2020年4月 1日 (水)

コロナウイルス騒動について

   今月は当社関与先さんの経営計画発表会に参加しました。この時期ですので、開催するかどうか大分迷われたようですが、参加者は全員マスクを着用し、出入り口には消毒液が置かれ、窓は解放されての実行でした。役員、社員、関係者で50名近い方が参加され、各部署から今期の結果と来期の数字達成に向けた行動計画が、二時間ほどかけて次々と発表されました。例年そうですが、今年度も未来に向けた素晴らしい計画発表でした。最後に私が講評を求められました。私は「御社は、今まで全社一丸となり、利益を出し、内部留保を高めてきました。このような時こそそれが威力を発揮します。この急激な外部環境に一喜一憂することなく、来期の行動計画を着実に実行してもらいたいと思います。そのことが、このコロナ騒ぎが落ち着いた後に更に威力を発揮すると思います。」と話し、激励しました。

   しかし、上記の会社は自己資本比率が60%以上の優良企業だからそのような激励ができたのです。日本では、急激な外部環境の変化に対応するためには自己資本比率が40%以上必要だと言われ、各企業はその目標に向かって日々、経営努力しているのです。ところが、日本の中小企業の平均の自己資本比率は、まだ20%前後というのが現状です。しかも自己資本比率は一朝一夕では増やせません。利益を毎期出し続け、納税した残りが内部留保され自己資本を形成するからです。自己資本比率は当然、時価で考えますから、保険などの含み益は簿外資産として時価を形成します。反対にゴルフ会員権や値下がりした有価証券はその含み損を控除した評価で計算されます。企業の多くは、バブル崩壊やリーマンショック、大震災を経験しています。含み損を抱えたままの企業も少なくはないでしょう。ですから、こうした自己資本比率の低い日本の中小企業は、今回のコロナウィルス騒動は死活問題です。ほとんどの中小企業はまずは目の前の生き残りに不安を感じているのではないでしょうか?政府もそのことを十分承知していて「緊急経済対策」としてあらゆる手を打って、企業や国民の生活を守ろうとしています。対応が遅いという不満もあるでしょうが、それらの情報をいち早く得て活用することが急務です。当事務所でも活用できる融資などを少しでも早く知っていただくため常に新しい情報をメール通信や事務所通信を通じてお知らせすると共に各担当者が直接、個別にそれらの情報を各関与先さんにお伝えするなど、スタッフ一丸となって努めています。実際に、訪問しますと「手元資金にまだ少し余裕がありますが、借り入れしておいた方が良いでしょうか?」という質問が良くあります。それに対する答えは、「まずは借りておくべきでしょう。」と言うことです。理由は、治療薬がいつ出るか見当がつかず今回のコロナウィルスの世界経済に与える影響は長引きそうだからです。しかし今までも何度も大きな試練はありましたが、終わらなかったことは一度もありません。早いか遅いかだけです。決して油断してはだめですが、必要以上に恐怖感を持っても何もできません。まずは手元資金を厚くして、我々にできる防御策を講じながら日常生活を淡々とこなしていこうではありませんか。

 

2020年3月10日 (火)

地域企業の生産性はまだまだ上がる

  巷ではコロナウイルス騒ぎで人が集まる行事が次々に中止になっている。当社でも政府の方針に倣って、3月のセミナーを中止することにした。2月のセミナーはまだこの騒ぎが始まる寸前だったので、予定通り約50名の参加者で実施することが出来た。

 2月のセミナーのテーマは「地域企業の生産性はまだまだ上がる」で、私の古くからの友人である丹治克之氏に講師をお願いした。丹治克之氏はキャノン株式会社に36年間勤務、その間数々の生産革新のプロジェクトを成功させた。その成功体験に基づいた講話は参加者の共感を呼んだようだ。セミナー終了後のアンケートには、ほぼ全員の方が参加して良かったというコメントを残してくれた。

   私は「組織能力」の考え方と「WATCH&THINK」→現場をジーッと見て、むだを見つけ、排除する方法を考えるという手法に感動した。セミナーの中で紹介された東大ものづくり経営研究センターの藤本隆宏教授によれば、組織能力は「個々の企業に特有の属性であり、組織の中で広く継承される組織遺伝子であり、ルーチンの束である。組織の能力は競合他社が真似することが難しく、個々の企業の競争力や収益に影響を与え、長期的に企業間の格差を生み出す。」ということだ。わかりやすく言うなら、例えばトヨタはノウハウをすべて公開しているが、それをそのまま活用できる企業はないのはなぜか・・そこに組織能力の本質があるのだ。丹治氏は当社のセミナーのこともその事例として話してくれた。当社では平成7年から毎月セミナーを実施してきており、今回のセミナーが257回目だった。私も他の会計事務所さんからやり方を聞かれ、何度も教えたことがあるが、どの会計事務所さんも継続しているところはない。その力が「組織能力」というものだそうだ。端的に言えば「組織能力=方針を実行する現場のルーチン力」ということなので、時間はかかるがこの組織能力の構築を自社の経営戦略としてしっかり認識していきたいと思う。

   丹治氏は地域企業の現場改善の具体的手法としてワークショップ形式で取り組むことを勧めてくれた。ワークショップ形式とは自社に関わる各部署、関係機関が垣根を超え課題抽出、解決策検討、実践を重ねていく方法だ。また氏はワークショップ形式を取り入れる中で「WATCH&THINK」をメンバー全員で取り組むことが大事とも言っていた。ワークショップ形式での現場改善では「YWTMシート」を作成して課題を共有する。Y:今日やったことは何ですか?W:(やってみて)わかったことは何ですか?
T:(それを踏まえて)次にやることは何ですか?M:それをやるメリットは何ですか?
PDCAとは聞いたことがあるかと思うが、P(計画)がネックになって進まないことがあるので、取り組み易い「YWTMシート」を活用するのだ。これらの認識を全員で共有しながら次に進むということだ。その結果現場改善が進み生産性が上がれば、それはその会社の利益に直結していくことになる。今後ますます予想される人手不足時代に備える意味でもまずは現場改善に取り組むことをお勧めしたい。自社独自で難しい時はいつでも支援させていただきます。気軽にお声がけください。

2020年2月 5日 (水)

「配偶者居住権」が今年4月から施行!

平成30713日に民法の相続分野が、約40年ぶりに改正され、公布されました。施行は、この公布日から2年以内の政令の定める日からとなっており、順次施行されてきました。平成31113日の「自筆証書遺言の方式緩和」、令和元年71日には「遺産分割の見直し(配偶者間の居住用不動産贈与の持ち戻し免除の推定・仮払い制度の創設)「遺留分制度の見直し」「特別寄与制度の創設」が施行された。

 

「配偶者居住権」とは?

令和24月からはいよいよ「配偶者居住権」が施行されます。「配偶者居住権」とは、被相続人の持ち家に住んでいた配偶者が、被相続人が亡くなった後、その家を相続しなくても、自分が亡くなるまで無償で住み続けることができる権利で、遺贈、遺産分割協議、審判手続きで配偶者居住権が認められた時に取得することが出来ます。それに対し、「配偶者短期居住権」というものもあり、こちらは、被相続人の建物に居住していた配偶者なら、何の条件もなく遺産分割完了あるいは6ヶ月間のいずれか遅い日まで、無償で住み続けることができるというものです。

この制度は、ちょっと揉めそうな家族関係で活用されるのを前提にされているように思います。普通の家族関係では無理にこの制度を使う場面が想定できないからです。何故なら、このような場合も仲の良い親子なら法定相続分にこだわらず、お母さんに現金を渡すこともできるからです。いずれお母さんの相続で自分にまわってくるという考えもあります。先妻の子は、養子縁組でもしていない限り、今回の相続で終わりですから、シビアにならざるを得ないのかもしれません。例えば、自宅(2000万円)と預貯金(2000万円)が相続財産と仮定します。相続人は、2人で1人は、現在の妻でもう一人は先妻の子というケースです。妻は今後の生活もあるので、住み慣れた自宅は、どうしても必要です。そこで、遺産分割協議により、法定相続分通りにししようということになり、めでたく自宅を相続することになりましたが、自宅だけで法定相続分になってしまい、現金は相続できないことになります。妻は老後の生活費として、どうしても現金も必要です。そのような場合に、今回の「配偶者居住権」(所有権はないが、終生住み続ける権利がある。)が効果を発揮します。配偶者居住権の評価は、家全体の評価より低くなります(評価は配偶者の相続時の年齢によって変わります。)から、法定相続分の中で、現金を受け取ることもできることになるからです。結果、妻は住み続ける権利と老後の生活資金も確保できることになります。

 次回は「配偶者居住権は節税に効果あるのか?」ついて説明したいと思います。

 

 

2020124日 著者 税理士    千葉 和彦

 

2019年12月27日 (金)

事業承継のコツは早い取り組みです。

 早いものです。今年最後のエッセイになりました。皆様のもとに届くときには新しい年を迎えているかもしれません。12月は恒例の当社の懇親会があり、約100名のご参加をいただき無事に終了しました。平成7年からオーナーズセミナーを始めましたが、当初は勉強会だけでした。5年ほどしてから、年末くらいは異業種交流も兼ねて懇親会をしようということになり、スタートしたのが、現在の懇親会の前身です。お陰様で今回、オーナーズセミナーとしては、通算255回、懇親会としては20回目を迎えることが出来ました。当初、まずは100回開催することを目標に掲げておりましたが、まさかこんなに長く続けることが出来るとは、私自身が一番驚いております。これもひとえに、当社を信頼し応援していただいているお客様と、一丸となって取り組んでくれるスタッフのお陰と改めてありがたさを実感するばかりです。

 さて、先日の懇親会の挨拶で、私は、最近私自身におきたエピソードをお話ししました。それは、私にとって何ともショックな内容です。顧問税理士さんが高齢でお亡くなりになったため、新しく顧問税理士を探している方がいて、面談させていただいたのですが、実は後日お断りされたのです。その理由を尋ねると、「先生も高齢になってきているので、せっかく頼んでも、また新しい税理士を探すようになってしまうかもしれないので、若い税理士に依頼させていただいた。」ということでした。私自身は、若い気でいましたが、周りはそうは見てくれていない事実を突きつけられ、少しショックでした。後継者問題は、私にとっても身近な問題となっていたのです。

 この数年で事業承継のタイミングを迎える会社は数十万社あると言われていますが、現時点で半分以上の会社には後継者がいないのが現実です。後継者のいない方は、一人で悩んでいないで親族などに相談して見ると思わぬ知恵が出ることもあります。もしどうしても見つからない場合は、M&Aか廃業、清算に出口を求めざるを得ません。廃業・清算するにしても社員がいれば解雇しなければなりませんし、退職金の問題もあります。取引先との事業中止の根回しも必要です。設備を売ろうにも希望するような価格で売れるケースは少ないです。このように、廃業するのにもかなりのエネルギーとお金がかかるのです。

 どの方法を選択するにしましても決め手は「スピード」です。いつまでも悩んでいるうちに5年、10年はあっという間です。鳴り物入りでスタートした10年間限定の特例である「事業承継税制」の提出期限も3年ちょっとに迫ってきました。まだ大丈夫とのんびり構えていると、期限が過ぎてしまったというケースも多くなるのではないかと危惧しています。この「届け出」は提出したからと言って、その通り実行しなくても何も罰則はありません。どうしようか迷っておられる方も是非、提出だけは早めにしておくことが大事です。当社でも手遅れにならないように、来年度は積極的にこの届け出を推進していきたいと考えています。迷われている社長は是非お気軽に当社にご相談ください。来年度も皆様のご期待に応えるよう全力で応援していきます。

2019年12月25日  著 者  税理士 千葉 和彦

2019年12月 4日 (水)

子供に相続権があるなんておかしい!

 先日、弁護士、公認会計士、税理士の資格を持ち、若い時に会計事務所にも勤務していたことがあるという先生のセミナーを受講した。先生は、開口一番「だいたい子供に相続権があるなんておかしいと思う。」と言い放った。私も戦後に改正された民法の法定相続制度には納得がいかなかったので、通じるところがあった。父が死亡した場合、残された母の面倒をみながら、家を守る子供以外の子供が相続権を持つから揉め事が絶えなくなったのだと思う。とっくに他家へ嫁いだ妹の旦那までが出てきてあれやこれやという場面にも何度か直面し、不快な思いをしたのも一度や二度ではない。先生曰く、「子供たちが、親の資産形成に何か協力しましたか?子供は費消してきただけではないですか?資産形成に協力してきたのは配偶者だけではないですか?(後妻等で何らその資産形成には協力してこなかった方もいますが・・。)そのことから離婚する場合は、妻は婚姻後に増加した財産の半分の取り分を持つのです。妻の法定相続分が2分の1では、妻は自分の取り分を取り戻すだけです。」と。

 5年前に相続税の基礎控除が引き下げられてから、少しだけ相続税を納める方が増えた。従って、相続税の申告が必要な者は、過去死亡者の4%から8%に申告者が倍増したと言われている。私が考えるに、それは法定相続分で申告しているからではないだろうか?妻が全部相続すれば、配偶者の非課税枠が使えて相続税は0になるはずである。住まいに小規模宅地の評価減を活用すれば、税金はかからないケースがほとんどだからだ。相続人が納得すれば、どのように分割しても自由なのだから、まずは、配偶者へ相続させるべきではないだろうか。ただし遺産総額5億円超の死亡者の0.7%の人たちには別途対策が必要なことは言うまでもない。

 今回の民法改正で「配偶者居住権」というものが新たに創設された。この制度は、居住用財産の所有権を相続しなくても居住し続けることができる権利で、所有権と居住権を分離したことにより、遺産分割をする際の選択肢を広げたものだ。しかし、遺産分割協議は必ずしも法定相続分で分ける必要がないので、わざわざこのような制度を活用しなくても良いケースも多いと思う。その上、新しく創設された「配偶者居住権」は、まだまだ不明点が多いのも事実だ。例えば、配偶者の自立生活が難しくなり、介護老人ホームへの入居が必要になった場合には、介護老人ホーム入居後の居宅は、空家として放置するようになるのか?換金しようと思っても、配偶者居住権が設定されている土地建物では換金もできないのではないのではないか。又は土地を所有する者が事業資金を借用する場合に担保価値が認められないので、担保として活用もできないのではないか・・などである。そのため、この制度の活用は慎重にしていきたいと思う。

2019年11月28日  著 者   税理士 千葉 和彦

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