2018年7月 3日 (火)

相続の遺留分対策について

   相続対策で一番大事なことは、「遺産争いの防止」であり、その方法として「遺言」が有効であると前回述べた。しかし、その場合でも「遺留分の減殺請求」があるため、火種は、完全に消せないことについても話した。今回はその火種の元を少しでも少なくする方法について話していきたい。

  第一に火種を完全に消す方法だ。それは、遺留分の生前放棄という方法だ。相続の生前放棄はできないが、遺留分の生前放棄は、家庭裁判所が認めれば大丈夫だ。家庭裁判所が許可する基準は①遺留分の放棄が本人の自由意志に基づくものであること②遺留分放棄に合理的な理由が認められること③遺留分放棄の見返りがあることだ。法律で守られた遺留分という権利の放棄を無制限に認めてしまうと、財産を残す側や他の相続人の強要が行われるという恐れがあるためで、それらを避けるために厳格になっている。

次に、火種は完全には消せないが、できるだけ小さくする方法について順次解説する。

① 養子縁組の活用

   養子縁組をすると法定相続人が増えるので、遺留分は当然減る。この場合、実子がいる場合は1名だけと誤解している人がいるが、それは税法上のことで、民法上は何人でも有効である。2人の養子にすればその分遺留分は減ることになる。しかし、新たなトラブルも想定されるため十分な検討が必要なことは言うまでもない。

② 生命保険金の活用

   民法上、生命保険は受取人固有の財産となるので、遺産分割の対象にもならないし、遺留分算定上の相続財産にも入らない。従って現金を残すより生命保険金で後継者に取得させ、後継者が他の相続人に代償金を払うという方法も選択できる。

③ 経営承継円滑化法の活用

  自社株式の「除外合意」(後継者が贈与受けた自社株式を遺留分の算定基礎から外す方法である。)「固定合意」(後継者が贈与を受けた時点の時価で固定して遺留分を計算する法である。)を活用する。しかし、これは相続人全員の賛同がないとできない。

④ 種類株式の活用

   自社株式を相続させる場合に、議決権のない株式を作っておき、相続の際にその無議決権株式を相続させる。また全部取得条項付株式を作っておき、相続後、会社がその自社株式を相続人から半ば強制的に購入する。相続発生後3年10か月以内なら、譲渡人にもみなし配当課税がされず、譲渡税だけですむので相続人の手取りも増える。

⑤ 信託の活用

   被相続人が委託者になり、後継者を受託者として財産を信託する。受益者は、最初、被相続人がなり、死亡後、後継者を指定しておく。他の相続人から遺留分の減殺請求があった場合は、受益権の一部を相続させる。しかし、その受益権に管理、処分権はない。

  上記を参考に少しでも「遺産争いの防止」に役立ててもらえればと思う。暑い日が続きます。皆さんお体ご自愛ください。

2018年6月30日  著 者   税理士  千葉 和彦

2018年6月 1日 (金)

相続対策の三本柱

  相続対策の三本柱は昔から変わっていないが、順番は変わった。昔は何が何でも①節税②納税資金③遺族間の争いの防止だった。それが現在は、まずは「遺族間の争い防止」が先で③~①の順番にその重要性は変わった。いくら節税対策を講じても、相続人間で揉めてしまったり、納税が困難になってしまっては、その相続対策は失敗だったということが、経験上わかってきたからだ。

   では、遺産争いは何故おきるのだろうか?それは戦後、民法の改正があり、相続人は均等割りの相続権を持つようになったからだ。例えば長男が両親の介護、家業の手伝い、他の兄弟姉妹の面倒をみてきても全く考慮されず、相続権は相続人の兄弟姉妹で、均等割りという何とも不思議な法律になっているのだ。

   私の顧客にも6人兄弟姉妹の長男の方がいた。その方の父上はご高齢で、100歳近くで亡くなった。母上はすでに亡くなっていたので、兄弟姉妹6人が相続人になった。父上は、亡くなる前5年くらいは寝たきりで、長男の奥様が世話をされていた。私が父上に遺言の話をすると、長男の奥様が私に次のように話した。「うちの主人は、弟や妹たちの面倒を小さい頃から良く見てきたんです。自分だけは高卒で家業を手伝ってきたけど、弟や妹たち全員に仕送りを続け、大学までだしてあげたのです。主人と義父は、朝早くから夜遅くまで真っ黒になって働いていました。ですから、うちの主人に逆らう弟や妹なんかいません。だから義父の遺言なんて必要ないのです。」と。

    しかし、いざ遺産分割協議の段階になると法律関係の仕事をしている妹の旦那さんが現れ、次のように話を切り出した。「お兄さんのことはみんな尊敬していますよ。しかし、法定相続分というものがありますからね。今回の相続は法律通りにお願いします。」と。他の弟や妹たちも一斉に右倣えをし始め、その結果、均等に分割するために、唯一の不動産である住み慣れた家も売却し、預貯金もかき集め、何とか遺産分割協議を済ませたのだ。

   何とも人情味のない話だが、フィクションでも何でもなく、これが現実なのだ。では、どうしたら良かったのだろうか。

    まずは、被相続人になる方は必ず「遺言」をしておくことが必須だ。これで争いごとの半分は避けられる。自分の財産を所有者が誰に相続させるか指示しているわけだから相続人は文句の言いようがない。人の財産を貰う立場の人同士が、話し合いをするから揉めるのだ。

   しかし、「遺言」していても油断は禁物だ。それは、各相続人には「遺留分」というものがあるからだ。たとえ遺言で相続させられなかった場合でも、相続人には法定相続分の半分の相続権がある。相続があったことを知ってから1年以内に自分の相続分に不満がある場合は、「遺留分の減殺請求」という形で請求できる。実際、遺言があったのに揉めている原因のほとんどはこの「遺留分の減殺請求」が原因だ。これを回避するのは、各相続人に遺留分を超える財産を相続させ、公正証書の遺言にしておく。そうすれば揉める余地はなくなるはずだ。しかし、そのように遺言で残すことは実際至難の業だ。そこでどのようにすればそれらをクリアした遺言書にできるかを次回は話していきたい。


2018年5月31日  著 書  千葉 和彦

2018年5月 7日 (月)

目標と実績の差を読む。

 4月に今年度最初の「将軍の日」を開催した。通算では87回目になる。「将軍の日」とは、「社長の日」いわば組織のトップに立っている人のために、丸一日かけたセミナーだ。

 朝10時から夕方6時まで、じっくり自分の会社の5年後を考えてもらう。そのために、事前に打ち合わせの上、必要事項は当社ですべて準備を済ませておく。当日、社長はそれを基に計画を立てていく段取りになっている。最初の90分だけ私が話をするが、残された時間はすべて社長自らがパソコンに向かい、じっくり考えてもらうという実践参加型のセミナーだ。

 もちろん当社のスタッフが一日ついているから、パソコンの知識は必要ない。また、会社の規模も社長の年齢も問わない。過去には、80歳の社長が参加されて、その社長が自分の友人にそのことを話したら、「お前まだ5年も社長続けるのか?」と言われたと笑っていた。

 「将軍の日」は社長と後継者に一緒に参加してもらうこともよくある。半信半疑で、参加してくる社長も多いが、終わってみると参加者のほとんどから「参加して良かった。」と言ってもらえ、こう言われた時ほど主催者冥利につきることはない。

 「将軍の日」に誘うと「うちの会社は、受注してみないとわからないので、売上予測はできない。」とか「経営計画を策定しても、計画通りに行かないから無意味だ。」と言って参加されない方が多い。しかし、この意見には大きな誤解がある。まずこのセミナーは、未来を予測するものでないということだ。我々は占い師でもなければ神でもないので、未来を予測することなどできない。先のことが分からないからこそ経営計画が必要なのだ。経営計画は、「目標の設定」なのだ。ただ、この目標の数字について、多くの人がそれぞれの疑問を持っていることも事実だ。

 かつて炎のコンサルタントと異名を取った一倉定先生も、疑問を持ったままの数字で計画を立て、目標を設定することに対して、誰しも躊躇するのが当然であるとも言っている。また、これに対する正しい回答や説明は、残念ながら、いかなる文献にもないし、あっても間違いだらけだと話している。

 一倉先生は「いくら数字を読もうとしても読めないのだ。そこで、仕方がないので読める数字だけを読むよりほかはない。それが過去の数字を読むということになる。恐らくは、世界中の人々が過去の数字だけを読む、と言うより読まされているわけだが、これより外に読みようがないのだから、いたし方ないということらしい。

 このように、ほとんどすべての人々が数字を正しく読めないというのはなぜだろうか。答えは簡単、正しい読み方を教えてくれる人がいないからだ。正しい読み方は、事業経営者なら誰でも説明を受ければすぐに分かる。それは極めて簡単『目標と実績の差を読むこと』これだけである。」と話している。一倉先生の言われるように、「目標は実績との差を読むために存在する」と見方を変えると、誰でも急に目の前が開けてくるような気がするはずだ。

 企業経営において大事なことは「すぐれた業績を上げること」だ。そして、そのために「目標」は存在する。その差を埋めるためにどう行動すべきかをトップ自らが考え、行動を起こしていくことが優れた業績につながっていくのだ。経営者の皆さん、この「目標と実績の差」を考え続け、業績アップにつなげようではありませんか。応援しています。

 

 

2018年4月30日(月) 著 者  税理士  千葉 和彦

2018年4月 2日 (月)

一般社団法人への規制

先日、ある顧問先の会長が、どうにもうかない顔で話し始めました。以下はその時の会話です。

 

会長「一般社団法人に相続税が課税されると最近の日経にでていました。昨年設立した私の一
    般社団法人は無意味だったということですか?」

 

私 「会長の社団法人は課税されませんよ。」

 

会長「えっ!どうしてですか。一般社団法人に私の株を全部移したはずですが・・・」

 

私 「会長の株は移されておりません。一般社団法人を受託者として株を預けているだけです。」

 

会長「一般社団法人で所有しているアパートにも課税されないのですか?」

 

私 「一般の法人税は課税されますが、相続税は課税されません。」

 

会長「いや、不動産にも課税されると書いてあったと記憶しているのですが・・・」

 

私 「会長、それは会長の不動産を一般社団法人に売却した場合で、今回のアパートは、一般社団
      法人が第三者から直接購入したものですから、関係ありませんよ。」

 

会長「では、うちの一般社団法人のメリットは何だったと考えればいいですかね?」

 

私 「会長は自分の株式を受託者である一般社団法人に信託しているのですから、もしも会長が認
      知症などになっても問題なく議決権は行使されるので経営は安泰ということです。しかも、
      次の受益者も指定していますから安心です。例えば、信託を使わず専務をしている次期後継
      者の長男に株式を贈与したとします。その後、もしも長男が事故などで急死してしまったら、
      事業には関わっていない長男の奥さんが株式を相続してしまいます。世の中には、そのせい
      で会社が傾いてしまったというケースもあります。信託しておくことでそのようなリスクも
      避けられるのです。信託は民法よりも強いですからね。会長の信託した株式も、長男に万が
      一のことがあった場合、株式は一緒に経営に関わっている次男に承継するように信託契約書
      を作成しましたので、その株式は奥さんにはいかず、次男に相続されます。このようなこと
      ができるのは、信託だけです。信託には節税という考え方はなく、また家族信託は営利行為
      でもないという特徴を考えると、受託者が一般社団法人というのは、自分や親族のもしもに
      備えるためには、すごく使い勝手が良いものではないでしょうか。しかも一般社団法人には
      資本金がありませんので、株式を相続する面倒が避けられのは従来通りです。」

 

会長「頭の中が良く整理されていなくて、焦りましたが、先生の話を聞いて安心しました。」

 

  今回の改正は平成30年4月1日以後(同日前に設立された一般社団法人等については平成33年4月1日
  以後に適用される。)の役員の死亡にかかる相続税について適用されます。適用される一般社団法人は
  同族役員数が2分の1を超える場合で、その時の一般社団法人の純資産を役員数で除した金額が一般
  社団法人に遺贈されたことになります。
 
  前から議論があったところですので、今回はっきり決まってかえって良かったのではないかと前向きに
  考えています。一般社団法人そのものが否認されたと誤解されている方もおりますが、 決してそのような
  ことはなく、特徴を良く把握し、活用していきましょう。

 

2018年3月29日(木) 著 者  税理士   千葉 和彦

2018年3月 3日 (土)

外国人技能実習生制度の活用

 「どんなに募集をかけても申し込みがない。」「やっと新人が採用できたと思ったらすぐに辞められた。」「とにかく人が取れない。」人手不足がどの業界でも深刻です。
 
最近お会いした社長さん方、運送業、建設業、介護事業、販売業・・・・。どの業種に限らず悩みは共通のようです。中には、「先生うちのトップ営業マンにこんな手紙がきているよ」と見せてくれた社長がいます。
 
その手紙の中には、その営業マン個人あてにA4の用紙びっしりと甘い言葉で転職の誘いが書かれていました。誰でも引き込まれそうな名文で、魅力ある言葉で一杯。やる気のある若い人なら誰でも心が動かされて当然と思えるものでした。
 
特に介護業界は深刻さが増してきています。このままでは団塊の世代が後期高齢者になる2030年までに30万人以上の介護士が不足し、患者さんへ十分な介護サービスが提供できないだけでなく、現在働いている職員の疲弊にもつながりかねません。
 
もちろん人手不足を補うという目的だけで今回の外国人介護実習生を採用することはできませんが、介護実習生を計画的に採用することで、事業計画も立てやすくなることは間違いありません。
 
 1993年より外国人技能実習生制度が制度化され、様々な職種で活用されてきましたが、その対象職種に、新たに介護が昨年11月より加わりました。
 
この外国人技能実習制度の趣旨は人材不足を単に補うものではなく、日本の企業が発展途上国の若者を技能実習生として受け入れ、実際の実務を通じて実践的な技術や技能・知識を学んでもらい、帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とした公的制度です。
 
そのため宿舎を新築して積極的に受け入れを準備しているところもあれば、文化や価値観の違いを踏まえた十分な指導ができるか戸惑っているところも多いようです。
 
 この制度に対する理解不足から過去には賃金不払いや失踪事件なども数多くあり、ただ単に安い賃金で人手不足を補おうという考え方ではだめです。この制度を取り入れる際には、この制度に対し、十分な理解と準備、また子供が一人増えるくらいの覚悟を持って取り組まなければなりません。
 
 そのためにはベトナムの送り出し機関も日本側の監理団体もしっかりしたところを選択する必要があります。現在ベトナムには約240の送り出し機関がありますが、そのほとんどが弱小(数名から数十名/年間)です。信頼できる送り出し機関選定のポイントは以下の通りです。
 
①専用の学校施設を所有しているか
 
②専用の学生寮を所有しているか
 
③専任の日本人有資格教師が常任しているか
 
④教育方針、教師、プログラムは会話重視型か
 
⑤候補生の与信の取り方は適切か⑥送り出し機関が法律を遵守しているかなどです。
 
 今回上記の条件をすべてクリアしているベトナムの派遣元の責任者の方を4月20日に仙台にお招きし、直接本人から話を伺う機会を持つことができました。
 
是非この機会に関心のある方は参加していただき、直接疑問点などぶつけて生の声を聞いていただければと思います。一人でも多くの方の参加をお待ちしています。
 
2018年2月26日 税理士 千葉和彦
 
 

«平成30年度税制改正の目玉‥事業承継税制