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2006年4月28日 (金)

お金を残す経営

 「お金を残す経営をしたい。」「資金繰りを心配しないで、営業に集中したい。」とは経営者なら誰しも思うことです。しかし、いつになっても、月末になると資金繰りに走り回る経営者の何と多いことでしょう。資金繰りの苦しさは経験した者でないとわかりません。しかし、そのことは何の自慢にもなりません。むしろ経営者として恥です。何故なら、先の見通しの甘さと日頃の経営方針の甘さを露呈するようなものだからです。

 では、いったいどうしたら、資金繰りに追われない余裕のある経営ができるのでしょうか? それは、損益計算書のみに目を奪われることなく、しっかりと貸借対照表を管理していくことにコツがあります。多くの経営者の方と話すと、損益計算書 …特に売上にのみ、目を奪われている方が多いようです。確かに売上は一番重要です。売上のないところに、利益のないことは自明の理だからです。

問題は、社長が、売上のみにしか関心がないことです。売上が伸びますと、当然のごとく売掛金や在庫が増加します。買掛債務も当然伸びます。問題は、例外なく買掛債務の支払いが、売上債権の回収より先にくることです。

すなわち、新たに売上債権が回収できるまで、買掛金の支払いの立替が生じ、その間、資金が不足します。これが運転資本の不足といわれるものです。売上が、2倍になると、不足
資金も2倍になります。そして、その間の立替資金を用意できなかったり、売上債権の回収に事故があったりすれば、売り上げを伸ばしながら、しかも利益をだしながら、倒れてしまうこともあるのです。これが、世にいう「黒字倒産」といわれるものです。

これを避けるには、常に、売上債権と在庫の管理を徹底し、全社でこの増加を抑えるルールを作ることが必要です。月末に、「これから月次決算をしたいので、来月から5日までに請求書をいただければその月の月末に支払います」と取引先に通達をだしたところ、驚いたことに、約30%の取引先が間に合わないので、翌月で結構ですと返事してきたそうです。

 これは、何を意味しているのでしょうか?それは、社内に回収に対するルールがないことを意味しているのです。断わってきた方が、営業部長や課長ということを見ても方針がない会社が多いのがわかります。

例えば、我が社は売った月の翌月には必ず回収するなどの明確な社内方針を持つことが重要です。そして、その方針を全社員に徹底することが重要です。

又仕入れに関しても同じことが言えます。例えば、同じものを購入するにしても、相手の締め日の直後に購入すれば、支払いサイトを伸ばすことが可能です。次に、不良在庫は置き場所を変えて、社員全員がその存在を意識できるようにします。そして、社長自らが陣頭指揮をとり、現場の各部署に、在庫の削減目標を数字で、具体的に伝えなければなりません。

このような努カをすることにより、売上債権、在庫を増やさないようにして、減価償却の範囲内での借入金の元本返済を実行していけば、税引き後の利益は現金で残り、自己資本比率も着実に増加させることができるのです。社長さん方是非「お金を残す経営」を目指しましょう。

(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱)
URL:http://homepage1.nifty.com/chiba-kaikei/index.html

2006年4月 3日 (月)

伝わらなければ何も存在しない

 10年以上前になります。家に帰ると、私の父が、少し興奮しながら「今日は、商工会議所さんで素晴らしいことを聞いてきた『小規模何とか』といって、全部控除(所得控除のことです。)になって、しかも定期積金よりはるかに率がいいんだと…今日、早速、契約してきた。お前はさっぱり教えてくれないから…」と私に話してきました。私はこの時、ハッとしました。

 「小規模企業共済」 …国が作った制度で小規模企業の個人事業主又は会社等の役員が事業をやめたり、退職した時に、生活の安定や事業の再建を図るために資金をあらかじめ準備しておく共済制度で、いわば経営者の退職金制度といえるものです。そのため掛け金は全額所得控除、共済金は退職所得扱い(一括受け取り)または公的年金の雑所得扱い(分割受け取り)と税制面でも大きなメリットがある国の共済制度です。しかも解約金の範囲内で低利で借り入れもでき、万が一の場合は差押禁止債権として保護されています。

…このことは会計事務所の人間なら誰でも知っていることです。しかし、私は身近の父親にさえこの情報を伝えていなかったということに気づかされ反省しました。たとえ、我々にとっては常識的に知っていることでも、こちらの勝手な思い込みで考えてはいけないということを改めて思い知らされました。

我々会計人の仕入れは、知識と情報、ノウハウですから、あらゆる機会を見つけては様々な研修会に参加し、関連する団体に所属し、常に、経営者の役に立つ情報をいち早くお伝えしようと努力しています。そして、友人の専門家の中には、本当によく勉強されて、山積みの情報を抱えている方もいます。その友人が先日私に、ぼそりと独り言のように話しました。「会計事務所ってお金かけていろんな情報を入手したり、ノウハウを持っているのに、お客さんが評価してくれないよな。」と。

 まさしくそれは、知識もノウハウもお客様に「伝えていない」のが原因です。私は「伝わらなければ、どんなに知識があっても、それはないと同じ」と最近考えます。ただし「伝える」とはただ話すこととも違います。相手の心に、こちらの話す言葉が「ストーン」と落ちなければなりません。相手の心に落ちない言葉をいくら大量に長時間使ってもそれは決して「伝えた」ことにはなりません。自己満足の世界に過ぎません。

伝えるものの「思い」や「感動」が込められて、相手の波動に響く時、琴線に触れた時、真の意味で「伝える」ことができるのではないでしょうか。従って、決して話し上手が、コミュニケーション上手ではないのです。凄い学者の大学の授業で学生が皆居眠りしているのをみれぱ良くわかります。聞き上手が、言葉少なに話す言葉に我々は、感動し、心に伝わることが多いものです。「伝えたのに」とか「何度も話したのに」は真の意味で、「伝えた」ことにはならないことを肝に銘じ、日夜意識して「伝える」ための「表現力」を磨こうではないですか。

(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱)
URL:http://homepage1.nifty.com/chiba-kaikei/index.html

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