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2006年4月 3日 (月)

伝わらなければ何も存在しない

 10年以上前になります。家に帰ると、私の父が、少し興奮しながら「今日は、商工会議所さんで素晴らしいことを聞いてきた『小規模何とか』といって、全部控除(所得控除のことです。)になって、しかも定期積金よりはるかに率がいいんだと…今日、早速、契約してきた。お前はさっぱり教えてくれないから…」と私に話してきました。私はこの時、ハッとしました。

 「小規模企業共済」 …国が作った制度で小規模企業の個人事業主又は会社等の役員が事業をやめたり、退職した時に、生活の安定や事業の再建を図るために資金をあらかじめ準備しておく共済制度で、いわば経営者の退職金制度といえるものです。そのため掛け金は全額所得控除、共済金は退職所得扱い(一括受け取り)または公的年金の雑所得扱い(分割受け取り)と税制面でも大きなメリットがある国の共済制度です。しかも解約金の範囲内で低利で借り入れもでき、万が一の場合は差押禁止債権として保護されています。

…このことは会計事務所の人間なら誰でも知っていることです。しかし、私は身近の父親にさえこの情報を伝えていなかったということに気づかされ反省しました。たとえ、我々にとっては常識的に知っていることでも、こちらの勝手な思い込みで考えてはいけないということを改めて思い知らされました。

我々会計人の仕入れは、知識と情報、ノウハウですから、あらゆる機会を見つけては様々な研修会に参加し、関連する団体に所属し、常に、経営者の役に立つ情報をいち早くお伝えしようと努力しています。そして、友人の専門家の中には、本当によく勉強されて、山積みの情報を抱えている方もいます。その友人が先日私に、ぼそりと独り言のように話しました。「会計事務所ってお金かけていろんな情報を入手したり、ノウハウを持っているのに、お客さんが評価してくれないよな。」と。

 まさしくそれは、知識もノウハウもお客様に「伝えていない」のが原因です。私は「伝わらなければ、どんなに知識があっても、それはないと同じ」と最近考えます。ただし「伝える」とはただ話すこととも違います。相手の心に、こちらの話す言葉が「ストーン」と落ちなければなりません。相手の心に落ちない言葉をいくら大量に長時間使ってもそれは決して「伝えた」ことにはなりません。自己満足の世界に過ぎません。

伝えるものの「思い」や「感動」が込められて、相手の波動に響く時、琴線に触れた時、真の意味で「伝える」ことができるのではないでしょうか。従って、決して話し上手が、コミュニケーション上手ではないのです。凄い学者の大学の授業で学生が皆居眠りしているのをみれぱ良くわかります。聞き上手が、言葉少なに話す言葉に我々は、感動し、心に伝わることが多いものです。「伝えたのに」とか「何度も話したのに」は真の意味で、「伝えた」ことにはならないことを肝に銘じ、日夜意識して「伝える」ための「表現力」を磨こうではないですか。

(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱)
URL:http://homepage1.nifty.com/chiba-kaikei/index.html

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