雇用・労務・社会保険

2015年9月23日 (水)

自転車に対する規制強化への対応

 飲酒運転や信号無視などの危険な行為を繰り返す自転車の利用者に「自転車運転者講習」を義務づけるなどの規制を盛り込んだ改正道路交通法が施行されました。
 今回の改正を機に、社内規定の見直しを検討してみましょう。
 
 

 

1.悪質な利用者に講習を義務づけ

 改正法では、一定の危険行為をして、3年以内に2回以上違反があった悪質自転車運転者には、講習の受講が義務づけられました。

受講時間は3時間で、手数料は5,700円です。この講習を受けないと5万円以下の罰金刑になります。
 

 

 

2.社内規定を見直しましょう

 今回の道路交通法の改正により、講習につながる「14項目の危険行為」が定められています。

 自動車と異なり、自転車については、車両使用に関する社内規定の整備や、安全管理指導がきちんとなされていないのが実情といえます。一方で、従業員が業務中に自転車事故等を起こした場合、会社の責任が問われることも予想されます。

 就業規則においては、これらの項目をもとに自転車運転時の禁止事項を定めるとよいでしょう

 また、自転車通勤を認める場合は、必ず許可制にし、「自転車通勤許可申請書兼誓約書」等の書面の提出を求めるようにしましょう。
 

 

3.講習につながる自転車の「危険行為」14項目

①信号無視

②通行禁止違反(歩行者天国の走行など)

③歩道における車両の義務違反(徐行違反)

④通行区分違反(車道の右側通行など)

⑤路側帯通行時の歩行者の通行妨害

⑥遮断踏切(警報機の鳴っている踏切)立ち入り

⑦交差点安全進行義務違反等(交差点を通行するときの他車の進路妨害など)

⑧交差点優先車妨害等(交差点で右折するときの直進車の進路妨害など)

⑨環状交差点安全進行義務違反等

⑩指定場所一時不停止等(止まれ)の無視など

⑪歩道通行時の通行方法違反

⑫制動装置(ブレーキ)不良自転車運転

⑬酒酔い運転

⑭安全運転義務違反(携帯電話、傘の使用など)
 

4.就業規則の例

第〇条(自転車運転での禁止事項)

自転車に乗車する場合は、道路交通安全に関する法令に従って運転を行うとともに、以下の各号に定める運転をしてはならない。

①酒酔い(飲酒)運転

②心身が著しく疲労しているなど、正常な運転が困難な状態での運転

③携帯電話を使用しながらの運転

④傘をさしながら等危険な姿勢での運転

⑤ブレーキの不良その他整備不良状態での運転

⑥天災地変、その他道路事情が安全運転に困難と予想されるときの運転

⑦その他、道路交通法令(改正道路交通法)(平成27年6月1日施工)等が禁止している事
項に該当する運転

2015年8月19日 (水)

「マイナンバー取扱い」の社内への通知と準備

 10月以降、マイナンバーが国民一人ひとりに通知されます。その前(9月中)に、社内に周知し、また来年(平成28年1月)施行前に準備しておきたい事項があります。


1.9月中に全従業員に伝えること
 マイナンバーの通知が開始される10月までに、全従業員(パート.アルバイト等を含む)に次のことを伝えてる必要があります。

①平成27年10月以降、住民票記載の住所にマイナンバーが記載された「通知カード」が簡易書留で届くこと。
※同封されているもの
  ・マイナンバーの「通知カード」
    ・「個人番号カード」の申請書と返信用封筒
    ・マイナンバーの説明書類
②源泉徴収や社会保険関係の事務のために、会社から従業員にマイナンバーの提供を求めること。

③「通知書カード」や「個人番号カード」は、家族の分を含め、紛失しないよう大切に保管すること

④自分や家族のマイナンバーを法令で必要となる事務以外で他人に知らせないこと。


2.自社のマイナンバールールを決める

 企業は、税や社会保険の事務手続きにおいてマイナンバーを取り扱うことになります。
マイナンバーへの対応について、情報漏えいや不正利用を防止するため、社内での取り扱いルールを決め、従業員に周知しましょう。具体的には、次のような対応が必要になります。

①マイナンバーの取扱担当者(総務・経理担当等)を決定し、管理責任者(社長等)に報告する体制を整えます。

②マイナンバーを取り扱う業務を把握しマイナンバーの取得方法などを決めます。

③マイナンバーが、記載された書面や入力された給与システムなどには、取扱担当者以外が、触れることのないようにします(業務に関係のない従業員の眼に触れないこと)

④マイナンバーを書面で収集した場合には、施錠可能なキャビネットに保管します(鍵の管理者を決めること)

⑤法令で定められた目的以外で「通知カード」「個人番号カード」のコピーやマイナンバーのメモをとらないこと(マイナンバーを法令で定められた事務以外で取得することはできません)

⑥マイナンバーが記載された書面を机の上に放置したり(置き忘れ)、ゴミ箱に捨てたりしないこと(ルールに基づいて廃棄する)

⑦給与計算システムなどの業務システムは、利用権限(ユーザIDやパスワード)を設定します。

⑧インターネットに繋がっているパソコンで作業を行う場合は、ウィルス対策ソフトを導入し、自動更新機能を活用し、常に最新状態にしておきます。

⑨マイナンバーの入力作業などを行うパソコンについて、情報漏えい(のぞき見)の防止のために設置場所などを工夫します。
・人の出入りが少ない場所で使用する。
・作業場所を間仕切り等で区分する。

⑩マイナンバーは、法令で定められた利用目的以外で保管しないこと(マイナンバーの記載が必要な書類には、法定保存期間があるものがあります。
(税)扶養控除(異動)申告書→提出期限の属する年の翌年の1月10日の翌日から7年間
(税)退職所得の受給に関する申告書→提出期限の属する年の翌年の1月10日の翌日から7年間
(社保)雇用保険関係書類→退職した日から4年間
(社保)労災保険関係書類→退職した日から3年間
(社保)健康保険・厚生年金保険に関する書類→退職した日から2年間

⑪マイナンバーが記載された書面、入力されたデータの廃棄方法を決めておきます。
・パソコン等で入力されたものは、その情報を削除する。
・書面に記載されたものは、読み取れないようにマスキングしたり、シュレッダー等で断裁する。
・廃棄(断裁)した事実の記録、データ削除時の操作ログを残す。

 以上のようなルールを、業務マニュアル社内規定に盛り込み、従業員に周知してください。

最初から、いきなり高度な取扱いルールを作ることは難しいので、実際に運用しながら、少しずつ内容を充実・強化させていくとよいでしょう。


3.マイナンバー対応点検チェックリスト
自社のマイナンバー制度対応のため、準備の状況を点検してみましょう。

□①マイナンバー事務取扱担当者・責任者を決めましたか?

□②マイナンバーを取り扱う業務(源泉徴収票作成、健康保険、厚生年金保険届出等)を把握できていますか?

□③業務こどに、マイナンバーを取得する時期や方法、本人確認の方法を決めましたか?

□④マイナンバーが記載された書類の保管方法(施錠可能なキャビネット等)を決めましたか?

□⑤マイナンバーが記載された書類の廃棄方法を決めましたか?

□⑥マイナンバーの利用目的や禁止事項を全従業員(パート、アルバイト等を含む)に説明し、周知しましたか?

□⑦利用している計算ソフトが、マイナンバーを暗号化して保存する機能があるなど、安全管理に対応しているか確認しましたか?


4.マイナンバーに関する法律の規制等
   マイナンバーは他の個人情報よりも厳重な取り扱いが番号法(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)等で求められてします。主な規制内容は下図の通りです。

(1)番号法で定められた規制の内容(事業者の規模の大小を問わず、これらの規制が課されます)

①利用の規制(番号法9条)
 番号法に定められた利用目的以外で、マイナンバーを利用することを禁止。

②提供の制限(番号法19条)
 番号法に定められた利用目的以外で、マイナンバーを他者に提供することを禁止。

③収集、保管の制限(番号法20条・28条)
 番号法に定められた利用目的以外で、マイナンバーを収集・保管することを禁止。番号法で定められた業務を処理するための必要な限度を超えて特定個人情報ファイル(マイナンバーを含んだ個人情報のデータベースなど)を作成することも禁止。

④安全管理措置(番号法12条)
 マイナンバーの漏えい、滅失または毀損の防止その他の適切な管理のために必要な措置をとることが必要。

(2)特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)
 民間事業者が番号法に適切に準拠して特定個人情報(マイナンバーを含む個人情報)を取り扱うための指針や、安全管理措置の実施方法を示したガイドラインです。「特定個人情報保護委員会」という国の機関が告示。ガイドラインの具体的な内容や、ガイドラインの内容を理解するための関連資料は、特定個人情報保護委員会ウェブサイト(http://www.ppc.go.jp)で公表されています。


5.廃棄の方法
  マイナンバーは、法令で定められた用途で利用する場合に限り、保管が認められてします。このため、マイナンバーを使用する業務が終了したら、可能な限り速やかに(随時もしくは定期的に)、復元不可能な方法で廃棄する必要があります。

(1)廃棄すべき時期
・法令で保管期限が定められた書類:その保管期限後
・報酬等の支払先などからマイナンバーを書面で取得した場合:法定調書の提出後

(2):継続的に法定調書等を作成・提出する支払先等の場合
   不動産の使用料など、支払が複数年にわたり継続的に法定調書を作成する支払先については、契約が継続している間は、マイナンバーを保管することができると解されます。



参考hp:
1.マイナンバー 社会保障・税番号制度(内閣官房)

2.社会保障・税番号制度<マイナンバー>について(国税庁)

3.国税の番号制度に関する情報(国税庁)

4.特定個人情報の適正な取扱に関するガイドライン(特定個人情報保護委員会)

5.民間事業者における取扱に関するQ&A(内閣官房)

6.ガイドライン(事業社編)に関するQ&A(特定個人情報保護委員会)

7.番号法(マイナンバー法)等の改正履歴
(内閣官房)

8.政府公報オンライン・マイナンバー特集ページ(内閣府大臣官房政府広報室)

9.マイナちゃん市長表敬訪問(2015年7月17日)(塩竈市)

2015年7月20日 (月)

マイナンバーの「収集・取得」から「利用・提供」「保管・廃棄」まで

 来年(平成28年)1月から順次、マイナンバーの利用が始まります。従業員(パート、アルバイトを含む)を雇用する企業(個人事業者を含む)は、税や社会保険の手続きにおいて、マイナンバーを取り扱うことになります。マイナンバーの取り扱いにおける「取得」「利用、提供」「保管、廃業」までの流れを理解しておきましょう。

1.従業員等からマイナンバーを取得する(取得)

1)全従業員とその扶養家族が対象

 企業は、従業員等のマイナンバーを記載した税や社会保険の書類を行政機関等に提出するため、全従業員(雇用形態は関係なし)と役員からマイナンバーを取得しなければなりません。

 また、日本に居住する外国人にもマイナンバーが付与されるため、外国人従業員からも取得する必要があります。

 派遣社員は、派遣元企業が取得するため、派遣先企業が取得する必要はありません。

 マイナンバーは、扶養控除手続きなどにおいて、従業員本人だけでなく、その扶養家族のマイナンバーも取得する必要があります。

 正社員が少なくても、パート、アルバイト等が多い企業の場合、取り扱うマイナンバーが多くなるため、特に注意が必要です。

※マイナンバーの取得が必要な従業員等
・正社員
・契約社員、嘱託社員
・パート、アルバイト(高校生や大学生も必要)
・外国人従業員
・役員
(上記従業員等の扶養家族も取得が必要)

2)報酬等や不動産関係の支払先も対象

 報酬、料金、契約金等の支払調書や不動産関係の支払調書にもマイナンバーの記載が必要になるため、その支払先からもマイナンバーを取得しなければなりません。

※マイナンバーを記載する書類の例

【税分野】・給与所得の源泉徴収票、給与支払報告書
     ・退職所得の源泉徴収票、特別徴収票
     ・扶養控除等(異動)申告書
     ・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
     ・不動産使用料の支払調書等

【社会保障分野】
     ・被保険者資格取得・喪失届
     ・報酬月額算定基礎届
     ・健康保険被扶養者(異動)届
     ・国民年金第3号被保険者関係届 等

3)利用目的を通知、公表する

 マイナンバーは、法律で定められた税と社会保険の手続きに使用する以外の目的(自社の顧客管理など)で取得することはできません。

 マイナンバーの取得の際には、あらかじめ従業員等や外部者に対して、その利用目的を特定して、通知または公表する必要があります。

※利用目的の特定の例

・「健康保険.厚生年金保険届出事務」のため
・「源泉徴収票作成事務」のため 等

※利用目的の通知、公表の例

・社員へのメール等での通知
・社内掲示板への掲示
・イントラネットへの公表 等

4)厳格な本人確認が必要

 マイナンバーを取得する際には、他人のなりすまし等を防止するため、厳格な本人確認を行う必要があります。本人確認には、番号確認と身元確認が必要です。

 従業員の本人確認については、雇用関係にあることなどから、本人に相違ないことが明らかである場合は、身元確認は必要ありません。

5)本人確認の方法

・番号確認(記載されたマイナンバーが正しい番号であることの確認)の方法 →通知カード、マイナンバー記載の住民票、個人番号カード(1枚で番号確認、身元確認が可能)等による
・身元確認(そのマイナンバーの正しい持ち主であることの確認)の方法 →運転免許証、パスポート 等、個人番号カード 等による

6)従業員や報酬の支払先からマイナンバーの提供を受けられない(取得できない)とき

 まず、マイナンバーの提供は法律上の義務であることを伝え、従業員等に提供を求めます。

 それでもなお、提供を受けられないのであれば、提供を求めた経過等の記録、保存を行い、単なる(企業側の)義務違反でないことを明確にしておきます。

 マイナンバーの提供を受けられないからといって、安易にマイナンバーの記載のないまま法定調書等を作成しないようにしなければなりません。

2.利用目的以外の利用・提供はできない(利用・提供)

 マイナンバーは、法律で定められた目的以外の利用や提供はできません。たとえ、社員や顧客の同意があってもマイナンバーを社員番号や顧客管理番号などに利用することはできません。

 「個人番号カード」の裏面に記載されたマイナンバーは、法令で認められた場合以外で、書き写しやコピーはできません。

3.必要がある場合のみ保管、必要がなくなれば廃棄(保管・廃棄)

 マイナンバーを含む個人情報(マイナンバーが記載された書類等)の保管は、必要がある場合(継続的な雇用があるなど)や保管義務期間が決まっている場合のみ認められています。

 マイナンバーを保管する必要がなくなった場合は、廃棄、削除しなければなりません。廃棄を確実に行うため、該当書類を事業年度ごとにファイリングするなどして、廃棄すべき時期がわかりやすいようにしておきましょう。

・保管が認められる場合

 ・翌年度以降も継続的に雇用契約が認められる場合
 ・法令で一定期間保存が義務づけられている場合

・廃棄、削除しなければならない場合

 ・税や社会保険の手続きで使う必要がなくなった場合
 ・法令で定められた保存期間を経過した場合 等

4.セキュリテイー対策

 マイナンバー制度は、国や行政など複数の機関に存在する各個人のさまざまな情報を紐付ることで、より効率的・効果的な行政サービスの提供と国民の利便性向上を図るための社会基盤(インフラ)をつくることが目的です。

 一方で、「国による個人情報の一元管理が行われるのではないかは?」「不正利用による被害や情報漏えいの危険性はないのか?」といった国民各層からの懸念や不安の声もないわけではありません。

 マイナンバー制度では、マイナンバーを含む個人情報の漏えい・悪用を防ぐため、制度とシステムの両面から厳格な情報セキュリティー対策がとられています。

1)利用の制限

 マイナンバーは、法令で定められた事務(社会保険、税、災害)以外の目的(顧客リストの作成など)で、マイナンバーを収集、利用、保管等をすることは禁止されています。

2)なりすましの防止

 行政手続きの際、マイナンバーみのでの本人確認は行いません。(運転免許証など本人確認できる身分証明書類が必要です)。

3)第三者機関による監視・監督

 マイナンバーが適切に管理・取扱いがなされているかを第三者機関である特定個人情報保護委員会が監視・監督します。

4)アクセスの記録の確認

 自宅のパソコンから、自分の個人情報にアクセスした行政機関の記録を確認することができます(平成29年1月からの「マイナポータル」の稼働開始により可能)。

5)罰則の強化

 マイナンバーに関する不正行為に対して、厳格に対処するために、マイナンバー法では、個人情報保護法や住民基本台帳法などよりも罰則が強化されています。

 例えば、行政機関の職員が個人情報ファイルを漏えいした場合、行政機関等個人情報保護法では「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」ですが、番号法では「4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方」を科すことができると規定されています。

6)個人情報の分散管理

 マイナンバーによって、各行政機関が持っている情報を一か所の機関にまとめる一元管理は行われません。従来通り、年金情報は日本年金機構、税情報は国税庁といったように分散管理が行われます。

例えば、先日の日本年金機構による情報流出事件のような場合、日本年金機構の持つ情報だけが流出し、芋づる式の情報漏えいが起こらないしくみにしています。

7)システムへの接続制限

 行政機関同士の間で情報をやりとりするときも、マイナンバーを直接使わないようにしたり、システムにアクセスできる人を制限したり、通信する場合は暗号化を行います。

参考hp:
1.マイナンバー 社会保障・税番号制度(内閣官房)

2.社会保障・税番号制度<マイナンバー>について(国税庁)

3.国税の番号制度に関する情報(国税庁)

4.特定個人情報の適正な取扱に関するガイドライン(特定個人情報保護委員会)

5.民間事業者における取扱に関するQ&A(内閣官房)

6.ガイドライン(事業社編)に関するQ&A(特定個人情報保護委員会)

7.番号法(マイナンバー法)等の改正履歴
(内閣官房)

8.政府公報オンライン・マイナンバー特集ページ(内閣府大臣官房政府広報室)

9.マイナちゃん市長表敬訪問(2015年7月17日)(塩竈市)

 

 

マイナンバー制度の目的と個人の利便性

 マイナンバー制度は平成28年1月から開始されますが、制度の目的など基本的なことが、まだ国民各層によく浸透していないようです。しかし、従業員からマイナンバーを提供してもらうことになるため、一人ひとりの従業員にもマイナンバーの目的を理解してもらう必要があります。

1.今なぜ、マイナンバーなのか?

 わが国では、年金や健康保険、税金、住民票、雇用保険などに付された個人を特定する情報や番号等は、それを管轄する機関ごとにバラバラに付番、管理されているため、一つの情報の変更や修正が行われても、その他の機関に反映されないなどの不備があり、また過去には「消えた年金記録」のような不祥事も発生しました。

 このような問題が起きないよう、社会保障と税に関する同一の個人情報を結びつける社会基盤(インフラ)としてマイナンバー制度が導入されます。

2.国民にとってのどのような利便性があるのか?

 マイナンバーによって、国や自治体等は、年金や健康保険、税金に関する個人情報の名寄せなどの効率化が可能になり、国民にとっても利便性の向上が図られます。

(1)社会保障、税などの手続きを簡素化

 マイナンバーを活用することで、各行政機関同士、あるいは行政機関内部においての情報連携が正確.迅速に行われるため、各種の申請に必要な所得証明書や住民票等の添付書類等が省略できるようになります(平成29年以降順次)

(2)社会保障・税などの適正・公平化を図る

 年金などの給付漏れや誤り、不正受給、社会保険の加入漏れや保険料の徴収漏れ、所得の過少申告、税の不正還付等の防止が図られます。

 また、各人に制度改定や各種給付の案内なとが直接届くようになります。

(3)災害時の行政支援への活用

 災害時における、被災者台帳、要援護者リスト等の作成や、銀行預金の引き出し、保険会社の保険金支払い等の本人確認にも活用されます。

3.マイナンバー制度のスケジュール

(1)平成27年10月から

 日本在住の全国民(赤ちゃんからお年寄りまで)にマイナンバーが割り当てられ、市区町村から簡易書留で世帯ごと(4人家族なら4人分)に通知カードが送られます。紛失などに注意しましょう(マイナンバーは原則として一生変わりません)

(2)平成28年1月から

 平成28年1月から、社会保障(年金、健康保険・介護保険、労働保険等)と税(国税・地方税 )の分野でマイナンバーの利用が始まります。

 民間企業は、源泉徴収票や社会保険の届出書類の作成にあたり、従業員等からマイナンバーの提供を受ける必要があります。

 国民は、市区町村へ申請すれば、「個人番号カード」(顔写真付きICカード)を受け取ることができます。

※個人番号カードの機能
 ・身分証明書になる
 ・健康保険証などの機能(検討中)
 ・図書館カードや印鑑登録証に利用
 ・各証明書をコンビニで交付 など

(3)平成29年1月から

 ネット上に個人用サイト「マイナポータル」が開設され、自宅用のパソコンから、行政機関が持つ自分の個人情報の内容や自分の年金や社会保険給付の状況などを確認することが可能になります。

 また、マイナポータルを通じて、引っ越しなどの手続きを一度で済ませられるなどのサービスも検討されています。

 さらに、平成30年以降をめどに、医療情報、戸籍、預金口座への活用が検討されています。

4.制度開始までに企業が対応すべきこととは

 各企業は、規模の大小に関わらず、健康保険や厚生年金、源泉徴収の手続きや法定調書の提出にあたり、従業員等のマイナンバーを使うことになります。

 マイナンバーは、その取扱いにあたり、関係者以外の閲覧禁止や流失防止などの安全管理に厳しい規制があるため、制度開始までに、人事給与計算システムのチェックや対応が必要になります

補足1.制度の概要

 マイナンバーの利用にあたっての社内体制、システム対応、規程作成などの具体的な対応についての情報はもちろん必要ですが、広く世間一般から見ると、そもそも「何のための制度なのか?」「国民の暮らしや社会がどう変わるのか?」といった点への理解が浸透していないようです。

 また、マイナンバーのような番号制度は、過去にも何度か導入が検討されましたが、プライバシーへの不安などから国民の反対に遭い、実現に至らなかったという歴史があります。そのため、年配の経営者や従業員の間には、マイナンバー制度への不安をお持ちの方も少なくないと思われます。

 企業は、社会保険や税の事務手続きにおいて、従業員からマイナンバーを提供してもらう必要があり、その事務をスムーズに進めるためにも、経営者や経理担当者だけでなく広く従業員に制度そのものの目的などを正しく理解してもらうことも必要になってきます。

補足2.制度の導入までの経緯

 1960年代後半(昭和40年頃)には、コンピュータ化の進展に伴い、各省庁、各手続こどにバラバラに付番、管理されていたコードを統一化して、行政の効率化を図るための「国民総背番号制度」が検討されました。

 1980年(昭和55年)には、少額貯蓄非課税制度(マル優)の不正利用を防止するために、利用者に納税者番号を付した「グリーンカード」の取得を義務付ける方法が考えられました。

 しかし、いずれも、国家による個人のプライバシー侵害などをおそれる国民の強い反対などもあって実現には至りませんでした。

 2003年(平成15年)には、行政サービスの向上と行政事務の合理化を目的に、住民基本台帳をもとに本人確認ができる全国共通のシステムとして、「住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)」が稼働しました。

これは、住民一人ひとりに特定の番号(住民票コード)を付して、本人確認を容易にしようとするものです。

しかし、過去の「国民総背番号制度」「グリーンカード」の反省から、その利用場面が限定されてしまい、広く社会で使われる番号制度にはなりませんでした。

 このように、過去、国民から反発のあった番号制度ですが、2007年(平成19年)記憶にも新しい「消えた年金記録問題」が転機になります。

この件により、年金納付や社会保険関係の給付の記録は、各人こどに唯一のコード番号によって管理しない限り、現在の戸籍制度、漢字表記では確実なマッチングができないことが明確になりました。

 また、2008年(平成20年)に最高裁において、住基ネットは「プライバシーを侵害するものではない」との合憲判決が出されたことも制度導入の追い風になりました。

補足3.導入の目的とねらい

(1)行政側のメリット

 国民および企業等が、社会保障、税に関する各種手続きに本人及び従業員等のマイナンバーを記載することで、行政機関等が保有、管理する各種の個人情報にマイナンバーが付番されることになります。

 これにより、行政機関等が保有、管理する個人情報同士を、マイナンバーを使って検索したり、紐付したりすることが可能になります。

(2)国民のメリット

 行政機関等への各種手当の申請や、所得税等の確定申告にあたり、他の行政機関等が発行した証明書(住民票の写し、所得証明書等)を添付書類として提出することがよくあります。

マイナンバーが導入されると、ネットワーク経由で、行政機関同士が情報を要求、提供することができるようになり、このような証明書の提出(添付)が不要になります。

 例えば、平成27年度税制改正において、所得税確定申告で住宅ローン減税を適用する場合に、従来は「住民票の写し」を添付する必要がありましたが、平成29年1月以降の申告から廃止されます。

 

参考hp:
1.マイナンバー 社会保障・税番号制度(内閣官房)

2.社会保障・税番号制度<マイナンバー>について(国税庁)

3.国税の番号制度に関する情報(国税庁)

4.特定個人情報の適正な取扱に関するガイドライン(特定個人情報保護委員会)

5.民間事業者における取扱に関するQ&A(内閣官房)

6.ガイドライン(事業社編)に関するQ&A(特定個人情報保護委員会)

7.番号法(マイナンバー法)等の改正履歴
(内閣官房)

8.政府公報オンライン・マイナンバー特集ページ(内閣府大臣官房政府広報室)

9.マイナちゃん市長表敬訪問(2015年7月17日)(塩竈市)

 

 

2014年5月 6日 (火)

入社時の社会保険・雇用保険の事務手続き

 社員が入社すると、健康保険・厚生年金保険や雇用保険の手続きが必要です。以下の届出書類を作成し、所轄の「年金事務所」「ハローワーク」に提出しましょう。

①健康保険・厚生年金の手続き →年金事務所

提出書類】
 1.健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
 2.健康保険被扶養者(異動)届 (注1)被扶養者がいる場合
 3.国民年金第3号被保険者資格取得届(被扶養者が配偶者の場合)(注1)被扶養者がいる場合

【必要な書類等】
 1.年金手帳
 2.在学証明書、住民税の非課税証明書など(被扶養者が配偶者以外の場合)

【提出期限】
 1.入社日(資格取得日)から5日以内(第3号被保険者資格取得届は14日以内)

【提出先】
 1.会社所在地を管轄する年金事務所(または加入している健康保険組合、厚生年金基金)

(注1)社員の配偶者等が被扶養者になれる収入要件は、同居で次の①、②いづれにも該当する場合
(1)配偶者等の年間収入が130万円未満(60歳以上75歳未満の人や一定の障害者は180万円未満)
(2)被保険者(社員本人)の年間収入の2分の1未満



②雇用保険の手続き →ハローワーク

【提出書類】
 1.雇用保険被保険者資格取得届

【必要な書類等】
 1.前職の雇用保険被保険者証

【提出期限】
 1.入社日(資格取得日)の属する月の翌月10日まで

【提出先】
 1.会社所在地を管轄するハローワーク

(注)65歳以上の人で、新たに採用される人等は対象になりません。

 

 

 

2012年10月 9日 (火)

パートで働く主婦の税金は?

パートタイムで働く主婦にとって、「自分自身の年間収入に税金(所得税・住民税)がかかるのか?」「夫の扶養家族からはずれないか?」は、気になるところです。パート本人の年収がいくらであれば、所得税・住民税・社会保険料などがかからないのでしょうか。

扶養家族の範囲

⑴所得税の場合
 所得税の控除対象配偶者や扶養家族(以下、扶養家族等)は、下記の①~④の要件をすべて
 満たした人です。また、扶養家族になるかどうかは、その年の12月31日の現況によって判断し
 ます。年の途中に親族が亡くなった場合は、その時点で扶養家族であれば、配偶者控除また
 は扶養控除を受けることができます。
 ①納税者の配偶者・親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)である人
 ②納税者と生計を一にしている人
 ③年間の合計所得が38万円(給与収入のみであれば103万円)以下の人
 ④他の人の扶養親族や事業専従者になっていない人

⑵社会保険の場合
 社会保険の扶養親族は、主として被保険者の収入によって生活している親族のことで、その人
 の年間収入が130万円未満(60歳以上と障害者は180万円未満)で、被保険者の収入の2 
 分の1未満である人です。
 ①配偶者(内縁関係を含む)、子・孫・直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母)、弟・妹
 ②上記①以外の三親等内の親族(血族・姻族)、内縁関係にある配偶者の父母・子、内縁関係
 になった配偶者の死亡後の配偶者の父母・子(死亡前から同居していること)
 ※①については、生計が維持されていれば同居でなくてもよいのですが、②については生計が維持され、かつ同居していなけ
   ればなりません。
  なお、年間収入とは、向こう1年間に得るであろう全ての収入のことで、例えば、給料のほか、交通費、健康保険の傷病手当
  金や出産手当金、株主の配当や利子等の全ての収入が含まれます


 ※パート収入が130万円以上なら夫の社会保険の扶養家族からはずれる
 社会保険では、妻の年収が130万円以上になると、夫の社会保険の扶養親族(被扶養者)か
 らはずれてしまいます。この場合、妻の勤務先の社会保険、または住んでいる市区町村の国 
 民健康保険、国民年金に加入しなければならず、保険料の負担が発生します。
 ちなみに、社会保険でいう年収とは、向こう1年間の収入の見込額のことで、通勤交通費なども
 含まれます。

⑶住民税の場合
 妻のパート収入が103万円以下であれば、所得税はかからないのですが、市役所などから「
 個人住民税の納税通知書」が妻宛に届き、「どうしてなの?」ということがあります。これは、住
 民税がかからない収入が103万円以下ではないためです。住民税には、所得金額に対して課
 税される所得割と、所得の額にかかわらず均等の額を負担する均等割とがあります。
 住民税は、パート収入が100万円以下であれば、所得割はかからないのですが、均等割につ
 いては、住んでいる市区町村によって税金のかからない収入が100万円以下、96万5千円以
 下、93万円以下と異なります。

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2012年6月18日 (月)

総務・経理担当者が知っておきたい労務事務

社会保険や労働保険に関する会社の手続きを行う場合、どこに何を届け出ればよいのか、代表的な手続きと届出書類の一例を挙げました。

  手続きの例 届出先 届出書類等の例
①入退社に伴う事務 社員の入社 ハローワーク
年金事務所
●雇用保険被保険者資格取得届
●健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
社員の退職 ハローワーク ●雇用保険被保険者資格喪失届
●雇用保険被保険者離職証明書
●健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
社員の家族の扶養手続き 年金事務所 ●健康保険被扶養者(異動)届
(被扶養配偶者(20歳以上60歳未満)の場合は、国民年金第3号被保険者資格取得届も提出)
②従業員の異動などスポッ
ト的な事務
社員の出産 全国健康保険協会 ●健康保険出産手当金支給申請書
●健康保険被保険者・家族出産育児一時金支給申請書等
社員が私傷病で休んだ場合 全国健康保険協会 ●健康保険傷病手当金支給申請書
(連続3日以上休み、給与が支払われていない場合に支給)
業務中にけがをした場合 労働基準監督署 【指定病院にかかった場合】
●療養補償給付たる療養の給付請求書等
【4日以上休み、賃金を受けられない場合】
●休業補償給付支給請求書等
各種助成金 ハローワーク 【助成金の例】
●雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)
●試行雇用奨励金等
③定期的な事務手続き 社会保険の算定手続き(年1回) 年金事務所 ●被保険者報酬月額算定基礎届出等
労働保険の年度更新手続き(年1回) 労働基準監督署 ●労働保険概算・確定保険料石綿健康被害救済法一般拠出金申告書
時間外労働・休日労働に関する届出書 労働基準監督署 ●時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)

2012年3月12日 (月)

36協定の届け出(さぶろくきょーてー)

 36協定とは、時間外労働・休日労働に関する労使間の協定のことです。

本来、労働基準法では法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働することは第32条で禁止されていますが、

当該協定を締結し所轄労働基準監督署に届けることで、認められることとなっています。(労働基準法第36条第1項)

 

 

2012年2月24日 (金)

社会保険料額表・雇用保険料率について

都道府県毎の社会保険料額表はこちらから

http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3150

宮城県版はこちらです(平成24年3月分~)

http://www.kyoukaikenpo.or.jp/resources/content/91737/04.pdf

雇用保険料率はこちら

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken.html

平成24年度の雇用保険料率はこちらです(平成24年4月~) 

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/hokenryoritsu.pdf

 

千葉経営企画㈱、千葉和彦税理士事務所メインHP

携帯版hp

 

2011年11月28日 (月)

マイカーでの通勤手当の上限金額が変わります。

平成24年1月1日以降に支給されるマイカーでの通勤についてのみ、上限額100,000円が廃止になります。

国税庁のホームページ等に掲載されている「マイカーなどで通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額の表」の限度額が上限になります(下記に掲載)。
※詳しくはこちら⇒国税庁HPへ

<マイカーなどで通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額の表>
片道  2km未満          全額課税
片道  2km以上10km未満   1か月当たり  4,100円まで非課税
片道10km以上15km未満   1か月当たり  6,500円まで非課税
片道15km以上25km未満   1か月当たり 11,300円まで非課税
片道25km以上35km未満   1か月当たり 16,100円まで非課税
片道35km以上45km未満   1か月当たり 20,900円まで非課税
片道45km以上          1か月当たり 24,500円まで非課税

電車やバスを利用する場合については従前通りです。

●●注意●●
1か月当たりの非課税となる限度額を超えて通勤手当を支給する場合には、超える部分の金額が給与として課税されます。この超える部分の金額は、通勤手当を支給した月の給与に上乗せして所得税を課税して下さい。

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