保証人の地位は相続される。
5年ほど前に、乳飲み子を抱えた30代の女性から相談を受けた。その方は2ヶ月ほど前に御主人を急に亡くされ、途方にくれていた。見ていても気の毒なほどのやつれようだった。
問題は、御主人に奥様の知らなかったかなりの借金があることだった。借金の中には、かなり高利なものも含まれていた。それを小さな子供を抱えながら返済し続けることは不可能なので、知り合いのアドバイスで相続放棄の手続きを取ろうと思っているとのことだった。
そこまでは、よくあることなので、「そのような方法で宜しいと思いますよ。」と答えた。すると彼女は、「実は主人の生命保険まで受け取れなくなるとこれからの生活に困るのです。虫が良すぎるかも知れませんが、保険だけ受け取ることはできないのでしょうか?」と質問してきた。私は即答で「大丈夫ですよ。生命保険金は受取人の固有の財産ですから、相続財産にはなりません。安心して受け取って、今後の生活の糧にしてください。」と答えた。
これで一件落着かと思いきや問題はその後におきた。3年ほど経ったある日、その方からまた電話をいただいた。「先生、当時はお世話になりました。おかげさまで親子3人何とかがんばっています。ところで、先生、私の亡くなった主人の伯父の奥さんが血相を変えてのりこんできたんです。これから御相談にうかがっても宜しいでしょうか」
うーん…何やら弁護士さんの分野の話ではないかなと思いながら、「奥様、私も急には無理なので、もし宜しかったら電話で概要教えていただけませんか?」とたずねた。すると以下のような話をされた。
亡くなった御主人の伯父に当たる方が、甥である御主人の借金の保証人をしていて、その伯父もその御主人が亡くなった後すぐに亡くなり、その伯父の奥様に借金返済の請求が届いたということです。伯父さんには、借金もなかったため、遺族は、普通に相続を済ませていたそうです。
しかし、問題は、家族の知らないところで甥の保証人になっていたことでした。甥の相続人が全員相続を放棄したため、その保証人の地位がそのまま伯父の相続人に引き継がれてしまっていたのです。
相続の放棄は相続の事実があったことを知ってから3ヶ月以内ですから、伯父の相続人が放棄することももはや不可能です。
被相続人が債務保証していることを遺族が知るには、今回のようなことがないとわかりません。順調に支払いがされている間は、問題にもならないし、債務控除の対象にもならないからです。ある意味「保証人になる。」ことは「借金がある。」ことよりリスクが高いかも知れません。
従って、債務の保証をしていることは、家族などにもきちんと伝えておく必要があります。
「俺は誰の保証もしていない」という社長さん…会社の借り入れの保証もこの中に入るのです。借金の額だけでなく、自分がいくらの金額の保証になっているかも日頃から意識していないといけません。
是非この機会に拾い出すことをお勧めします。
2009年 9月28日 著 者 千 葉 和 彦
(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
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携帯版URL:http://homepage1.nifty.com/chiba-kaikei/mobile/mobile.htm
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