2020年10月 1日 (木)

上手な事業承継・・黒字経営

  ずいぶん前の話になるが、ある弁護士の「事業承継セミナー」を受講し、衝撃を受けたことを思い出した。その弁護士が「所得が4000万円も出ていない会社は無理やり子供に継がせる価値はない。」と大胆に言い切っていたからだ。4000万円という金額は、十数年前まで高額所得法人として公表される場合の基準だったので、その数字を参考にしたのだろうが、それにしてもとんでもないことを言う弁護士だなと思った。

  しかしそう思いながらも半分同意していた自分に気づいた。私が一理あると思ったのは長年、税理士とし様々な企業を見てきたからだ。しっかり儲かっている会社にしておかなければ当然、自由に使えるキャッシュがない。先代に退職金も払えないし、再投資資金もないから借入金がまた増える。これでは事業承継はおろか、会社の存続すら危ぶまれる。私は4000万円以上の利益はともかく、まずは黒字の会社であることが事業承継の最低条件だと考える。もし現在赤字なら、早急に黒字化を図ることが重要だ。さすがに赤字で借金まみれの会社を誰も継ぎたいとは思わないだろう。

  ではどのくらいの黒字を出せば良いのかと聞かれる方がいるが、それに対しては「いくらでもよい」と答えている。今赤字体質なのであれば、会社の現状を冷静に分析し、黒字になるための知恵を絞り、地道に実行していくことが先だ。


  また「しっかり利益を出し、内部留保を高めよう。」とはよく言われる言葉だが、決して鵜呑みにしてはならない。中小同族企業は、社長一族と会社の税金を合算して考えなければならない。そのためには、個人、法人合わせて最も税負担の軽い分岐点を常に考えながら経営しなければならない。


  若い経営者の中には、役員報酬を異常に低くして、会社に利益を多額に計上して自慢している社長がいるが、勘違いも甚だしい。会社が順調に進んでいるときはそれでも良いが、今回のような外部環境の激しい変化で業績が急激に落ち込んだ時などどのように対処しようとしているのか考えてほしい。


  含みの簿外資産の保険や倒産防止共済も有効だが、いざとなれば社長がいつでも資金を拠出できるようでなければならない。それには普段から役員報酬をしっかり取り、資金を貯めておかなければならない。役員報酬は生活費でなく、経営戦略上の数字である。「うちには力強い銀行さんが付いているから大丈夫」と言う社長もいるが、私の経験上、そのような社長ほど、沈むのが早い。確かに、銀行の役割には国民経済の健全な発展に資することとあるが、銀行も利益を追求する企業であることを忘れてはならない。

  現在のように外部環境の変化が激しくなかなか黒字が出せないときは、焦らず、特別融資をうまく活用し、手元資金を潤沢にして、じっくりチャンスを待とう。大変な時ですが、一緒に頑張っていきましょう。

2020年9月 1日 (火)

地元中小企業向けのM&A支援について

ここ2~3年、M&Aを実行する関与先さんが増えてきている。つい数年前までは、東北ではM&Aは、なかなか馴染まないと考えていたが、ここにきて、多くの企業に「後継者問題」が差し迫り、まさしく「待ったなし」の状況になっているのではないかと思う。


 中小企業のM&Aの分野で、日本で一番実績があり、しかも東証一部にも上場している㈱日本エムアンドエーセンターは、平成3年に設立されたが、私も創業者の方とは以前から交流があり、今日までお付き合いさせていただいている。


 M&Aセンターは、創業時からこの30年間、成約件数は右肩上がりで、すでに累計5000件を超えているそうだ。しかもこれからの10年間は日本の中小企業の事業承継のラッシュが起こると考えられ、今年3月公表された経済産業省の「中小M&Aガイドライン」によると官民合わせて10年間で60万件のM&Aを目指し、そのための支援策を抜本拡充していくと述べている。


 通常「後継者」がいなければ、①清算・廃業②M&Aのいずれかを選ぶ以外にない。後腐れのない「清算・廃業」が良いという方もいる。しかし、この選択をすると、今までの取引先、仕入先、顧客、ノウハウ、技術は消失し、従業員も解雇せざるを得ない。また清算時の所得にも課税がなされ、経営者の手取りは大きく減ることになることを忘れてはならない。


 そこでM&Aが登場するが、正直言って、地元の中小企業には敷居が高く感じられているかもしれない。何故ならそのような専門会社に依頼した場合、高額な(専門家が長い時間をかけて動くのでコストがかかる。)報酬の提示がなされ、そこで、しり込みしてしまうことが多いようだからだ。


 日本の企業の90%以上が売上高10億円以下である現実を踏まえると、このクラスの企業が気軽にM&Aに取り組めることが必要だ。そのためには、コストをできるだけ抑えたM&Aのモデルが必要ではないかと私は以前から考えていた。


 具体的に言うと、譲渡・買収額は1億円以下、売上高は3億円くらいまでを対象とし、従業員数は数人から30名程度のM&Aで、更に専門家のアドバイスが受けられながら、仲介報酬も現在中堅企業になされているような報酬の10分の1程度で収まれば、地元の中小企業も取り組みやすいのではないかと考えていた。


 そのようなニーズに答えるために、㈱日本M&Aセンターのグループとして、㈱バトンズが一昨年設立された。通常の仲介業務ではなく、インターネットを利用したM&Aマッチングをアシストし、対象は先程述べた規模の会社を対象としている。しかし、各企業が自分で契約までこなすのは大変なことなので、「支援専門家」制度が設けられている。当社も「M&A支援専門家」として登録させていただいたので、いつでもご気軽に相談してほしい。


  今回、皆様に少しでも周知していただくためにBatonz(バトンズ)のチラシを事務所通信に同封させていただきましたので、是非お目通しいただければと思います。

2020年8月 3日 (月)

しっかりと「決算書」が読める社長になろう!

   当社では今年2月まで毎月事務所主催でセミナーを開催してきたが、今年は新型コロナウイルスの関係で年内のセミナーをすべて中止した。セミナーのテーマは経営に関するものが中心になるが、決算書の読み方については毎年必ずテーマに取り入れている。

   以前、年商が50億円もある社長が当社のセミナーに参加して「正直、決算書の見方が良くわからないのですよ。今更、基礎的なことを顧問税理士にも聞けないので、今日参加させていただきましたよ。」と話してくれた。私は驚いた反面、案外そのような社長が多いのではと考え、お会いする社長ごとに尋ねてみることにした。するとやはり「実は決算書の見方が今一わからない。」という答えが多かったのだ。

   そういえば京セラの稲盛会長も創業当時は決算書が読めなくて、必死で勉強したと話していた。見渡してみると経理畑出身の社長はほとんどいない。稲盛会長も技術畑出身だった。社長が営業畑か技術畑出身という方が多いようだ。決算書の読み方が苦手なのは、こんなところに原因があるのかもしれない。

  しかし、社長となった以上「決算書が読めない。」では済まされない。1996年負債総額220億円で倒産した熊本の元㈱佐藤工務店の社長は「わが社に一人でも貸借対照表が読める社員がいればこんなことにならなった。」と話していた。この話を顧問先の社長に話すと、その社長は「そもそも社員のせいにしていること自体甘いですよ。社長が貸借対照表を自らしっかり読めるように勉強しておけば良かったのではないですか。」と返してくれ、とても頼もしく思ったことがある。その社長は、三代目の社長だが、とても勉強熱心で、決算書も常に自分なりにしっかり分析されて、経営計画も立てている。このコロナ禍にも負けず業績も良い。

 決算書の中心は、貸借対照表と損益計算書だ。まずはこの二つの資料がしっかりと読めないとならない。多くの社長は損益計算書の売上と利益だけはしっかりと見るようだが、貸借対照表は毛嫌いして見ようともしない人が多い。しかし、貸借対照表には資産負債の状況が今どうなっているのか、これからどう手を打っていかなくてはならないかを知るための重要な経営指標がいっぱい詰まっている。

   しまってある決算書や試算表を引っ張りだし、貸借対照表の現金預金をしっかりと見てほしいと思う。そして月商の2か月分以上あるか、年間固定費の半分以上あるか、流動負債の半分以上あるか、借入金の半分以上あるかをチェックしてほしいと思う。何故なら、いざという時に頼りになるのはキャッシュだからだ。次に総資産から総負債を除いた純資産を見てほしい。この純資産が総資産に占める割合を自己資本比率というが、この比率が最低でも30%以上あるか確認してほしい。

   前述した㈱佐藤工務店はこの部分が弱かった。利益が出ても節税という名目で必要でないものまで購入していたため、内部留保は積み上らなかったのだ。この場合の自己資本比率だが、簿外資産の保険の解約金や土地の含み益のようなものは、加えて計算することが重要だ。逆に言うと、含み損がある場合は、これを控除して計算することになる。まずは、この2点をしっかり見ていただければ貸借対照表の読み方のコツはつかんだことになるので、まずは取り組んでもらいたいと思う。わからない時は気軽にお声がけください。いつも応援しています。

2020年7月 2日 (木)

新型コロナ後を見据えて、今こそ社員教育に取り組もう!

 先日お会いした社長が言うには、最近急に、会社への入社希望者が増えだしたとのこと。それで面接日を決め、どこから応募してきたかを聞くと東京からという人が多いので、少し後ずさりしてしまうと言っていた。

 私は、その社長の話を聞いてコロナ後の人の流れが「大都市から地方へ」という流れが始まっているのかもしれないと感じた。「地方から大都市へ」という人の流れは、過去の常識となり、今後は、地方への流れが強くなってくるのではないかと。今やITの進化は日進月歩で、ITツールを活用すれば、どこでも仕事もこなせるし、生活コストが安く、3密を避けられる地方への流れが容易に予想される。先日、内閣府で発表された調査では、テレワーク経験者のうち、4人に1人が地方移住への関心を高めているという。

 そう考えると、地方企業の人材確保に明るい兆しが見えそうだが、決してそのようなことはない。その理由は、第一に日本の人口減少傾向だ。また第二に外国人人材の減少である。近年、海外実習生などの外国人が、地方の中小企業の重要な働き手になってきていることは否めない。


 政府も20194月から特定14業種での特定技能資格の創設などで積極的に外国人受け入れに力を入れてきたが、今回のコロナ禍で見直される可能性が高い。地元の中小企業は、相変わらず人材不足に悩まされることは変わらない。そこで、やはり今やるべきことは社員教育だと私は思う。今いる人材の能力を最大限引き出しているか、会社にとって生産性をもたらす仕事の与え方になっているかを再考する絶好の機会ではないかと考える。

 人材教育には、社員個々のスキルアップ、能力アップは当然重要だが、より重要なことは、組織能力の向上である。組織能力を向上させるためには、社員全員のベクトルを同じ方向に向かわせなければならない。社員が不安になっているときこそ、会社がなにを目指しているのか、どこに向かっているのかを社長が先頭に立って指し示すことが大事だ。

 そこで重要になってくるのは、会社の「経営理念」で、その理念が社員の一人一人に浸透していなければならない。具体的には毎朝朝礼で唱和をしたり、ミーティング時にも開始前に唱和していくなど、社員一人一人が「経営理念」に触れる機会を増やすことが必要だ。どんな立派な「経営理念」でも社員に浸透していなければ、「絵に描いた餅」だからだ。個々のスキルアップや能力アップを目指す社員教育は、ただやみくもに行うのではなく、この「経営理念」に沿って戦略的に取り組まなければならない。

 反復するが、今この時期こそ社員教育の時期だということを再認識して経営に取り組んでもらいたいと思う。

2020年5月26日 (火)

電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である。

   今回の新型コロナウイルス騒動はなかなか落ち着きそうもない。直接大打撃を受けている観光関連の産業や飲食店などは、かつてない業績の落ち込みで今後に不安を増大させている。この業績の落ち込みは、遅かれ早かれほとんどの業種に及んでくるだろう。何故なら、すべての業種は、何らかの形でつながっているからだ。どの業界にとっても対岸の火事ではない。コロナ禍は、過去に類を見ない経済への打撃を与えているのだ。

 そのような中、同じ飲食業でも「もうだめだ。」とあきらめている社長もいればユニークな手作り弁当販売に切り替えて売り上げをあげている社長もいる。またコロナが収まった時のことを考えて、飲食券やボトルを割引前売り販売して売り上げを確保している社長もいる。

   30年余り税理士をしてきた私の経験則だが、逆境に強い社長は、本能的にとも言えるくらい前に進もうとする。しかし、それはやみくもにではなく、環境の変化にどう対応したらよいか、どうすれば必要とされる企業でいられるかを必死に考えるのだ。このような時こそあらゆる知恵を総動員して、実行に移していくことが大事なのは言うまでもない。

   その時に先頭に立つのは当然トップの社長だ。社長が弱気になったり、あきらめているところは、業績も低下するだけで、そのような会社に縁あって勤めた社員も、悲劇としか言いようがない。逆境の時こそトップの社長の心意気が問われる。辛いかもしれないが、それが社長の宿命だ。

   かつての名経営コンサルタントの一倉定先生は、その著書で「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である。」と言い放ち、「社長が知らないうちに起こったことでもすべて社長の責任なのだ。何がどうなっていようと、結果に対する責任はすべて社長が取らなければならないのだ。人の上に立つものは、部下が何をしようとそれはすべて自分の責任である。という態度がなければ、本当の意味で人を使うことはできないのである。部下の信頼を得ることができないからである。」と話している。中小企業の業績は、99%社長で決まると言われているが、今回ほど社長のリーダーシップが問われるときはないのではないかと考える。

   では、何をまずすべきかと問われれば、それは、何と言っても資金確保が最優先である。それもできるだけ低利で長期間の据え置きを前提に借りることが大事だ。まずは一番取引のある金融機関に相談して見ることが先決だ。中には借りたものは返さなくてはならないからと話す方もいるが、まずは借りて手元に置き、使わなかったら後日返せばよいだけである。その間の利息は保険料と思えば安いものだ。まずは、いろいろな制度を活用して、資金確保しておき、この時期を生き延びることが、社長、従業員いずれにおいても最大課題であるからだ。

 辛いことだが、どのような時でも社長は、業績の結果を外部環境や従業員のせいにしてはならない。すべては社長の責任であるということを肝に銘じて、覚悟を決めて、笑顔で取れる対策を着実に実行していかなければならない。同じ社長として応援しています。

 

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