2020年5月26日 (火)

電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である。

   今回の新型コロナウイルス騒動はなかなか落ち着きそうもない。直接大打撃を受けている観光関連の産業や飲食店などは、かつてない業績の落ち込みで今後に不安を増大させている。この業績の落ち込みは、遅かれ早かれほとんどの業種に及んでくるだろう。何故なら、すべての業種は、何らかの形でつながっているからだ。どの業界にとっても対岸の火事ではない。コロナ禍は、過去に類を見ない経済への打撃を与えているのだ。

 そのような中、同じ飲食業でも「もうだめだ。」とあきらめている社長もいればユニークな手作り弁当販売に切り替えて売り上げをあげている社長もいる。またコロナが収まった時のことを考えて、飲食券やボトルを割引前売り販売して売り上げを確保している社長もいる。

   30年余り税理士をしてきた私の経験則だが、逆境に強い社長は、本能的にとも言えるくらい前に進もうとする。しかし、それはやみくもにではなく、環境の変化にどう対応したらよいか、どうすれば必要とされる企業でいられるかを必死に考えるのだ。このような時こそあらゆる知恵を総動員して、実行に移していくことが大事なのは言うまでもない。

   その時に先頭に立つのは当然トップの社長だ。社長が弱気になったり、あきらめているところは、業績も低下するだけで、そのような会社に縁あって勤めた社員も、悲劇としか言いようがない。逆境の時こそトップの社長の心意気が問われる。辛いかもしれないが、それが社長の宿命だ。

   かつての名経営コンサルタントの一倉定先生は、その著書で「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である。」と言い放ち、「社長が知らないうちに起こったことでもすべて社長の責任なのだ。何がどうなっていようと、結果に対する責任はすべて社長が取らなければならないのだ。人の上に立つものは、部下が何をしようとそれはすべて自分の責任である。という態度がなければ、本当の意味で人を使うことはできないのである。部下の信頼を得ることができないからである。」と話している。中小企業の業績は、99%社長で決まると言われているが、今回ほど社長のリーダーシップが問われるときはないのではないかと考える。

   では、何をまずすべきかと問われれば、それは、何と言っても資金確保が最優先である。それもできるだけ低利で長期間の据え置きを前提に借りることが大事だ。まずは一番取引のある金融機関に相談して見ることが先決だ。中には借りたものは返さなくてはならないからと話す方もいるが、まずは借りて手元に置き、使わなかったら後日返せばよいだけである。その間の利息は保険料と思えば安いものだ。まずは、いろいろな制度を活用して、資金確保しておき、この時期を生き延びることが、社長、従業員いずれにおいても最大課題であるからだ。

 辛いことだが、どのような時でも社長は、業績の結果を外部環境や従業員のせいにしてはならない。すべては社長の責任であるということを肝に銘じて、覚悟を決めて、笑顔で取れる対策を着実に実行していかなければならない。同じ社長として応援しています。

 

2020年4月27日 (月)

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策に伴う税務上の取り扱い

令和2年4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を受けて、国税庁は4月13日新型コロナウイルス感染症に関連する法人税・所得税の新たな取り扱いを示しました。私なりに重要と思われるところを一部整理して見ましたので、参考にしていただければと思います。


① 無担保、延滞金0で1年間納税猶予

具体的には、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月1日以後における一定の期間(1か月以上の任意の期間)において、売り上げが前年同月比で20%以上減少し、その事実に基づき一時に納税をすることが困難と認められるときは、1年以内の期間に限り無担保かつ延滞金なしで国税の納付を猶予することができるようになります。納期限までに、一時に納税をすることが困難と認められるためには少なくとも向こう半年間の資金繰りを示すか、書類の提出が難しい場合は口頭での説明でも認めるなど柔軟な運用が行われることになります。対象者は個人法人の別、規模も問いません。

 所得税、法人税、消費税等ほぼすべての国税が対象になりますので、預かっている消費税などを1年間資金として活用できることになります。

*令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する国税について適用になります。

*ただ本日現在、まだ国会を通過していませんので、通過後、申請する形になります。納期限がまだ来ていない予定納税も当然含まれますが、この場合は1年ではなく申告期限までとなることに注意が必要です。詳しくは、仙台国税局の納税猶予センター(022-204-5937)に問い合わせると教えてくれ、申請書も郵送してくれるそうです。

② 固定資産税の免除

令和2年2月から同年10月までの任意の3か月(以下基準期間といいます。)の売上高(全ての事業の売上高の総額をいいます。以下同じ。)が、前年の同一期間の売上高より50%以上減少した中小事業者等については、令和3年度の固定資産税等が0になります。30%以上減少した場合は半額になるというものです。(中小事業者等とは、性風俗関連特殊営業をする者を除いて資本金1億円以下の法人です。)

 手続きは、令和3年1月31日までに認定支援機関等(当事務所は認定支援機関になっています。)の認定が必要です。注意しなければならないのは土地には税額の免除がないという点です。建物と償却資産だけが対象になります。


③ 期中の役員報酬の減額

新型コロナウイルス感染症の影響で業績が急激に悪化し、資金繰りが困難な場合だけでなく、現状では売り上げなどの数値指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナ感染症の影響により、今後の見通しが立たず、今後の経営状況の著しい悪化が不可避なケースでの役員給与の減額改定も「業績悪化改定事由」に該当するとしています。 上記に該当するようでしたら早めに役員報酬を減額し、所得税や社会保険料のキャッシュアウトを抑えることが大事だと思います。

2020年4月 1日 (水)

コロナウイルス騒動について

   今月は当社関与先さんの経営計画発表会に参加しました。この時期ですので、開催するかどうか大分迷われたようですが、参加者は全員マスクを着用し、出入り口には消毒液が置かれ、窓は解放されての実行でした。

   役員、社員、関係者で50名近い方が参加され、各部署から今期の結果と来期の数字達成に向けた行動計画が、二時間ほどかけて次々と発表されました。

  例年そうですが、今年度も未来に向けた素晴らしい計画発表でした。最後に私が講評を求められました。私は「御社は、今まで全社一丸となり、利益を出し、内部留保を高めてきました。このような時こそそれが威力を発揮します。

 この急激な外部環境に一喜一憂することなく、来期の行動計画を着実に実行してもらいたいと思います。そのことが、このコロナ騒ぎが落ち着いた後に更に威力を発揮すると思います。」と話し、激励しました。

   しかし、上記の会社は自己資本比率が60%以上の優良企業だからそのような激励ができたのです。日本では、急激な外部環境の変化に対応するためには自己資本比率が40%以上必要だと言われ、各企業はその目標に向かって日々、経営努力しているのです。

 ところが、日本の中小企業の平均の自己資本比率は、まだ20%前後というのが現状です。しかも自己資本比率は一朝一夕では増やせません。利益を毎期出し続け、納税した残りが内部留保され自己資本を形成するからです。

 自己資本比率は当然、時価で考えますから、保険などの含み益は簿外資産として時価を形成します。反対にゴルフ会員権や値下がりした有価証券はその含み損を控除した評価で計算されます。企業の多くは、バブル崩壊やリーマンショック、大震災を経験しています。含み損を抱えたままの企業も少なくはないでしょう。

 ですから、こうした自己資本比率の低い日本の中小企業は、今回のコロナウィルス騒動は死活問題です。ほとんどの中小企業はまずは目の前の生き残りに不安を感じているのではないでしょうか?

 政府もそのことを十分承知していて「緊急経済対策」としてあらゆる手を打って、企業や国民の生活を守ろうとしています。対応が遅いという不満もあるでしょうが、それらの情報をいち早く得て活用することが急務です。

 当事務所でも活用できる融資などを少しでも早く知っていただくため常に新しい情報をメール通信や事務所通信を通じてお知らせすると共に各担当者が直接、個別にそれらの情報を各関与先さんにお伝えするなど、スタッフ一丸となって努めています。

 実際に、訪問しますと「手元資金にまだ少し余裕がありますが、借り入れしておいた方が良いでしょうか?」という質問が良くあります。それに対する答えは、「まずは借りておくべきでしょう。」と言うことです。

 理由は、治療薬がいつ出るか見当がつかず今回のコロナウィルスの世界経済に与える影響は長引きそうだからです。しかし今までも何度も大きな試練はありましたが、終わらなかったことは一度もありません。早いか遅いかだけです。

 決して油断してはだめですが、必要以上に恐怖感を持っても何もできません。まずは手元資金を厚くして、我々にできる防御策を講じながら日常生活を淡々とこなしていこうではありませんか。

 

2020年3月10日 (火)

地域企業の生産性はまだまだ上がる

  巷ではコロナウイルス騒ぎで人が集まる行事が次々に中止になっている。当社でも政府の方針に倣って、3月のセミナーを中止することにした。2月のセミナーはまだこの騒ぎが始まる寸前だったので、予定通り約50名の参加者で実施することが出来た。

 2月のセミナーのテーマは「地域企業の生産性はまだまだ上がる」で、私の古くからの友人である丹治克之氏に講師をお願いした。丹治克之氏はキャノン株式会社に36年間勤務、その間数々の生産革新のプロジェクトを成功させた。その成功体験に基づいた講話は参加者の共感を呼んだようだ。セミナー終了後のアンケートには、ほぼ全員の方が参加して良かったというコメントを残してくれた。

   私は「組織能力」の考え方と「WATCH&THINK」→現場をジーッと見て、むだを見つけ、排除する方法を考えるという手法に感動した。セミナーの中で紹介された東大ものづくり経営研究センターの藤本隆宏教授によれば、組織能力は「個々の企業に特有の属性であり、組織の中で広く継承される組織遺伝子であり、ルーチンの束である。組織の能力は競合他社が真似することが難しく、個々の企業の競争力や収益に影響を与え、長期的に企業間の格差を生み出す。」ということだ。わかりやすく言うなら、例えばトヨタはノウハウをすべて公開しているが、それをそのまま活用できる企業はないのはなぜか・・そこに組織能力の本質があるのだ。丹治氏は当社のセミナーのこともその事例として話してくれた。当社では平成7年から毎月セミナーを実施してきており、今回のセミナーが257回目だった。私も他の会計事務所さんからやり方を聞かれ、何度も教えたことがあるが、どの会計事務所さんも継続しているところはない。その力が「組織能力」というものだそうだ。端的に言えば「組織能力=方針を実行する現場のルーチン力」ということなので、時間はかかるがこの組織能力の構築を自社の経営戦略としてしっかり認識していきたいと思う。

   丹治氏は地域企業の現場改善の具体的手法としてワークショップ形式で取り組むことを勧めてくれた。ワークショップ形式とは自社に関わる各部署、関係機関が垣根を超え課題抽出、解決策検討、実践を重ねていく方法だ。また氏はワークショップ形式を取り入れる中で「WATCH&THINK」をメンバー全員で取り組むことが大事とも言っていた。ワークショップ形式での現場改善では「YWTMシート」を作成して課題を共有する。Y:今日やったことは何ですか?W:(やってみて)わかったことは何ですか?
T:(それを踏まえて)次にやることは何ですか?M:それをやるメリットは何ですか?
PDCAとは聞いたことがあるかと思うが、P(計画)がネックになって進まないことがあるので、取り組み易い「YWTMシート」を活用するのだ。これらの認識を全員で共有しながら次に進むということだ。その結果現場改善が進み生産性が上がれば、それはその会社の利益に直結していくことになる。今後ますます予想される人手不足時代に備える意味でもまずは現場改善に取り組むことをお勧めしたい。自社独自で難しい時はいつでも支援させていただきます。気軽にお声がけください。

2020年2月 5日 (水)

「配偶者居住権」が今年4月から施行!

平成30713日に民法の相続分野が、約40年ぶりに改正され、公布されました。施行は、この公布日から2年以内の政令の定める日からとなっており、順次施行されてきました。平成31113日の「自筆証書遺言の方式緩和」、令和元年71日には「遺産分割の見直し(配偶者間の居住用不動産贈与の持ち戻し免除の推定・仮払い制度の創設)「遺留分制度の見直し」「特別寄与制度の創設」が施行された。

 

「配偶者居住権」とは?

令和24月からはいよいよ「配偶者居住権」が施行されます。「配偶者居住権」とは、被相続人の持ち家に住んでいた配偶者が、被相続人が亡くなった後、その家を相続しなくても、自分が亡くなるまで無償で住み続けることができる権利で、遺贈、遺産分割協議、審判手続きで配偶者居住権が認められた時に取得することが出来ます。それに対し、「配偶者短期居住権」というものもあり、こちらは、被相続人の建物に居住していた配偶者なら、何の条件もなく遺産分割完了あるいは6ヶ月間のいずれか遅い日まで、無償で住み続けることができるというものです。

この制度は、ちょっと揉めそうな家族関係で活用されるのを前提にされているように思います。普通の家族関係では無理にこの制度を使う場面が想定できないからです。何故なら、このような場合も仲の良い親子なら法定相続分にこだわらず、お母さんに現金を渡すこともできるからです。いずれお母さんの相続で自分にまわってくるという考えもあります。先妻の子は、養子縁組でもしていない限り、今回の相続で終わりですから、シビアにならざるを得ないのかもしれません。例えば、自宅(2000万円)と預貯金(2000万円)が相続財産と仮定します。相続人は、2人で1人は、現在の妻でもう一人は先妻の子というケースです。妻は今後の生活もあるので、住み慣れた自宅は、どうしても必要です。そこで、遺産分割協議により、法定相続分通りにししようということになり、めでたく自宅を相続することになりましたが、自宅だけで法定相続分になってしまい、現金は相続できないことになります。妻は老後の生活費として、どうしても現金も必要です。そのような場合に、今回の「配偶者居住権」(所有権はないが、終生住み続ける権利がある。)が効果を発揮します。配偶者居住権の評価は、家全体の評価より低くなります(評価は配偶者の相続時の年齢によって変わります。)から、法定相続分の中で、現金を受け取ることもできることになるからです。結果、妻は住み続ける権利と老後の生活資金も確保できることになります。

 次回は「配偶者居住権は節税に効果あるのか?」ついて説明したいと思います。

 

 

2020124日 著者 税理士    千葉 和彦

 

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