経営に生かす保険の活用・考え方について
今月のオーナーズセミナーのテーマは「経営に生かす保険の活用・考え方」でした。聴講者には保険会社の方もたくさん出席されていたようなので、少し話しにくかったというのが正直な感想です。
保険は、その用途と目的に応じて加入しないと、無駄な保険料を払うことになります。「何のための保険か」目的をはっきりさせて加入することが重要です。
会社経営者には、万が一の場合の経営のリスクを避ける重要な責任があります。すなわち「企業防衛」としての保険の加入が必須です。
私も15年ほど前、当社の関与先の社長に保険を勧めたことがあります。社長は大の保険嫌いで、何の保険にも加入していませんでした。がっしりとした体格の方で、健康にも自信があったからです。
私は「万が一に備えて」の場合の、借入金返済分と遺族への退職慰労金として、最低1億円の保険が必要と説得し、渋る社長に加入してもらいました。
それから、2年後、社長は癌であっという間に50代の若さで逝ってしまいました。
急遽、息子さんが後を引き継ぎましたが、若さと経験不足もあり、業績は見る見るうちに、半分近くまで減ってしまいました。
あれから15年、息子さんもまだ若いというものの、社長としての風格も備わってきましたし、会社も先代の頃よりも伸び、業績も順調です。
「親父に急に亡くなられたときには、途方に暮れました。取引先も社員も思うように動いてくれないし、そんな時に限って、重要な取引先の倒産も重なり、泣きっ面に蜂でした。今でもあの保険金が入らなかったらと思うと、ゾッとしますね。」と若社長は私と会うと良くその話をされ、今でも感謝してくれています。
私は、関与先さんに、万が一に備え、借入金分だけは、必ず保険に加入するように話しています。業績が思わしくなく、保険の掛け金が厳しいという会社には、借入金の元金の減少に応じて、保障も減少していく保険が合理的です。その分掛け金もかなり安くなるからです。
又逆に必要以上の保障に加入している方もおられます。そのような方は、保障を見直し、保障金を減額してはいかがでしょうか。その浮いた分の掛け金で、貯蓄性の保険に切り替え、将来の退職金の準備資金にするのです。
相続対策の保険金は、相続人一人につき500万円控除がありますので、相続人の人数分終身保険に加入することが理想です。
時価と評価の乖離を活用した相続税の節税策として直接効果があるのは、「一時払い終身年金保険」です。告知のみで85歳まで加入できる保険会社もあるようです。途中で万が一亡くなっても掛け金は戻ってくるので、リスクはほとんどありません。亡くなった後、例えば遺族が11年~15年で受け取る場合は、その評価は、受け取り総額の50%ですみます。
預金に全部置いておくのではなく、このような形で分散しておくのも相続対策になるのではないでしょうか。
保険に対する先入観を捨て、リスク管理に活用し、経営に生かしていくことが、経営者の責任でもあります。
是非、自社あるいは個人で加入している保険の現状分析からはじめてください。応援しています。
2007年10月29日 文責 千葉和彦