中小企業のための給料の払い方
「先生、今度30歳の人を中途で採用することにしたのですが、給料いくらくらい払えばいいんでしょうか?」
「看護師さんたちに、うちの給料安いからよその病院に移るといわれた。看護師の業界の平均給与はどのくらいなのか教えてください。」
関与先さんによく質問されます。その都度、いろいろ資料を取り寄せてみるのですが、大企業用の統計表のようなものしかありません。中小企業のデータは、公表されておらず、労働局などの資料も大雑把すぎて参考になりません。各企業へアンケート調査をした結果をまとめているだけなのです。しかも、そのデータ、(言葉は悪いのですが)適当に書かれて返送されても検証しようもありません。見栄をはって、多めに書かれてもそれまでです。
中小企業の場合は、中途採用が多く、年齢、経験、学歴、性別ばらばらです。統計の取り様がないのです。その会社の業績、経営者の考え方で決まるといっても過言ではないでしょう。
給与は、固定費の大部分を占める重要な経費で、会社経営上も決して避けて通れない項目です。しかも、社員にすれば生活がかかっているとてもデリケートな分野です。どんなに経営が厳しくても、安易に下げたりすることもできません。業績が悪い場合は、経営責任を取り、まずは経営者自らが報酬を削減しなければなりません。会社が赤字なのに、高額な報酬を取り続け、しかも会社に多額の貸付をしている経営者の方がおります。このようなケースでは、経営者自らも、余分な税金を払っていることになります。何故なら役員報酬を引き下げることで、税金、社会保険料を引き下げることが可能だからです。生活費が足りない場合は、その不足分に見合う貸付金を返済してもらえば今までと同様の手取は確保できるのです。
経営上、給与を考える場合、重要なのは、「労働分配率」です。すなわち限界利益(売上げから仕入れ、材料費、外注費を除いたものです。)に占める人件費(給料、社会保険料の会社負担分、福利厚生費、退職金の引き当て分を含みます。)の割合は、35%(役員報酬を含まない場合で、あくまでも私見です。)以内で抑えるのが理想でしょう。理想は、「低い労働分配率、高い給料」です。そのためには、経営の根幹から見直す必要があり、しっかりと「儲かる仕組み」を作り、黒字体質の強固な経営基盤にしていかなければなりません。労働分配率が60%以上の場合は、役員報酬は取れないでしょう。
人件費問題は、経営戦略そのものであり、人件費だけを切り離して考えることはできません。給料は経験、性別、学歴、年齢に関係なく、その仕事の成果に対して払うものだという原点に立ち返り、それに見合った自社なりのシンプルな賃金制度を考えていきましょう。
2007年 3月26日 文責