2018年9月 4日 (火)

「経営者保証に関するガイドライン」について

「経営者保証に関するガイドライン」というものをご存知でしょうか?2013年12月に公表され、翌2014年2月に適用が開始されました。適用からすでに4年半が経過しますが、経営者の中ではまだまだ知らない方が多いというのが実態です。と言うのも、この制度が単に「個人保証が解除できる制度」と、誤った解釈で普及する懸念があったため、安易な広報ができないという難しさがあったようです。

   ガイドライン以前の経営者保証は、経営者が個人保証することにより、資金調達を円滑にする一方、思い切った事業展開を阻害する面もありました。ましてや、経営に失敗したときは、早期に事業再生等を行いたくても、更に大きな壁になってしまうものでした。

  「経営者保証に関するガイドライン」は、このような事業展開も再チャレンジも難しい経営環境を改善し、産業活性化を図るため、政府(金融庁と中小企業庁)の後押しで、中小企業団体および金融機関団体の関係者、学識経験者、専門家等の検討の成果をまとめたものです。融資の際に経営者保証を不要とするための条件を明らかにするとともに、早期に事業再生や廃業を決断した場合は経営者に一定の生活費を残し、自宅に住み続けるための可能性などを示したものになります。新規融資はもとより既存融資についても、融資条件の見直しや借り換えなどの際に考慮されることになります。内容だけ見れば、経営者サイドにとって有益なものです。しかし、このガイドラインは、何ら法的な拘束力を持つものではなく、いわば、企業・経営者と金融機関との間の「紳士協定」のようなものです。金融機関も利益を上げなくてはなりませんしリスク対策もしなければなりません。そう易々と保証ははずせません。そのため「経営者保証ガイドライン」の資格要件は下記の4条件をすべて満たす必要があります。

① 法人と経営者個人の資産経理が明確に分離されている。
② 法人と経営者の間のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えていない。
③ 法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
④ 適時適切に財務情報が提供されている。

上記の4条件をすべて満たすことは多くの中小企業にとって、正直なかなか難しいところです。しかし、上記の4条件を満たすことに取り組み、経営を改善していくことは、経営の健全化、経営強化につながることです。その結果「経営者保証」も外せることになります。

   余談ですが、ある顧問先の社長さんが、当社のセミナーの翌日、早速、銀行に出向き、交渉の後、見事に保証を外してもらいました。銀行の担当者からは、「誰からこの制度を聞きましたか?当行の当支店では第一号の適用になります。」と言われたそうです。その後も何社かの経営者が保証を外してもらっています。いずれの顧問先さんも上記4条件をすでに満たし、さらに経営強化に努めているところでした。この保証問題は事業承継をする場合にも非常に重要です。何故なら多額の債務の個人保証をしている先代を見て、なかなか事業承継に踏み切れない後継者も多いからです。円滑な事業承継のためにも更に事業に磨きをかけ、後継者が個人保証をしなくても良いような会社にし、次世代に引き継ぎたいものです。我々も引き続き後方支援させていただきます。

2018年8月31日(金)   著 者   税理士    千葉 和彦

2018年8月 1日 (水)

老後のお金

 老後資金は夫婦で3000万円、独身で1500万円が必要とよく言われている。これは、65歳から年金生活に入る場合に、90歳までの25年間で年金だけで不足する分の金額らしい。ただし、税金や家の修繕費、海外旅行代、医療・介護費、子どもの結婚資金などの予備費として600万円しか見ていないという前提なので、少し余裕のある生活をしたいと思えば、夫婦で約5000万円が65歳時点で必要ということになる。独身では約2000万円だ。具体的な数字を見て、ぞっとした人は少なくないだろう。50歳の平均金融資産が1000万円であることを考えると、かなり計画的に貯蓄しないと老後資金をためるのは難しい。

 巷では、資金を少しでも株などで運用して増やすことを勧めているコンサルタントの方も多いが、私は基本的には、それらの投資は余裕資金でするものと考える。5000万円を超える資金を持っている人なら考える価値があるかもしれないが、それ以外の方は手を出してはいけないと思う。何故なら運用率の高い投資のほとんどは、元本保証はなく、市場の動きで大きく暴落することもあるからである。老後のためにコツコツ貯めていた資金が、投資で半分になった時のことを想像してもらいたい。脅かしているわけではない。昨今の世界情勢ではよくあり得ることということを認識して投資してほしいと思う。半額になっても誰も責任は取ってくれないのだ。
 
 いやいや日本には年金制度があるじゃないかという声が聞こえてくる。がしかし、ご存知の通り年金は、減額の一途をたどっている。そこで、年金の繰り下げ受給を勧める方もいるが、(65歳から年金をもらわず、70歳からもらう方法である。)これは各人の考え方次第で、80歳になってから通常より多い年金をもらうのと、少しでも体の動く若いうちに年金をもらって余裕を持ってお金を使うのとどちらが得か・・良く考えてみよう。(ちなみに81歳を超えると70歳からの繰り下げ受給が有利になる。)長生きに自信のある方は是非活用するのも良いかもしれない。

 話しは少し外れるが、資産がかなり多い方は、まず自分の財産を毎年、棚卸し、財産目録を作ることをお勧めする。自分の財産と借金を書き出し、純資産を把握する。奥様とお子さん2名の標準世帯の場合、4800万円を超えた分に相続税がかかるということも想定しておく必要があるからだ。無理な相続対策はいらないかもしれないが、金融資産を一部保険にしておくだけでも相続税額は大きくかわる。また、相続争いは、総資産5000万円以下の場合が約7割を占めていることを見ても、相続税に関係なく、相続争いを避けるために遺言をしておくことが何よりも重要だ。今回、民法の改正予定があり、それによると自筆証書遺言の財産目録等はパソコン等で作成したものでも良くなりそうだ。しかも法務局に保管してもらうことも可能になり、検認手続きも不要になる。そうなると自筆証書遺言が今よりずっと活用しやすくなる。これは、2020年4月からの施行になりそうだ。しかし、その間に何かあったら大変なので、一日も早く書いておくことが必要なのは言うまでもない。

2018年7月30日    著 者   税理士  千葉 和彦

2018年7月 3日 (火)

相続の遺留分対策について

   相続対策で一番大事なことは、「遺産争いの防止」であり、その方法として「遺言」が有効であると前回述べた。しかし、その場合でも「遺留分の減殺請求」があるため、火種は、完全に消せないことについても話した。今回はその火種の元を少しでも少なくする方法について話していきたい。

  第一に火種を完全に消す方法だ。それは、遺留分の生前放棄という方法だ。相続の生前放棄はできないが、遺留分の生前放棄は、家庭裁判所が認めれば大丈夫だ。家庭裁判所が許可する基準は①遺留分の放棄が本人の自由意志に基づくものであること②遺留分放棄に合理的な理由が認められること③遺留分放棄の見返りがあることだ。法律で守られた遺留分という権利の放棄を無制限に認めてしまうと、財産を残す側や他の相続人の強要が行われるという恐れがあるためで、それらを避けるために厳格になっている。

次に、火種は完全には消せないが、できるだけ小さくする方法について順次解説する。

① 養子縁組の活用

   養子縁組をすると法定相続人が増えるので、遺留分は当然減る。この場合、実子がいる場合は1名だけと誤解している人がいるが、それは税法上のことで、民法上は何人でも有効である。2人の養子にすればその分遺留分は減ることになる。しかし、新たなトラブルも想定されるため十分な検討が必要なことは言うまでもない。

② 生命保険金の活用

   民法上、生命保険は受取人固有の財産となるので、遺産分割の対象にもならないし、遺留分算定上の相続財産にも入らない。従って現金を残すより生命保険金で後継者に取得させ、後継者が他の相続人に代償金を払うという方法も選択できる。

③ 経営承継円滑化法の活用

  自社株式の「除外合意」(後継者が贈与受けた自社株式を遺留分の算定基礎から外す方法である。)「固定合意」(後継者が贈与を受けた時点の時価で固定して遺留分を計算する法である。)を活用する。しかし、これは相続人全員の賛同がないとできない。

④ 種類株式の活用

   自社株式を相続させる場合に、議決権のない株式を作っておき、相続の際にその無議決権株式を相続させる。また全部取得条項付株式を作っておき、相続後、会社がその自社株式を相続人から半ば強制的に購入する。相続発生後3年10か月以内なら、譲渡人にもみなし配当課税がされず、譲渡税だけですむので相続人の手取りも増える。

⑤ 信託の活用

   被相続人が委託者になり、後継者を受託者として財産を信託する。受益者は、最初、被相続人がなり、死亡後、後継者を指定しておく。他の相続人から遺留分の減殺請求があった場合は、受益権の一部を相続させる。しかし、その受益権に管理、処分権はない。

  上記を参考に少しでも「遺産争いの防止」に役立ててもらえればと思う。暑い日が続きます。皆さんお体ご自愛ください。

2018年6月30日  著 者   税理士  千葉 和彦

2018年6月 1日 (金)

相続対策の三本柱

  相続対策の三本柱は昔から変わっていないが、順番は変わった。昔は何が何でも①節税②納税資金③遺族間の争いの防止だった。それが現在は、まずは「遺族間の争い防止」が先で③~①の順番にその重要性は変わった。いくら節税対策を講じても、相続人間で揉めてしまったり、納税が困難になってしまっては、その相続対策は失敗だったということが、経験上わかってきたからだ。

   では、遺産争いは何故おきるのだろうか?それは戦後、民法の改正があり、相続人は均等割りの相続権を持つようになったからだ。例えば長男が両親の介護、家業の手伝い、他の兄弟姉妹の面倒をみてきても全く考慮されず、相続権は相続人の兄弟姉妹で、均等割りという何とも不思議な法律になっているのだ。

   私の顧客にも6人兄弟姉妹の長男の方がいた。その方の父上はご高齢で、100歳近くで亡くなった。母上はすでに亡くなっていたので、兄弟姉妹6人が相続人になった。父上は、亡くなる前5年くらいは寝たきりで、長男の奥様が世話をされていた。私が父上に遺言の話をすると、長男の奥様が私に次のように話した。「うちの主人は、弟や妹たちの面倒を小さい頃から良く見てきたんです。自分だけは高卒で家業を手伝ってきたけど、弟や妹たち全員に仕送りを続け、大学までだしてあげたのです。主人と義父は、朝早くから夜遅くまで真っ黒になって働いていました。ですから、うちの主人に逆らう弟や妹なんかいません。だから義父の遺言なんて必要ないのです。」と。

    しかし、いざ遺産分割協議の段階になると法律関係の仕事をしている妹の旦那さんが現れ、次のように話を切り出した。「お兄さんのことはみんな尊敬していますよ。しかし、法定相続分というものがありますからね。今回の相続は法律通りにお願いします。」と。他の弟や妹たちも一斉に右倣えをし始め、その結果、均等に分割するために、唯一の不動産である住み慣れた家も売却し、預貯金もかき集め、何とか遺産分割協議を済ませたのだ。

   何とも人情味のない話だが、フィクションでも何でもなく、これが現実なのだ。では、どうしたら良かったのだろうか。

    まずは、被相続人になる方は必ず「遺言」をしておくことが必須だ。これで争いごとの半分は避けられる。自分の財産を所有者が誰に相続させるか指示しているわけだから相続人は文句の言いようがない。人の財産を貰う立場の人同士が、話し合いをするから揉めるのだ。

   しかし、「遺言」していても油断は禁物だ。それは、各相続人には「遺留分」というものがあるからだ。たとえ遺言で相続させられなかった場合でも、相続人には法定相続分の半分の相続権がある。相続があったことを知ってから1年以内に自分の相続分に不満がある場合は、「遺留分の減殺請求」という形で請求できる。実際、遺言があったのに揉めている原因のほとんどはこの「遺留分の減殺請求」が原因だ。これを回避するのは、各相続人に遺留分を超える財産を相続させ、公正証書の遺言にしておく。そうすれば揉める余地はなくなるはずだ。しかし、そのように遺言で残すことは実際至難の業だ。そこでどのようにすればそれらをクリアした遺言書にできるかを次回は話していきたい。


2018年5月31日  著 書  千葉 和彦

2018年5月 7日 (月)

目標と実績の差を読む。

 4月に今年度最初の「将軍の日」を開催した。通算では87回目になる。「将軍の日」とは、「社長の日」いわば組織のトップに立っている人のために、丸一日かけたセミナーだ。

 朝10時から夕方6時まで、じっくり自分の会社の5年後を考えてもらう。そのために、事前に打ち合わせの上、必要事項は当社ですべて準備を済ませておく。当日、社長はそれを基に計画を立てていく段取りになっている。最初の90分だけ私が話をするが、残された時間はすべて社長自らがパソコンに向かい、じっくり考えてもらうという実践参加型のセミナーだ。

 もちろん当社のスタッフが一日ついているから、パソコンの知識は必要ない。また、会社の規模も社長の年齢も問わない。過去には、80歳の社長が参加されて、その社長が自分の友人にそのことを話したら、「お前まだ5年も社長続けるのか?」と言われたと笑っていた。

 「将軍の日」は社長と後継者に一緒に参加してもらうこともよくある。半信半疑で、参加してくる社長も多いが、終わってみると参加者のほとんどから「参加して良かった。」と言ってもらえ、こう言われた時ほど主催者冥利につきることはない。

 「将軍の日」に誘うと「うちの会社は、受注してみないとわからないので、売上予測はできない。」とか「経営計画を策定しても、計画通りに行かないから無意味だ。」と言って参加されない方が多い。しかし、この意見には大きな誤解がある。まずこのセミナーは、未来を予測するものでないということだ。我々は占い師でもなければ神でもないので、未来を予測することなどできない。先のことが分からないからこそ経営計画が必要なのだ。経営計画は、「目標の設定」なのだ。ただ、この目標の数字について、多くの人がそれぞれの疑問を持っていることも事実だ。

 かつて炎のコンサルタントと異名を取った一倉定先生も、疑問を持ったままの数字で計画を立て、目標を設定することに対して、誰しも躊躇するのが当然であるとも言っている。また、これに対する正しい回答や説明は、残念ながら、いかなる文献にもないし、あっても間違いだらけだと話している。

 一倉先生は「いくら数字を読もうとしても読めないのだ。そこで、仕方がないので読める数字だけを読むよりほかはない。それが過去の数字を読むということになる。恐らくは、世界中の人々が過去の数字だけを読む、と言うより読まされているわけだが、これより外に読みようがないのだから、いたし方ないということらしい。

 このように、ほとんどすべての人々が数字を正しく読めないというのはなぜだろうか。答えは簡単、正しい読み方を教えてくれる人がいないからだ。正しい読み方は、事業経営者なら誰でも説明を受ければすぐに分かる。それは極めて簡単『目標と実績の差を読むこと』これだけである。」と話している。一倉先生の言われるように、「目標は実績との差を読むために存在する」と見方を変えると、誰でも急に目の前が開けてくるような気がするはずだ。

 企業経営において大事なことは「すぐれた業績を上げること」だ。そして、そのために「目標」は存在する。その差を埋めるためにどう行動すべきかをトップ自らが考え、行動を起こしていくことが優れた業績につながっていくのだ。経営者の皆さん、この「目標と実績の差」を考え続け、業績アップにつなげようではありませんか。応援しています。

 

 

2018年4月30日(月) 著 者  税理士  千葉 和彦

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