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2011年9月30日 (金)

◆◆万里一空◆◆VOL.9

― 正しい目標利益の捉え方 ―


 事業計画を作成する際、「利益はどのくらいあげれば良いですか?」という質問は良く聞きます。

 当社所長のエッセイでも従業員一人当たりの平均利益額が紹介されておりますが、財務的にはどう考えるべきかをお話したいと思います。

 この質問には2つの意味が考えられます。一つは所長のエッセイでお話した内容である「会社としての理想の利益額」、もう一つが今回お話します「うちの会社が存続するための必要な利益額」です。

 先日、東京で中期計画の研修に参加したのですが、その中でロケット理論の説明がありました。その理論では、事業計画作成の際、まず①「月」という明確な目標を持ち、②「月」に行くための方法の具現化を行い、③到達過程での的確な軌道修正を行う事、が必要ということです。

これ自体はとても賛同すべき理論ですが、ここでも出てくる問題、それが「利益(目標)はどのくらいあげれば良いですか?」ということです。

 つまり、「目標(月)」設定をどうするかという問題が発生するのです。そもそも、この目標を誤ると、月だと思って、具体的な方法を実行し、それに向けて軌道修正して、やっと到着したら「金星」でした・・・。ということさえあり得ます。ですから、目標設定が重要になる訳です。
 その目標設定時に最低限検討しなければならないのが「うちの会社が存続するための必要な利益額」の算出です。

 借入のある会社の場合、これを把握していなければ、「利益目標は達成したけど、倒産しました(EX 黒字倒産)」となる訳です。ここをおさえた上で、それ以上の目標「会社としての理想の利益額」を設定することが重要になります。

 さて、返済能力を算定する際、会計業界では未だに「税引き後当期利益+減価償却費≧年間元金返済額」という話を堂々としている方々が多々おります。

もちろん、それは間違いではないのですが、その時の「年間元金返済額」は「長期借入金の返済額」という場合がほとんどです。この考え方はかなり昔の考え方で、金融機関ではそんな単純な計算はしません。

以前もお話しておりますが、この論理が成り立つのであれば、赤字資金を手形(短期)で借入した場合、その借入は短期の借入なので計算上いつまでも返済する必要のない借入となります。

そんな話、誰が聞いてもありえない話です。また逆に、正常な運転資金を長期で借入した場合、「税引き後当期利益+減価償却費」という「利益」から返済すべきということになります。

 そもそも、正常な運転資金は売掛金等の回収により返済するものですし、正常な範囲の運転資金であれば、必ずしも利益で償還すべきものではありません。

 
 銀行側で返済能力を判定する場合、簡単に言いますと、「全ての負債-正常な運転資金-現預金」を「経常利益-税金-減価償却費」で割ることにより、何年で返済できるかを判定しております。(一般的には10年以内なら正常先)会計業界が言う、長期借入金とか、短期借入金とか、全く関係のない話なのです。

 つまり、「うちの会社が存続するための必要な利益額」を算出する場合の「年間元金返済額」は、簡便な方法をとる場合、「正常な運転資金以外の長期借入金の返済額」を使用することが考えられます。

 また、正常な運転資金以外の短期借入がある場合は、これは本来、利益から返済するべきものですから、長期借入金に借換し、上記計算にも算入し、計画的に返済することをお勧め致します。

 会計業界は「長期借入金は税引き後当期利益+減価償却費で返済する」という昔話から早く抜け出して欲しいものです。

会計業界は決算書・申告書を作るプロですが、銀行はそれを分析するプロなのです。例えば、「正常な運転資金」を算定する際も、決算書だけを見て計算することはありません。

そこに回収不能な売掛金はないか、不良在庫はないか等を考慮した上で、正常な運転資金を計算します。決算書は全て実態ベースに置き換えられるのです。

 本来の姿、実態ベースで経営判断し、本当の目標設定を見出すこと、これが全ての第一歩だと考えます。そして、その目標設定に向け「万理一空」の境地で一緒に頑張りたいものです。

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