2022年9月 5日 (月)

相続税の納税資金対策

  相続が発生した時、相続人は、相続の開始を知った日の翌日から10ケ月以内に相続税を納めなければなりません。現金の一括納付が原則です。現金が不足する場合は、利子を払って延納にするか(資金繰り表を提出したり、担保を提供したりとなかなか面倒な手続きです。)現金の代わりに土地等で支払うことが出来ます。(これを物納と言います。過去に何度か手続きをさせていただきましたが、最近は物納の条件が厳しく、なかなか受け入れてもらえなくなりました。国側も土地を欲しいわけではないので、その土地を現金化するなど、ひと手間かける余裕もなくなってきたのだと思います。)

 相続財産に豊富な現金がある場合には、相続人も納税に苦しみませんが、現金が不足する場合は、労せず土地などを相続したのに、逆に先代を恨むものさえでてきて、せっかく相続させてもらったのに・・・と複雑な心境になります。
そこで相続税の納税資金対策として考えられるものを下記に書かせていただきました。

① 先代は保険に加入しておく。
   保険は相続が発生した際に、受取人に指定されていた者が請求すれば、すぐに現金化できますので非常に便利です。過去に入院したことがあっても、高齢であっても対応できる保険がありますので、是非活用していただければと思います。しかも、例えば相続人が4人いれば2000万円まで相続税は非課税です。(相続人1名につき500万円の非課税枠があります。)先代が会社の経営者の場合は、会社が契約者で保険に加入しておく方法も有効です。先代死亡の場合に会社に入った保険金を原資に相続人に死亡退職金を支払います。相続人はその死亡退職金を納税資金に活用します。(生命保険同様の非課税枠があります。)

② 現金を生前贈与しておく。
   ご存知のように110万円までは非課税です。500万円でも約50万円の贈与税で済みます。しかも、その分は相続財産からも除かれます。(ただし、死亡前3年以内は相続財産に加算されます。)この暦年贈与ですが、改正の動きがありますので、実行するなら早いうちです。また相続人は納税資金準備のため、いただいた現金を費消しないようにしてください。

③ 土地を売却する。
   相続した土地を売却し、その代金を相続税の支払いに充当します。土地の売却なので所得税はかかりますが、相続財産としての土地にかかった相続税は売却価格から控除することができるメリットもあります。売り急ぎますと足元を見られ、安くしか売れないケースもあります。しかも境界確定測量費用や売買のための不動産仲介料などコストもかかります。そこで私は自分の会社に売却することを勧めています。第三者への売却ではないので、買い叩かれることもありませんし、第一に、思い入れのある土地を他人に売らずに一族で持ち続けることが出来るからです。この場合も、その土地にかかった相続税分は控除できる特典はそのまま使えます。

④ 自社株を会社に売却する。
この方法は、私が一番お勧めしたい対策ですが、紙面が無くなりましたので、次回に詳しく書かせていただきます。

 

 

2022年8月 2日 (火)

相続税納税資金対策としての保険の活用

 当事務所には、相続税の申告依頼が月1件くらいのペースで依頼され続けている。従って開業以来400件以上は申告してきたことになる。申告を依頼されて一番気になるのが納税資金の問題だ。納税資金が少ないと当然のことながら納税に窮し、延納などすれば利子税など余計な税金を払わなければならないことにもなる。また現金での納税が困難と認められる場合には、延納のほかに物納という方法もあるが、いずれも手続きが結構煩わしく、物納に関しては、かなり条件の良い物件でないと引き受けてもらえない。しかし、相続税の納税用にと現金を貯めておくことはなかなか困難なことだ。私は、将来相続税の申告が必要と思われるお客様には出来るだけ生命保険を活用することを勧めている。

 保険に加入していた場合には、遺産分割協議も必要なく、受取人がすぐに現金化できる。本来、保険金は受取人固有の財産ということで、相続財産にも遺産分割協議の対象にも遺留分の対象にもならない。従って、たとえ相続放棄をしていても保険金は受け取れることになる。(後で説明する非課税枠は使えないが)ただし契約者である被相続人が保険料を負担していた場合には、相続税法上「みなし相続財産」として相続税が課税される。本来相続財産でないものを無理にみなして課税するのだからと、受取人が相続人の場合には、相続人一人につき500万円の非課税枠が設けられている。まずは非課税枠を使うことは最低実施してもらいたいと考える。相続人が3人いれば500万円×3人で1500万円までが非課税ということになる。この場合、1500万円を預貯金に残しておけばそのまま相続税が課税されるが、保険金の1500万円は非課税ということで納税資金対策のみならず節税にもなるからより効果的だ。

 先日、懇意にしている司法書士さんからの紹介で、相続の申告を依頼された。被相続人、相続人の方の保険契約の内容など調べていたところ、本来みなし相続財産として申告すべきものを保険金受取人の相続人が、自分の所得税の一時所得として誤って申告していたことがわかった。早速、相続人の所得税の還付の手続きを行い、その保険金をみなし相続財産として申告した。その結果、税額がかなり減少した。例えば契約者が長男、被保険者が父親、受取人が長男というケースの場合は、相続財産ではなく長男の一時所得して申告しなければならない。今回は契約者父親、被保険者父親、受取人長男というケースなので「みなし相続財産」として相続税の課税財産に加えるものだった。このように契約形態でも課税関係が変わってくるから、保険証券をしっかり見直し、整理し、万が一の時に相続人が困らないように準備しておくことが重要だ。

 保険の受取人を配偶者とするケースが一番多いが、会社経営者の場合は自社株を引き継ぐ子どもにしておくと良いケースもあるので、加入の際は、一度是非気軽に相談していただければと思う。保険を上手に活用して、相続対策に活用してもらいたいと考える。応援しています。

2022年7月 4日 (月)

「将軍の日」「ワークショップ」再稼働!

 道を行きかう人々も少しずつ増えはじめ、町にも活気が、戻りつつあります。そのような中、今月は当社でも2年半中止していた「将軍の日」を再開しました。丁度今回で95回目になります。「将軍の日」とは「社長の日」であり、社長自らが終日じっくり自社の5ケ年計画を立てる日です。そのアシストは当社のスタッフが付きっ切りで終日行います。「5年後の売上なんかわかるはずがない。」と計画を立てることに懐疑的な社長もおられますが、ここでの5年後の売上はあくまで「目標設定」です。将来を占ったり予測したりするものではありません。「先のことは神のみぞ知る」・・だからと言って「目標設定」をしないでその日暮らしの経営を続けることは、羅針盤を持たず、行き当たりばったりで航海に臨むようなものです。これはいわば難破するために航海に出るようなものです。

 社長の仕事は大きく分けて三つあると、日本の経営コンサルタントの草分け的存在の一倉定先生は話されています。その中の一つが「経営計画」を立てることです。社長は社員と異なり、ざっくりで構わないが年単位で物事を考えられる人です。そして自らの会社の3年~5年後の姿をありありと描いている人です。わが社は3年~5年後何で飯を食べていくかを考えている人です。そしてそれを社員にしっかりと示せる人です。これはほんとに難しいことですから誰でも避けて通りたいところですが、避けては通れません。一般的に、企業は「利益」を出すことより「存続」することが難しいとよく言われます。そのことは創業100年以上の事業者が全事業者の1%~2%しか存在しない現実をみても納得できます。そしてこの老舗企業の共通点に「経営計画を立てている」ことが含まれていることを見ても、いかに「経営計画を立てる」ことが重要かわかります。

 次に大事なことは、「社長はお客様を訪問せよ」ということです。何故なら社長以外には見つけられないお客様の潜在的な要求もあり、これが明らかにならない限り、そのお客様に対する正しいサービスはできないからです。その意味で社長は常にお客様を訪問しなければならないのです。

 最後に大事な社長の仕事の一つは「環境を整えること」です。自社の環境をハード、ソフトの面から整理整頓して働きやすい環境を整備できるのは社長しかおりません。例えば倉庫の不良在庫品と思われる商品の処分などを決定できるのは社長だけです。倉庫係が勝手に処分できません。更に工場や現場の整理を行うことは生産性を大きく上げることにつながります。当社では「現場も経理もわかる事務所」を目指して生産性アップの「ワークショップ」を開催しています。これは座学だけではなく参加する社長、経営幹部の10名くらいで実際に現場に入りながら、現場改善をしていくものです。そのことで社長も幹部も意識が高まり幹部養成の場になっています。しかも大きく業績改善につながっています。皆さんも是非機会があれば取り組まれてはいかがでしょうか?現場の効率化だけでなく、人材育成と組織強化になります。自信を持ってお勧めします。



2022年6月 3日 (金)

創業100年以上の老舗企業になる秘訣

 日本は世界でも例をみない老舗王国だ。創業100年以上の企業数は、5万社~15万社と言われており、世界の老舗企業の約4割を占めている。更に200年以上となると世界の老舗企業の約6割は、日本の企業だ。しかし、世界で一番多いとは言うもののこの創業100年以上の企業となれるのは、日本の法人、個人合わせた事業者数約380万社のうちでわずか0.01~0.04%の世界だ。
 

 企業をとりまく環境は厳しく、一般的に創業20年で約半分に減るといわれている。1996年の日本経済新聞社の発表では、創業した8万社を追いかけたところ生き残ったのは10年で5%、20年で0.39%だったそうだ。もっとも、当社の関与先さんを見ると創業10年でも約9割の企業は残っているので、この日本経済新聞社の調査の対象企業はベンチャー企業が多かったのかなと勝手に推測している。いずれにしても継続して経営を続けるのがいかに厳しいかがわかる。


 私は、当社の関与先さんにも将来老舗企業になってほしいと思い、老舗企業になるための秘訣を知るために、いろいろな本を読んだり、直接、老舗企業の社長に聞いたりしてきた。すると見えてきたのは、老舗と言われる企業は、時代時代に合わせて常に創意工夫の努力を怠らないということだ。他にもいずれの老舗企業にも共通するだろうと思われることが、いくつか見つかったので紹介したい。


 まず企業にとって重要な財務面だが、老舗企業には経営分析上でその特徴が出ているはずだと思い、比較検討してみた。しかし、営業利益率、流動比率、自己資本比率共に同業他社と変わった点はなかった。むしろ平均より少し低いくらいだった。しいて言えば経常利益率が同業他社の平均より少し高いくらいだった。経常利益率が良いということは、家賃収入、株の配当など本業以外の収入が少しあるということだ。本業以外の副収入を少し持っておくと本業が落ち込んだ時にカバーできるということだろうか。是非参考にしたい。


 次は、意外にもどの老舗企業も目先のお金稼ぎを目的にしていないということだ。目先のお金稼ぎを目的にせず、社会的な役割を追っているからこそ行動がぶれず、一体感のある組織として継続していけるのかと思う。目先の損得だけで行動していると結局は、社員、取引先などの信頼を損ない、優秀な社員が退職し、良い取引先は離れ、結局業績は悪くなってしまうようだ。最後に皆さん口をそろえて言うことは「運が良かった。」ということである。運も味方してくれるような生き方、経営を日頃から心がけていることで運も味方してくれるのだと思う。


 上記のことを参考に、一社でも多くの企業が老舗企業として継続していくことは、日本の大きな宝となる。経営者の皆さん・・応援しています。

2022年4月28日 (木)

国が抜いた「伝家の宝刀」・・最高裁も相続人側が敗訴

 419日、各方面の注目を集める裁判の結果が出た。最高裁が315日「弁論」を開いたことで、よもや国側が負けるのではと取り沙汰されていたが、結論は相続人側の負けが確定した。これで2016年から始まった路線価論争は、一応の決着を見ることになった。

「伝家の宝刀」とは「いざという時以外めったに使用しない」ものの例えだが、国税では「財産評価基本通達6項」がその「伝家の宝刀」だ。財産評価基本通達の第一章総則6項には「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価格は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と短く書かれている。さすがに「伝家の宝刀」と言われるだけあって、この総則6項を適用して評価したケースは過去10年間でわずか9件だけで、すべて国側の勝訴となっている。過去あまりに露骨な節税対策に対し、この宝刀を抜いてきたようだ。今回もかなり露骨な節税対策が目に余ったのではないだろうか。

 さて、今回の内容はこうである。札幌在住の甲さんは当時90歳で2008年に信託銀行に相談に行った。甲さんには問題となる不動産の他に既に7億程の資産があったので、心配になったのも無理はない。そこから信託銀行主導?の相続対策がスタートしたものと思われる。甲さんには妻、長男、長女、次男と4人の推定相続人がいたが、まずは同年に次男の子(孫)を養子縁組した。翌20091月に東京都内のマンション8.4億円、12月に川崎市内のマンション5.5億円を信託銀行からそれぞれ6.3億円、3.8億円借り入れし購入した。ちなみに銀行内部の稟議書は「相続対策のため」で、後に裁判では行政側の証拠として使われた。

 20126月に94歳で甲さんは亡くなった。物件購入による約10億円の評価引き下げで他の財産も合わせて20133月に相続税ゼロの申告をした。財産の大半は、一代飛ばしで、養子の孫が相続した。川崎マンションは20133月に5.2億円で、相続申告前に売ってしまった。甲さんの元々の不動産は全て札幌だった。買ったのは東京と川崎。相続税はゼロ。相続人は、相続後すぐに川崎のマンションを売却。やり過ぎ感満載といえる。今回の場合、路線価評価額が不動産価額の4分の1だったこと、元々あった財産を含めて相続税がゼロになったこと、購入の目的があきらかに租税回避とみなされたことなど総合的に判断されたようだ。

 これから不動産を活用しての相続対策をする方は下記のことに気を付けなければならない。

①相続直前の対策はできるだけ控えること。

相続人の祖父が物件を取得したのは亡くなる3年数か月前で、当時90歳という高齢だった。また相続人である孫との養子縁組も物件購入時期と近接していた。金融機関も貸し出し稟議書に「相続対策」と明記していた。

②短期の不動産売却は避ける。

相続人は相続した物件を、相続から9か月という短期間で売却し現金化している。

 今回の件も、一族の将来の事業承継対策を考えた場合に、一番しっかりしている孫に今後の不動産事業は任せたいと考え、養子縁組をし、管理運営しやすいように地元札幌市内の不動産を何か所か購入し、更に発展させようと事業計画を立てていたなどのストーリー性が大事だったのではないだろうか?その結果、税金も減っていたということなら当局もここまで問題にしなかったのではと考える。

 

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