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2010年5月 6日 (木)

平成22年税制改正について

 今回の民主党の改正で、高く評価できる点は、その改正のプロセスを大きく変えた点である。
自民党時代には、政府と自民党からなる2つの税制調査会が存在し、政府よりも自民党で決めたことが、優先した。しかし、民主党は、与党税調を廃止し、政府税調に一本化した。又今回は時間がないため不可能と思われていた、いわゆる「オーナー課税」を4月1日以後終了事業年度から廃止した。
この素早い手の打ち方を見て、私は、今後の民主党政権に大いなる期待を抱いた。

しかし、マニフェストに書かれていた中小法人に対する減税は、税収不足もあり、先延ばしにされた。今後景気が回復し、赤字企業が減れば、来年度の改正事項として土俵に上がってくると考えられる。

 所得税は「所得控除から手当へ」のスローガンの下、子ども手当の創設、扶養控除の廃止、縮減が行われる。その結果、子育て中の方には朗報である。しかし、財源は確保できていないため、将来に一抹の不安を覚える。

 相続税では、「定期金評価の見直し」で、その節税策のひとつが封じられた。
相続税制そのものの改正は時間の関係で見送られたのがせめてもの救いだが、その税制改正大綱の中で、「今後、格差是正の観点から、相続税の課税ベース、税率構造の見直しについて平成23年度改正を目指します。」とはっきり今後の方向を述べている。相続税の改正は自民党時代から「遺産取得課税方式」に改正すべしと話題になっていたが、長男に不利になるその改正は、某農業団体の強い反対もあり、見送られてきた。

 それに対し、民主党は「遺産課税方式」を考えているようだ。現在の「法定相続分課税方式」から「遺産課税方式」への転換だ。
現在は、法定相続人の数に応じて基礎控除の枠が広がるが、改革後は相続財産からまず税金を天引きして、残りの財産を相続人で分ける仕組みに変える。現在の一律5000万円の基礎控除を縮小し、準富裕層からも幅広く取り、相続税の対象を2~3倍に増やしたい意向のようだ。

この方式(基礎控除を3000万円と仮定して試算)だと相続財産6億円で相続人3人(妻、子2人)として、約12000万円の税額が発生し、丁度現在の方式の約2倍になる。相続財産が自宅と現預金で8000万円の場合は、現在の方式では課税されないが、この方式になると、約800万円の納税が発生することになる。ある財務官僚は「消費税増税を国民に納得させるには、まず『金持ち増税』をするというのが民主党の考え方だ。」と話している。

 富裕層の所得税の増税も検討されており、今後の方向性は、個人の増税、法人の減税である。法人はあまり増税すると海外に逃げられるが、英語にも弱い国民、個人は簡単には逃げられないということだろう。とすると、今後は法人で、できるだけ利益をだし、将来に少しでも繰り延べしていくという方法が有効と私は、考える。

税制は、経営に大きく影響を及ぼすので、今後どのような方向へ改正が進むか、経営者はしっかり勉強していかなければならない。
 
 2010年4月29日  著 者 千葉 和彦

(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
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