシン以外何もできません。スーパーでレジを打つという気にもなれんけん。ミシンは手足のようなもんです。」と話し、毎日、年季の入ったミシンを踏んでいます。

 衣類の業界では、日本で流通する衣料品の実に83%を中国製品が占め、中国に負けていることを実感している人は多い。そんな逆境の中、日本女性の底力を発揮したのが、児島の内職の主婦でした。

サッカーで優勝した「なでしこジャパン」も素晴らしかったですが、児島の内職のおばちゃんたちも負けないくらい素晴らしい。その仕組みを考えた社長は、もっと凄いかも・・・。

経営戦略上では、低価格・高品質作戦ですが、これは資金がたっぷりあり、大型の設備投資ができる大企業しか取れない戦略です。それをたった3人の社員の会社が実現したのだから、凄い。

社長は「中国で作ったほうが、安くあがるから、と言うてみんな中国に出ていった。まあ、悔しいし、それに対する反乱ですわ。日本でもこれだけのものが、やり方次第では、できるんじゃと」「負けてたまるか!」という社長の強い思いが、この仕組みを生み出し、成功させたのです。

 我々も会社経営する上で、この「負けてたまるか!」という精神を大いに見習い、経営に取り組んでいきたいものです。社長頑張れ。応援しています。

2011/07/31  著者  千葉 和彦

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コメント

素晴らしい内職ですね。

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