経営分析の落とし穴
「黒字企業の『自己資本比率』の平均は約30%ですので、まずは30%を目指し、その後は40%以上を目指してください。でも40%を達成しても油断してはいけません。さらに60%以上を目指しましょう。何故ならメガバンクは60%以上ないと10点満点くれないからです。」
「何故40%以上を目指してほしいかといえば、私の経験上そのくらいあると万が一の場合でも会社は潰れないからです。」
と話すと、セミナーの受講生から「先生、自己資本比率40%以上でも私の叔父の会社潰れてしまいましたが・・・。」と鋭い質問が向けられました。
そうなのです。自己資本40%以上でも本当に潰れるのです。それは、貸借対照表の資産の中に不良債権や不良在庫、含み資産を抱えたままで、自己資本比率を計算しても当てにならないのです。すなわち、全ての勘定科目を時価に計算しなおし、時価貸借対照表を作成し、そこで自己資本比率40%以上を目指すようにしなければ、だめなのです。
この点に関しましては、今月の後継者塾で「財務体質を強くする為の経営者の心構え」と題して講師を勤められた大友先生も強調されていました。
ところで、同様のことが、自己資本比率だけでなく他の経営分析にも言えます。中小企業と上場しているような大企業では、基本的に経営戦略が異なるのと同じです。
たとえば、労働分配率(粗利益に占める人件費の割合です。)の計算でも、当社は40%に抑えられているから、他の労働分配率が60%以上の会社より優秀と言うことにはならないのです。
それはその中に役員報酬が含まれていますし、それは多くの中小企業の場合、戦略的に上げ下げが可能だからです。金利にしましても、社長からの借入では金利をもらっていなかったりしますから、教科書的に率を分析しても実態はつかめません。経営分析の手法を活用する場合は、そのような中小企業の特徴を把握しながら、しかも資産は時価に置き換えて分析しなければ、経営判断の参考にはなりません。経営者の皆さん注意してください。
そのためには、実態を正しく反映した貸借対照表、損益計算書が必要になります。たとえば、毎月の試算表にも減価償却費や賞与や退職金、年払いの保険料、地代家賃を概算で計上するのは勿論、貸借対照表にはリース債務は勿論、将来の退職金の引き当てなども計上していくことが重要です。
そして売掛金、在庫から、不良品は除き・・・すなわち今売ったらいくらかという時価で計上しなおし、戦略を立てることが重要です。しかも、そのままの金額が時価になる現金預金がなんといっても一番重要です。現金預金を十分に持った経営を最終的には目指さなければなりません。
もう一度その原点に立ち返り、経営戦略を立てていきましょう。
2010年3月26日(金) 著 者 千 葉 和 彦
(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
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