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2011年5月31日 (火)

緊急経営改善計画その2

 東日本大震災から3ヶ月になろうとしている。地震や津波、原発のトラブル等による直接的な被害に加えて、風評被害など当初予想しなかった二次被害が多くなってきた。特に、観光や広告、飲食業などの非製造業で、この傾向が強いようだ。景気回復までどのようにして持ちこたえるか悩んでおられる経営者の方が多いと思うので、今回は質問に答える形でまとめてみました。

質問① この度の震災の影響で売上高が急激に減少し業界の先行きも不安です。これからはどのような経営を目指せばいいのでしょうか? 
 
≫①答 まずは、原点に立ち返り、キャッシュ・フロー経営に徹することです。

質問② 「キャッシュ・フロー経営」とは良く聞くのですが、具体的にどのようなことを言うのですか?

≫②答 常にお金の「出」より「入り」が多く、お金が残る経営のことです。「勘定合って銭足らず」と言う言葉があるように、たとえ利益が出ていても資金が不足することがあることをしっかり理解しなければなりません。そしてこのような緊急な事態には、最悪な事態でも資金が回るような事前の準備が必須です。

質問③ それはわかりますが、今の売上ではどのようにがんばっても固定費をまかなっていけません。いつ景気が回復するか見通しも立たないため、不安で夜も眠れません。いったいどうしたら良いのでしょうか?

≫③答 うまくいっても震災前の水準に戻るのに約1年かかるでしょうから、固く見て、2年~3年間は非常事態を踏まえた「緊急経営改善計画」を立てて実行していく必要があります。

質問④ その「緊急経営改善計画」とはどのようなものでしょうか?

≫④答 言葉の通り、通常時ではなく、リーマンショックや災害等の異常事態が生じた時に立てる計画です。特に売上と人件費(人員)計画それに資金計画が中心になります。3年後に大きな利益が見込めても、途中で資金が底をつけば、その時点でアウトです。
最悪の場合でもそうならない資金計画が立てられるかです。今赤字でもお金があれば生き残れます。しかし、それも3年が限度です。経営者が3年後には必ず黒字にするという強い意志を持って本気で取り組めるかどうかが分かれ道です。
公的資金等を上手に活用しながら、一日も早く黒字化を目指す計画こそが「緊急経営改善計画」です。

是非、一緒にがんばりましょう。

2011年5月31日  著 者   千 葉 和 彦

2011年5月 2日 (月)

緊急経営改善計画

 巨大地震からすでに一ヶ月以上経過した。少しずつではあるが、前向きに動き出している。

私の関与先であるA社は、社屋も機械も車もすべて流されてしまったが、緊急にプレハブを建て、機械や車を他県から借りてきて、すでに以前より忙しく動き出している。

そのA社長が震災翌日、憔悴した顔で私の前に現われた時には、内心これからいったいどうなるのだろうという不安感に私自身も襲われた。水道も電気もない、スタッフもいない薄暗い事務所で今後のことを二日間にわたり話し合った。「これからまた大きな借金を背負いやり直す気力はない。すっかり心は折れた。」と話すA社長に、かける言葉もなかった。

今回の被災の大きさには、下手な励ましの言葉は、何にもならない。私が目の当たりにした数々の光景は「想定外」などという安易な言葉さえ、拒絶するものだ。仙台出身の作家の熊谷さんは、「人間は何をどう想定しようと、人智をはるかに超えた力を、時に暴力と言う形で解き放つのが自然だということを、私たち東北人は誰に教えられることなく知っている。だからこそ私たち東北人は、自然に対して謙虚に向き合い、その厳しさに耐えることを当然として生き続けてきた。だから、今回の震災に対しても、失ったもののあまりの大きさに嘆きこそすれ、恨むことはしていない。ただ黙々とその日に出来ることをひとつずつ積み重ね、日常を取り戻すための辛抱をするだけだ。」と話している。

 こんな時、我々会計人のできることは限られている。固定電話がつながり、すぐ私が指示したことは、命を繋ぐ資金調達のために日本政策金融公庫へ連絡することだった。そして無理を言って、二日間にわたり当事務所を窓口に緊急融資相談会を実施した。

しかし、融資を受けた企業は、阪神大震災を教訓に、今回の融資を単に延命効果で終わらせないようにしなければならない。そのためには、まずは「緊急経営改善計画」とも言える現実的な計画が必要だ。この「緊急経営改善計画」は、より現実的に実現可能なもので、かつ借入先金融機関の協力も得られるものでなければならない。

その際の第一条件は、何はともあれ、経営者が覚悟を決め、本気で取り組むことだ。先月の私のエッセイでも書かせていただいたように、経営者が心を折らなければ(たとえ借金を返せまいが、不渡りをだそうが)会社は決して潰れないということを肝に銘じて、覚悟を決めて経営改善に取り組むことが重要だ。

取引先の被災から売上が大きく落ち込むことが考えられる場合には、売上高を上げる計画が中心になる。売上を将来上げられなくては、いくら融資を受けても延命措置になりかねないからだ。そうは言うものの、簡単に売上を増加させられる環境にないので、実現可能な範囲での増加を目指す。同時に経費の削減が必須だ。

しかし、成果を上げるには一定の時間を要するので、最低3年から5年先の資金繰り計画が必須だ。その際、収入は控えめに、支出は余裕を持たせた上で、十分に資金が回ることを確認しながら取り組むことが重要だ。そのための支援はいつでもできますので、遠慮なく相談してください。応援しています。

2011年4月29日  著 者  千 葉  和 彦

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