キャッシュフロー計算書が教えてくれる…手を打つタイミング
S工務店社長日く、「我社に一人でも、貸借対照表(以後B/Sという。)が読める幹部社員がいたらこんなことにならなかった。」と。S工務店は1996年負債総額220億円で倒産。
1990年には年商350億円、経常利益10.8%、1993年には従業員4500名にまでなった会社だ。その中に一人もB/Sを読める幹部社員がいなかったことが、倒産の一つの大きな要因とS社長は言う。「B/Sを意識した経営をしていたら、節税という名の無駄遣いはしなかった。損益にぱかり目を奪われてしまい、利益がでたなら出たで、税金を払うのが惜しくなる。その結果、むやみに節税にはしった。税金を払うよりましと、リムジン、ヨットと次々購入した。最後には、畑違いのクラブまで経営して大赤字をだしてしまった。」と。
「もし、自分をはじめ、一人でもB/Sが読める幹部社員がいたら、きっと5年後は自己資本比率40%以上を目指そうと、目標を掲げていたはずだ。自己資本比率を上げるには、基本的には、税引き後の利益をコツコツと内部留保していく以外ない。そうすれば、あのような無駄遣いもしなかった。」と。「今となっては後の祭りなので、今経営者としてがんばっている社長たちに、私のようにならないように、B/Sを勉強してもらいたい。」と。
私は、以前から、セミナー等を通して、社長さん方に、自己資本比率40%以上を目指して欲しいと、口が酸っぱくなるほど話してきた。そして現実にそれを実現された社長は、急に資金繰りが楽になり、そのパワーを実感しているようだ。何故40%にこだわるかというと、私の体験上、その位あれば、少々のことでは倒れないからだ。
しかし、それも粉飾などがあっては意味をなさない。P/LもB/Sもまずまずという様相を取りながら、あっという間に倒産してしまう会社が最近多い。いずれも、長年の粉飾で、真実が見えなくなっていることにその原因がある。経営者自身も粉飾により、自分で自分を洗脳するごとく、真実から目を背け、いつの間にか危機感も希薄化してしまうことが、倒産の道を早めるようだ。そして結局、早く手を打てば、生き残れたかも知れないのに、退場を余儀なくされる。それを防ぐのは「キャッシュフロー計算書」(以後C/Fという。)だ。P/LやB/Sをごまかせても、C/Fはごまかせない。在庫や売掛を増やし利益をだしても、C/Fはマイナスだ。C/Fでまず営業キャッシュフローがマイナスなら、言い訳をせずに、すぐ手を打たないとダメだし、3年平均のフリーキャッシュフローがマイナスなら、ここでも手を打たないと手遅れだ。すなわち、C/Fは、手を打たなけれぱならないタイミングをその経営者には勿論、その会社の取引関係者にも教えてくれるのだ。
7月26目の当事務所の「オーナーズセミナー」のテーマは「社長がわかるキャッシュフロー計算書」の予定だ。是非この機会に一人でも多くの経営者がこのC/Fを勉強して、ますます厳しくなるこれからの経営環境(ここ数年が正念場と考える。)を乗り切ろうではありませんか?又今月B/Sの勉強会に参加された44名の皆さん来月もお待ちしています。
(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱)