「経営理念」は金鶏である。
今年、2月のエッセイで「老舗企業に学ぼう」と題して書いてから、各方面の創業100年以上の会社を調べてきた。そして調べれば調べるほど、その凄さがわかってきた。今「100年に一度の危機」と言われ、多くの企業が試練に立たされている。しかし、創業200年以上の会社(世界全体の40%は日本に集中しており、3100社あると言われている。)にしてみれば、何度もこれ以上の危機を乗り越えて今日に至っているのだ。
老舗の社長に、その長寿の秘訣を聞くと、多くの皆さんが「背伸びをしない。身の丈経営ですよ。」と答えられる。私はこれを聞いた時、規模の拡大を追わない、とにかく余計なことには手をださない手堅い経営のことを言うのだと思っていた。しかし、その一方で、
「伝統とは革新の連続である。」と多くの方が言っている。一見、この二つの表現は矛盾するようにも聞こえるのである。考え方の違う二つのタイプの経営者がいるのだろうか?
しかし、良く考えを聞いていくと、この二つの表現は決して矛盾しないことに気づく。
まず「身の丈経営」は、決して規模の拡大を追わない、手堅い経営のことだけを意味するのでなく、代々引き継がれた「社是」「家訓」「経営理念」に基づいた経営判断を行っていくことを意味するのだ。「経営理念」に従い、決して、目先の損得では判断せず、ほんとうにお客様に役立てるかどうかで判断する。そして、その理念に従いながら、時代の変化には大胆に挑戦して行く。それが老舗企業の真の姿だ。
多くの会社が明確な「経営理念」を掲げていない。掲げてはいるものの、額縁に入ったまま壁飾りになっている。「経営理念」は社長が本気で思い、社員も同じ思いでいなくては、単なる「絵に描いた餅」だ。この際、壁飾りになっている経営理念をしっかり考え直してはいかがだろうか。「経営理念」はお世話になっている社会に対する恩返しと貢献を常に念頭に置いて考えたものでなければならない。それは会社そのものが社会的存在だからだ。
社長の熱き思いを社長自身の平易な言葉で表現したものが良い。難しい故事成語などにこだわる必要はない。日経ビジネスは平成7年8月号で、日本の企業の過去20年間の営業利益の伸び率を「経営理念」のある会社とない会社で調査した結果、ある会社は7.8倍の伸び率、ない会社は3.6倍の伸び率で約2倍以上の開きがでた。(この頃の日本経済は丁度右肩上がりで、誰が経営しても利益を出すことができた時代である。)
アメリカの老舗J&Jは、過去74年間の増収を続け、又、44年間増配を続けたことで有名だ。その秘訣は、ずばり「経営理念」にあると語っている。入社面接でも役員会でも自社の「経営理念」に従って実行できたかどうかから議論に入るそうだ。そして、更に「経営理念は我が社の利益を生み出す金鶏である。」とまで言い切っている。
是非、貴社にふさわしい「経営理念」を掲げ、この「100年に一度の危機」を乗りきって欲しい。社長がんばれ。
2009年6月29日 著 者 千 葉 和 彦
(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
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