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2008年11月26日 (水)

生命保険金は相続財産ではない。

 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が平成20年5月9日に国会で成立し、相続税の改正に方向性をしめした。その目玉は、「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」と「相続税の課税方式の見直し」である。この制度は平成21年度の税制改正で実現し、平成20年10月1日に遡及して適用することとされている。

 相続税の課税方式の見直しでは、現行の「法定相続分課税方式」から「遺産取得課税方式」に大きく変わる予定である。相続により取得した財産の額が同額であっても、現行制度では、法定相続人の数で税額が異なってしまうなど不公平な側面があった。それをなくすために改正されるのである。

この新制度は、相続等により遺産を取得した者を納税義務者、そしてその者が取得した遺産を課税物件として課税する方式であり、自己が取得した財産だけで、正確な税額の計算・申告ができることになる。ここで注意が必要と思われるのが、相続人が受け取った保険金への課税である。

例えば相続財産が自宅(評価額2000万円)と生命保険金(5000万円)だけで、相続人は長男(自宅を取得)次男(保険金を取得)の2名だけというケースである。現行の方式なら課税されない。しかし、新方式になると次男の方が、控除を差し引いた金額2000万円(基礎控除2500万円、生命保険控除500万円・・・まだ確定ではない)に課税される可能性が高い。すなわち政府は、課税の裾野を広げ、5000億ほどの増収を見込んでいるようである。静かなる増税である。

 話は変わるが、そもそも保険金は相続財産ではない。相続税法上だけで課税財産と見なして課税するだけである。上記の場合は、次男の固有の財産ということになる。ですから、相続放棄しても生命保険金だけは受け取れる。では次男だけが受け取った保険金は、被相続人からの「特別受益」に該当するのだろうか。

生前受益の対象は「遺贈、婚姻、養子縁組のため・生計の資本としての贈与」と限定されている。平成16年10月に最高裁で「生命保険金は特別受益に該当しない」と判決がだされた。もし親が自宅を長男に相続させる代わりに、次男に保険金を受け取らせた場合、次男は保険金をもらったのだからということで、親に感謝しながら、自宅を長男に相続させるという遺産分割協議書にハンコをつけば一件落着だが、保険金は次男固有の財産であり、相続財産ではないということでハンコをつかず、自宅を法定相続分の通り半分づつに分けるべきと主張することも法的には、可能になる。

もし被相続人が長男に自宅をと遺言をしていても、次男には25%の遺留分減殺請求が可能であり、同様に兄弟間で揉めることになる。生命保険金の受取人をこの機会に見直し、余分な課税を浴びたり、揉めることの原因にならないように事前に準備しておくことがますます大事になる。

保険金は相続税の納税資金としてもっとも優れているものだ。このせっかくの保険金を無駄な争いのもとにしないよう気をつけていきましょう。

 2008年11月24日   編 集 人  千 葉 和 彦

(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
    URL : http://homepage1.nifty.com/chiba-kaikei/index.html

携帯版URL:http://homepage1.nifty.com/chiba-kaikei/imode/imode.html

2008年11月 6日 (木)

経営承継計画」で次世代へのバトンタッチをスムーズに!

 日本企業の社長の平均年齢は約60歳、そして67歳では退きたいと考えている。しかし60歳以上で後継者が決まっているのは半分以下、決まってはいるけれど何の準備もしていない企業が80%。

この統計は早急に「経営承継」の準備に取りかからなければ、後継者難で廃業に追い込まれてしまうことを物語っている。毎年廃業に追い込まれる企業は29万社で、そのうち後継者難で廃業に追い込まれる企業は9万社といわれており、そこで働く社員の雇用も20万~35万人失われている。

 長年培ってきた技術、ノウハウ、お得意様を引き継げず、消えてしまうことはそこで働く社員たちも路頭に迷うことになり、大きな社会問題である。従って「経営承継計画」は経営者が必ずやらなければならないことである。
 「経営承継」は先代が創り上げてきた「価値」を次世代に「繋ぐ」ことである。後継者は、「価値」を「受け継ぎ」時代に合わせて「革新」していかなければならない。右肩下がりの厳しい環境の中、会社を引き継ぎ、更に発展させていくことは、並大抵のことではない。これからの後継者には創業者以上の経営能力が必要といわれる由縁である。

 後継者は、腹を据えて、経営に取組まなければならない。会社の「商号」も変え、「業態」も変え、「組織」も変え、「第二次創業」をするくらいの気構えがなければ、後は継げないと「覚悟」しなければならない。
 何故なら大きな「社会の変化」の波・・・人口減少のなかでの少子高齢化。そして押し寄せる「時代の変化」・・・年間2000万人以上の外国人の往来、結婚する15組に1組は外国籍という現実・・・避けて通れない国際化の波。これらの変化を踏まえ「制度」が大きく変わっていく・・法律、年金、税金そして社会全体が変化していくのだ。

 後継者はそれらの変化に対応し、「組織」を革新させながら、5年後、10年後を見据えながら自社を引っ張っていかなければならない。経営者の一番の仕事は、自社の現状を踏まえながら、自社が5年~10年後何で飯を食べていくかを決めることである。その仕事を徹底していくことで社員を路頭に迷わせることなく、更に自社を発展させることができるのだ。そのためには、自社の現状分析で「強み」「弱み」をしっかり分析しながら、「経営承継」を踏まえた「経営計画」を立て、先代と共に、PDCAのサイクルをしっかりまわしていくことに尽きる。先行型の業績管理システムをしっかりと自社に定着させることだ。

10年以上前から「事業承継」と「経営計画」に取組んできた「我が社」の出番がきたと強く感じている。しっかりと次世代にバトンタッチでき、更に発展するように「サポート」することが、我が社の役割と強く感じている。中小企業を守るために、「経営承継計画」のサポートに全力で、取組んでいく「覚悟」である。そのためには、後継者の方のための「後継者塾」も順次開催していく予定である。是非参加を待っています。

    2008年10月27日  文 責 千葉 和彦

(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
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