経営承継円滑化法…会社株式の贈与
ある経営者が後継者の長男に自分の持っている自社株をすべて時価の2000万円で贈与しました。(贈与財産2500万円まで非課税の相続時精算課税を活用しました。)長男は、そのことを意気に感じ、その後、昼夜を問わず必死で働き、親が亡くなった10年後には、会社も大きく成長し、会社株式の時価は2億円にまでなっていました。
親が亡くなった時の相続人は長男と長女の2名です。親の残した財産は現金5000万円でした。常識的に考えると、相続人2人でその遺産を2500万円づつ相続し、問題なく終了しそうですが、ここで思わぬ問題が生じました。法律関係の仕事をしている長女の夫から、すでに親から贈与された自社株を相続財産に加えて遺産分割すべきだと言ってきたのです。
長男は、自社株を相続時精算課税で贈与を受けていたので、仕方がないことと考え、了解しました。相続税の計算では、相続時精算課税を受けていた場合は、何年経っても(通常の贈与の場合は相続発生の3年前までを加算すればOKです。)贈与時の時価で相続財産に加算し、相続税を計算しなければならないからです。長男は、相続財産の現金に2000万円を加えて7000万円を二人で分けるのだから、妹に3500万円分ければ良いのだなと考えました。
ところが、妹の夫から、自社株は相続時の時価で計算しなければならないから2億円を加算し、それを分割するから、妹の相続分は12500万円あると言ってきたのです。親の残した現金5000万円をすべて分けても7500万円不足です。長男は困り果ててしまいました。
長男は「親父が遺言していてくれたら良かったのに・・・」と思いました。しかし、たとえ遺言があっても遺留分6250万円ありますから、やはり相続財産の現金では払いきれません。経営に関係ない妹に自社株で払う以外に方法がなくなり、自社株は分散し、経営も不安定になりかねません。
そこで今回の経営承継円滑化法(以下「新法」という。)では、当事者全員の合意を条件に、生前に贈与した株式等を遺留分算定基礎財産から除外できるようになりました。あるいは、生前に贈与を受けた自社株式等の評価額をあらかじめ固定できることになりました。
この場合ですと2000万円で持ち戻されることになります。これは、後継者への株式等の集中を促進し、その負担軽減につながります。
今回の新法は、大きく三つの柱からできています。①遺留分に関する民法の特例②金融支援(公的機関が個人に融資するのは初めてのことと言われています。)③自社株の相続税の納税猶予制度です。今回は①について詳しく解説しました。次回は②③について詳しく解説していきたいと思います。朝晩急に涼しくなりました。風邪など引かれませんようお体ご自愛ください。応援しています。
2009/08/28 著 者 千 葉 和 彦
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