2018年5月 7日 (月)

目標と実績の差を読む。

 4月に今年度最初の「将軍の日」を開催した。通算では87回目になる。「将軍の日」とは、「社長の日」いわば組織のトップに立っている人のために、丸一日かけたセミナーだ。

 朝10時から夕方6時まで、じっくり自分の会社の5年後を考えてもらう。そのために、事前に打ち合わせの上、必要事項は当社ですべて準備を済ませておく。当日、社長はそれを基に計画を立てていく段取りになっている。最初の90分だけ私が話をするが、残された時間はすべて社長自らがパソコンに向かい、じっくり考えてもらうという実践参加型のセミナーだ。

 もちろん当社のスタッフが一日ついているから、パソコンの知識は必要ない。また、会社の規模も社長の年齢も問わない。過去には、80歳の社長が参加されて、その社長が自分の友人にそのことを話したら、「お前まだ5年も社長続けるのか?」と言われたと笑っていた。

 「将軍の日」は社長と後継者に一緒に参加してもらうこともよくある。半信半疑で、参加してくる社長も多いが、終わってみると参加者のほとんどから「参加して良かった。」と言ってもらえ、こう言われた時ほど主催者冥利につきることはない。

 「将軍の日」に誘うと「うちの会社は、受注してみないとわからないので、売上予測はできない。」とか「経営計画を策定しても、計画通りに行かないから無意味だ。」と言って参加されない方が多い。しかし、この意見には大きな誤解がある。まずこのセミナーは、未来を予測するものでないということだ。我々は占い師でもなければ神でもないので、未来を予測することなどできない。先のことが分からないからこそ経営計画が必要なのだ。経営計画は、「目標の設定」なのだ。ただ、この目標の数字について、多くの人がそれぞれの疑問を持っていることも事実だ。

 かつて炎のコンサルタントと異名を取った一倉定先生も、疑問を持ったままの数字で計画を立て、目標を設定することに対して、誰しも躊躇するのが当然であるとも言っている。また、これに対する正しい回答や説明は、残念ながら、いかなる文献にもないし、あっても間違いだらけだと話している。

 一倉先生は「いくら数字を読もうとしても読めないのだ。そこで、仕方がないので読める数字だけを読むよりほかはない。それが過去の数字を読むということになる。恐らくは、世界中の人々が過去の数字だけを読む、と言うより読まされているわけだが、これより外に読みようがないのだから、いたし方ないということらしい。

 このように、ほとんどすべての人々が数字を正しく読めないというのはなぜだろうか。答えは簡単、正しい読み方を教えてくれる人がいないからだ。正しい読み方は、事業経営者なら誰でも説明を受ければすぐに分かる。それは極めて簡単『目標と実績の差を読むこと』これだけである。」と話している。一倉先生の言われるように、「目標は実績との差を読むために存在する」と見方を変えると、誰でも急に目の前が開けてくるような気がするはずだ。

 企業経営において大事なことは「すぐれた業績を上げること」だ。そして、そのために「目標」は存在する。その差を埋めるためにどう行動すべきかをトップ自らが考え、行動を起こしていくことが優れた業績につながっていくのだ。経営者の皆さん、この「目標と実績の差」を考え続け、業績アップにつなげようではありませんか。応援しています。

 

 

2018年4月30日(月) 著 者  税理士  千葉 和彦

2018年4月 2日 (月)

一般社団法人への規制

先日、ある顧問先の会長が、どうにもうかない顔で話し始めました。以下はその時の会話です。

 

会長「一般社団法人に相続税が課税されると最近の日経にでていました。昨年設立した私の一
    般社団法人は無意味だったということですか?」

 

私 「会長の社団法人は課税されませんよ。」

 

会長「えっ!どうしてですか。一般社団法人に私の株を全部移したはずですが・・・」

 

私 「会長の株は移されておりません。一般社団法人を受託者として株を預けているだけです。」

 

会長「一般社団法人で所有しているアパートにも課税されないのですか?」

 

私 「一般の法人税は課税されますが、相続税は課税されません。」

 

会長「いや、不動産にも課税されると書いてあったと記憶しているのですが・・・」

 

私 「会長、それは会長の不動産を一般社団法人に売却した場合で、今回のアパートは、一般社団
      法人が第三者から直接購入したものですから、関係ありませんよ。」

 

会長「では、うちの一般社団法人のメリットは何だったと考えればいいですかね?」

 

私 「会長は自分の株式を受託者である一般社団法人に信託しているのですから、もしも会長が認
      知症などになっても問題なく議決権は行使されるので経営は安泰ということです。しかも、
      次の受益者も指定していますから安心です。例えば、信託を使わず専務をしている次期後継
      者の長男に株式を贈与したとします。その後、もしも長男が事故などで急死してしまったら、
      事業には関わっていない長男の奥さんが株式を相続してしまいます。世の中には、そのせい
      で会社が傾いてしまったというケースもあります。信託しておくことでそのようなリスクも
      避けられるのです。信託は民法よりも強いですからね。会長の信託した株式も、長男に万が
      一のことがあった場合、株式は一緒に経営に関わっている次男に承継するように信託契約書
      を作成しましたので、その株式は奥さんにはいかず、次男に相続されます。このようなこと
      ができるのは、信託だけです。信託には節税という考え方はなく、また家族信託は営利行為
      でもないという特徴を考えると、受託者が一般社団法人というのは、自分や親族のもしもに
      備えるためには、すごく使い勝手が良いものではないでしょうか。しかも一般社団法人には
      資本金がありませんので、株式を相続する面倒が避けられのは従来通りです。」

 

会長「頭の中が良く整理されていなくて、焦りましたが、先生の話を聞いて安心しました。」

 

  今回の改正は平成30年4月1日以後(同日前に設立された一般社団法人等については平成33年4月1日
  以後に適用される。)の役員の死亡にかかる相続税について適用されます。適用される一般社団法人は
  同族役員数が2分の1を超える場合で、その時の一般社団法人の純資産を役員数で除した金額が一般
  社団法人に遺贈されたことになります。
 
  前から議論があったところですので、今回はっきり決まってかえって良かったのではないかと前向きに
  考えています。一般社団法人そのものが否認されたと誤解されている方もおりますが、 決してそのような
  ことはなく、特徴を良く把握し、活用していきましょう。

 

2018年3月29日(木) 著 者  税理士   千葉 和彦

2018年3月 3日 (土)

外国人技能実習生制度の活用

 「どんなに募集をかけても申し込みがない。」「やっと新人が採用できたと思ったらすぐに辞められた。」「とにかく人が取れない。」人手不足がどの業界でも深刻です。
 
最近お会いした社長さん方、運送業、建設業、介護事業、販売業・・・・。どの業種に限らず悩みは共通のようです。中には、「先生うちのトップ営業マンにこんな手紙がきているよ」と見せてくれた社長がいます。
 
その手紙の中には、その営業マン個人あてにA4の用紙びっしりと甘い言葉で転職の誘いが書かれていました。誰でも引き込まれそうな名文で、魅力ある言葉で一杯。やる気のある若い人なら誰でも心が動かされて当然と思えるものでした。
 
特に介護業界は深刻さが増してきています。このままでは団塊の世代が後期高齢者になる2030年までに30万人以上の介護士が不足し、患者さんへ十分な介護サービスが提供できないだけでなく、現在働いている職員の疲弊にもつながりかねません。
 
もちろん人手不足を補うという目的だけで今回の外国人介護実習生を採用することはできませんが、介護実習生を計画的に採用することで、事業計画も立てやすくなることは間違いありません。
 
 1993年より外国人技能実習生制度が制度化され、様々な職種で活用されてきましたが、その対象職種に、新たに介護が昨年11月より加わりました。
 
この外国人技能実習制度の趣旨は人材不足を単に補うものではなく、日本の企業が発展途上国の若者を技能実習生として受け入れ、実際の実務を通じて実践的な技術や技能・知識を学んでもらい、帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とした公的制度です。
 
そのため宿舎を新築して積極的に受け入れを準備しているところもあれば、文化や価値観の違いを踏まえた十分な指導ができるか戸惑っているところも多いようです。
 
 この制度に対する理解不足から過去には賃金不払いや失踪事件なども数多くあり、ただ単に安い賃金で人手不足を補おうという考え方ではだめです。この制度を取り入れる際には、この制度に対し、十分な理解と準備、また子供が一人増えるくらいの覚悟を持って取り組まなければなりません。
 
 そのためにはベトナムの送り出し機関も日本側の監理団体もしっかりしたところを選択する必要があります。現在ベトナムには約240の送り出し機関がありますが、そのほとんどが弱小(数名から数十名/年間)です。信頼できる送り出し機関選定のポイントは以下の通りです。
 
①専用の学校施設を所有しているか
 
②専用の学生寮を所有しているか
 
③専任の日本人有資格教師が常任しているか
 
④教育方針、教師、プログラムは会話重視型か
 
⑤候補生の与信の取り方は適切か⑥送り出し機関が法律を遵守しているかなどです。
 
 今回上記の条件をすべてクリアしているベトナムの派遣元の責任者の方を4月20日に仙台にお招きし、直接本人から話を伺う機会を持つことができました。
 
是非この機会に関心のある方は参加していただき、直接疑問点などぶつけて生の声を聞いていただければと思います。一人でも多くの方の参加をお待ちしています。
 
2018年2月26日 税理士 千葉和彦
 
 

2018年2月 1日 (木)

平成30年度税制改正の目玉‥事業承継税制

 平成30年度の税制改正の目玉は何と言っても、「事業承継税制の改正」だ。今年度4月1日以後スタートする。
 
当初経済産業省は、ドイツなどに「5年で免除」の制度があるということで、我が国も同じく事業を5年継続したら猶予税額はすべて免除することを提案していたようだ。
 
しかし実際に財務省がドイツに行って調べてみると、遊休不動産、賃貸不動産、余裕資金を除いた事業用財産にかかる分だけが免除だったことが判明したため5年で免除案は受け入れられなかったようだ。
 
 今回の改正は新たに創設されたもので、前の「事業承継税制」は、そのまま生きていることにも注意が必要だ。
 
各新聞紙上では10年間の限定で、と書かれているが、今回の改正では、5年以内(平成35年3月31日)に認定経営革新等支援機関の支援・援助のもとに「特例承継計画」を都道府県に提出することが条件であり、
 
それから5年以内に自社株の贈与の実行をすることが大前提なので、提出が5年後ぎりぎりになった場合に、そこから5年以内にということで、10年限定という書き方をしているのだ。
 
届け出はあくまでも5年以内が条件であることに注意が必要だ。
 
自社株の贈与の実行は、平成39年12月31日までが条件なので、正式には9年9ヶ月に限定された制度になる。
 
もし提出後、5年以内に代表者が自社株の贈与をせずに死亡した場合は、相続税の納税猶予として、当然この猶予制度は使えることになるので、まずは提出しておくというのも一つの対策になるだろう。
 
たとえ使わなかったとしても特に罰則はないのだから、まずは提出しておきたい。
 
仮に、提出を忘れ、代表者が死亡した場合でも前の「事業承継税制」は使えるので決して諦めてはいけない。
 
ただしその場合の納税猶予は80%しかできず、しかも80%の雇用継続要件からも逃げることはできない。
 
 今まで、この制度が活用されなかった一番の理由は、80%の雇用継続要件だ。
 
今回は、この要件も実質撤廃と言ってよい。
 
もし雇用が80%維持できなかった場合には、経営革新等支援機関を通じて、なぜ達成できなかったか等の実績報告を提出し、妥当と認められればOKということになるからだ。
 
これはOKを前提にしたものと考えられる。
 
 また出口のリスクも今回軽減されている。
 
5年経過後に株式を譲渡、合併、清算をした場合に、その時の株式の時価分の税金しかかけられず、その差額分は免除されることになった。
 
このように使い勝手が良くなった「事業承継税制」だが、今まで通り、資産管理会社には適用できないのが残念だ。
 
不動産や預貯金、有価証券の割合が70%を超えるか、又は家賃収入が売り上げの75%を超えると、その会社は資産管理会社と見られてしまう。
 
しかし、従業員を5名以上(生計を別にした親族でもOK)雇用していれば、資産管理会社と見られないので、対策の一つに加えてはいかがだろうか。
 
今回の制度は株価評価が高くなりすぎている会社に活用するものだが、以前のように退職金を支給し、株価評価を引き下げる手法や暦年贈与を活用する手法は有効なので、自社に合った方法での対応が重要と考える。
 
ただ株価が高くなりすぎて困っているところは、今回の「事業承継税制」を大いに活用してはいかがだろうか。応援しています。
 
2018年1月29日    税理士  千葉和彦

2017年12月27日 (水)

自社株の評価が高すぎて、打つ手がない!

「自社株が高くなりすぎていて、打つ手がない。」と途方に暮れていた経営者の方にとって、まだ詳細は決まっていないが、今回の事業承継税制の改正は朗報だ。

 農家には大きな納税猶予の制度があるのに、何故中小企業の納税猶予制度は、条件が厳しい上、猶予額も少なく、使い勝手の悪いものなのかと常々疑問に思っていた。中小企業の自社株式は農家の田んぼや畑と同じものだ。事業を続ける限り持ち続けなければならず、上場株式のように売却して現金化などできないのだ。

 自社株対策と言えば、「できるだけ株価評価を引き下げて後継者に移転する。」のが原則だ。株価評価を引き下げるには、まず利益を引き下げなければならない。そのためには戦略的に損金を作る必要があった。そこで役員退職金の支給、オペレーティングリースや保険の活用で損金を作り、その期の利益を引き下げる。

 しかし内部留保がたっぷりある会社には効果が薄い。それではとそこで借入をし、不動産投資を行う。3年間待てば評価が下がり、ある程度の効果は見込める。

   こうしてあれやこれや試してみるが、それでも老舗の優良企業の株価は、おいそれとは下がらないのが現実だ。しかも血のにじむような努力で、やっと少し下げたのに後継者が、いなかったり、いてもまだ株式を渡すには早かったりと、後継者問題がつきまとう。何とも頭が痛い話だ。

  そこでそのような時のために、持株会社を作り、そちらに譲渡しておく手法がある。この持株会社は通常は株式会社が常道だが、株式会社ではその資本金の相続の問題がいつまでも付いてくるので、この持株会社を少し工夫して一般社団法人にする。

   一般社団法人に自社株を売却しておけば、後継者が決まった段階で理事長交代により、簡単に承継することができる。しかも最大の効果は、一般社団法人に自社株を入れてしまえば、そもそも一般社団法人は資本金のない会社だから永遠に自社株の相続の問題から解き放たれるという夢のような話だ。

   ところが今回この夢のような話にも一般社団法人の理事がほとんど親族の場合は一般社団法人に入れた財産にも相続税をかけようという規制が入りそうだ。しかし、ここで誤解してならないのは、一般社団法人そのものが否認されるということではないことだ。一般社団法人は、家族信託の受託者としても大いに活用できるし、株式会社と同じくどんな営利事業でもできるのだ。一般社団法人は、使い方次第で、まだまだ活用の余地は大きいと思う。

 事業承継に取って一番鍵になるのが何と言っても、この自社株の引き継ぎだ。いかに税負担を少なく、しかもスムーズに後継者に引き渡せるかが命運を握る。来年はこの事業承継税制が使い勝手良いように改正される。しかし10年という期間制限つきだ。

  今まで株価が高すぎてどうしようもないと自暴自棄になっていた社長もこの機会に自社の事業承継を見直すチャンスだ。上手に自社株を引き継げれば、100年企業への仲間入りも決して夢ではない。国もそのような会社が一社でも多くでてきて未来永劫税金を払ってくれることを望んでいるのだ。諦めずに知恵を出すことで、必ず未来は切り開けるものと確信している。

  経営者の皆さん今年も一年間本当にお世話になりました。来年もよろしくお願いします。


2017年12月24日(日) 著 者  税理士   千葉 和彦 

«広大地の評価改正・・地主さん増税・・年内に対策を!