新「会社法」を踏まえた事業承継-その1-
事業承継は、いかに後継者に自社株を継承させ(できれば発行済み株式の2/3以上)経営権を集中させられるかがポイントです。
しかし、その肝心な後継者が決まっていない場合には、会社の5年後、10年後を考えながら、後継者を誰にするかをまず決めなければなりません。
中小企業の場合は、一般的に①親族内承継(最初に子息・子女、次に経営者の妻や兄弟が選択されます。)②従業員等への承継・外部から雇い入れ
③M&A(企業の買収、合併)です。通常、連帯保証の関係から①~③の順番です。ただしいずれも不可能な場合は、残念なことに、廃業に追い込まれます。
経営権の承継で一番大切なことは自社株をできるだけ早い時期に後継者に移譲していくことです。
通常は暦年課税制度か相続時精算課税制度を上手に組み合わせて贈与していくことになります。
先日関与している社長が「そんなに息子に株を上げてしまったら息子に追い出されてしまうよ。俺はまだまだ元気だから・・・」と心配されていました。
確かに長年、苦労して築き上げてきた会社は、目の黒いうちは自分がオーナーだという気持は、私にも痛いほどわかります。
そんな時は、新会社法を活用して「拒否権付株式」を持たれてはいかがでしょうか。すなわち「黄金株」と呼ばれる株式で、これが一株あれば合併や代表取締役の選任など株主総会で可決されても拒否することができます。
まさしく後継者の独断専行的な経営を防ぐ切り札になります。
とは言いましても、高くなりすぎた自社株はそう簡単に多くの株数を動かせません。多くの株数を所有したまま相続が発生することの方が多いでしょう。
相続人は、後継者の長男、サラリーマンをしている弟、嫁に行った妹の3人兄弟。しかも相続財産は、いくばくかの現預金、自宅、会社の土地建物、自社株というケースでその相続財産の評価額の大部分は自社株というケースが多いようです。
その場合、どうしても自社株も兄弟に相続させないと遺留分を超えることができないのです。この場合も新会社法の種類株式が活用できるといわれています。
すなわち兄弟には配当優先無議決権株を相続させ、後継者は議決権株を相続させる方法です(しかし、私は、配当を出したこともない中小企業には非現実的だと考えています。もし、配当を出したとしましても、毎年出し続けることは、経営の重荷になることは必須です)。
会社契約の保険の他に、長男を受取人とする高額の生命保険金に加入し、遺留分相当額を受け取った生命保険金から「代償分割」していくのが、シンプルで現実的な対策になります。会社は、できるだけ自社株を経営に関与しない相続人から買い取ります。その際、今回の「会社法」ですぐにでも定款を変更しておいた方が良いのが「相続人に対する売渡請求条項」です。これは株式を相続した者が会社にとって好ましくない場合、会社が相続人に対して「株式を売り渡すことを請求できる」というものです。いずれも目的は後継者への「経営権の集中」です。次回も、まだまだある対策について経営者の皆さんと考えていきたいと思います。
2008年3月31日 文責 千葉 和彦
(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
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