空家対策特別措置法が施行(固定資産税の特例が適用されない可能性も)
全国で深刻になっている老朽化した空家の減少と有効活用を目指した「空家対策特別措置法」(空家等対策の推進に関する特別措置法)が5月26日に全面施行されました。今後、倒壊の危険や衛生的な問題がある空家に対して、地方自治体による指導・勧告・行政代執行などが可能になるとともに、土地の固定資産税の特例措置が適用されない可能性もあります。
1.全国で空家問題が深刻化
子供が都会に出てしまい、地方にある実家が空家になっている例は少なくありません。
総務省の調査では、全国の総住宅数6,063万戸のうち空家は820万戸(13.5%)に上ります(平成25年10月時点)。
空家が増加する背景として、住宅が建っていれば、その土地の固定資産税評価額が更地の6分の1(住宅面積200㎡まで)になる住宅用地の特例があるため、解体費用をかけて更地にするよりも、空家のままのほうが良いという事情もあります。
しかし、管理が不十分なまま長期間放置された空家が火災の発生や倒壊の危険性、衛生面や景観の悪化など地域の生活環境に影響を及ぼす問題が全国的に深刻になっています。
2.自治体が「危険な空家」を認定できる
「空家対策特別措置法」では、自治体の権限が強化され、倒壊の危険や衛生上の問題がある空家を、自治体が「特定空家等」に認定し、所有者に対して、除却、修繕、立木竹の伐採等の助言・指導・勧告・命令ができるようになり、さらに行政代執行(強制執行)による撤去も可能になります。
所有者が助言、指導に応じず、勧告に至ると固定資産税の住宅用地の特例が適用されなくなります。
その一方、自治体に対して、空家の情報収集やデータベースを整備し、空家や跡地の活用促進を求めています。
今後、空家の所有者には定期的なメンテナンスが求められます。(住宅業者による空家管理サービスなども増えています)
*「特定空き家等」に認定する主な判断の目安(特定空家等に対する措置についてのガイドラインより)
1)建物の傾きが20分の1を超える(高さ3mなら屋根のズレが横に15cmを超える状態)。
2)トタン屋根が落ちそう、ベランダが傾いている、などが見てわかる。
3)多数の窓ガラスが割れたまま放置されている。
4)立木が建物を覆うほど茂っている。
5)ゴミの放置や投棄で多数のネズミやハエが発生し、近隣住民の日常生活に支障がある。
6)土台にシロアリの被害がある。
3.空家と特定空家
空家対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)において、「空家等」とは建築物またはこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされないことが常態であるもの、およびその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)をいいます。ただし、国の 地方公共団体が所有、管理しているものは除かれます。(法第2条①)
「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態または著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他の周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいいます。(法第2条②)
【参考】空家対策特別措置法による自治体の対応例
①「特定空家等」に該当するかどうかの判断
②特定空家等の所有者に対し、問題個所の改善を助言または指導(所有者が応じない場合③へ)
③改善を勧告(固定資産税の住宅用地の特例の適用を除外される/所有者が応じない場合④へ)
④改善の命令(違反者に過料/所有者が応じない場合⑤へ)
⑤行政代執行
4.固定資産税の住宅用地の特例措置
住宅用地については、その税負担を軽減する目的から、課税標準の特例措置が設けられています。
住宅用地の特例措置を適用した額(本則課税標準額)は、住宅用地の区分、固定資産税および都市計画税に応じて以下のように算出されます。
小規模住宅用地(住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分)
→ 固定資産税(価格×1/6) 都市計画税(価格×1/3)
一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地)
→ 固定資産税(価格×1/3) 都市計画税(価格×2/3)
*価格は地価公示価格の7割が目途。
固定資産税の住宅用地特例が適用されない場合の税額は、課税標準額の上限を価格の7割とするなどの負担調整措置及び各市町村による条例減額制度に基づき決定されることになります。
そのため、固定資産税額は、単純に6倍にはならず、負担調整措置の適用がある場合、3~4倍程度になります。
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