企業格付けと債務者区分
金融庁は平成14年2月、中小・零細企業等の債務者区分の判断について、「金融検査マニュアル」を公表しましたが、中小企業経営者から悲痛とも感じられる声が多く寄せられ、平成14年6月に「金融検査マニュアル別冊」が公表されました。それを読みますと、中小企業に対して金融機関に十分な配慮が要請されているのがわかります。(例えぱ代表者等からの借入金が当面返済を要求されない場合、これを当該企業の自己資本相当額として判断するなど・・)もちろん、中小企業はそのことに甘えず、尚一層の経営改善が必要なことは言うまでもありませんが・・。
現在、金融機関は、従来の伝統的な与信管理(①個別与信管理中心②担保重視)から債務者の債務償還能力重視の「企業格付け」重視に体制の整備を進めています。その「企業格付け」をする際に、配点が多い項目の一つに「自己資本比率」があります。貸借対照表(B/S)を見るときに、一番重要なのは「自己資本比率」であることを、セミナー等を通し、何度も、経営者の皆さんには耳にたこができるほど、繰り返し話してきました。日本の黒字企業の平均は27~28%です。まずは平均以上を目指し、理想は40%以上でした。企業格付けで満点は60%以上ですから、もちろん40%で満足してしまってはだめです。
経営者の皆さんと話をしますと、損益計算書(P/L)には強い関心を示しますが、B/Sにはあまり関心を示しません。この厳しい経営環境を乗り切るためには、P/LはもちろんB/Sを重視する習慣を身につけなければなりません。では、自己資本比率アップの得策はあるのでしょうか?御存知の通り、自己資本比率は、自己資本を総資本で割ったものですから、自己資本(内部留保)の分子を大きくするか、分母を小さくするかの二通りしかありません。
分子を大きくするには、増資か税引き後の利益を蓄積する以外ありません。分母を小さくするには、不良在庫や不良資産などを処分する以外ありません。そう考えますと、企業は、余分な資産を持たず、コツコツと利益を出し、内部留保を高めていく以外に、得策はないようです。しかも、自己資本比率を高めることに集中すれば、自然と総資本経常利益率や固定長期適合率などの数字も良くなります。
格付けが6~7の企業は、債務者区分で言えば、正常先と要注意先の境目にあります。一つ格付けが上か下かで、金融機関のそれらの企業に対する対応は大きく異なります。このあたりの企業は是非日頃から一ランクアップの努カをし、問違っても一ランク下がるようなことにならないようにしなければなりません。
A社とB社はほぼ同じ財務内容ですが、格付けは一つ異なります。違いは何でしょうか?それは経営者が明確に経営目標を打ち出して、「中期経営計画」を銀行に提出し説明しているかどうかの違いです。企業の将来に対する明確なビジョンと戦路を金融機関が評価してくれるのです。「経営計画」や「経営改善計画」の中長期、短期を立て、社長のやる気と前向きの姿勢を是非金融機関にお示しください。それは、先方から提出を求められる前に自発的に行動することが、重要です。是非がんばってください。
(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱)
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