ちば会計

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税制改正

2024年11月15日 (金)

政府内で進む「法人税改革」の議論 令和7年度改正が大きな転換点に?

 10月27日に衆議院議員選挙を控え、今年の税制改正の方向性がどのようになるのか非常に読み辛い状況だが、いくつか議論の俎上に載りそうな重要項目がある。

そのうちのひとつが「成長志向の法人税改革」だ。

わが国の法人税制は、長らく「課税ベースを広げ、税率を引き下げる」という方向性で改革が進められてきたものの、令和4年・同6年の税制改正大綱では「近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」と断言されている。

また、石破茂総理や立憲民主党の野田佳彦代表が揃って法人税率の引き上げに言及していることから、政権交代の如何を問わず、政策の“転換点”となる可能性がある。

法人税関係ではこのほか、中小企業を優遇する様々な租税特別措置にメスが入る可能性が高まってきている。

政府税制調査会では現在、「法人税のEBPMに関する勉強会」を立ち上げ、「EBPM(Evidence-based Policy Making)=エビデンスに基づく政策立案」について熱心に議論を続けているところ。

根底には「租税特別措置は公平・中立・簡素という租税原則に反するのだから、効果が現れなければ速やかに廃止すべき」という考え方があり、法人税収を確保したい財務省の思惑も見え隠れする。

今回の令和7年度税制改正は企業、とりわけ中小企業にとって厳しい改正となる可能性が捨てきれないだろう。

2024年11月12日 (火)

与野党の意見が一致し改正が現実味 「富裕層に対する金融所得課税強化」

 わが国の所得税は累進税率を採用しており、4千万円超の所得には最大45%(地方税と合わせて55%)の税率がかかる一方、金融所得の税率は一律15.315%(地方税と合わせて20.315%)とされており、金融所得がどれだけ高くても税率が変わることはない。

課税の公平性の観点からいえば、所得が増えるにつれて負担率が上昇することが通常と考えられるものの、実態は大きく異なっているのである。

 財務省の調査によると、年間の総所得が250万円以下の人の所得税負担率は2.6%、500万円以下4.6%、1,000万円以下10.6%と、所得の増加に合わせて徐々に上昇し、1億円以下では27.9%となっている。

ここまでは順調に負担率が伸びているものの、その先は所得が増えても負担率が下がる一方。

そのため、負担率が逆転する総所得1億円のラインは「1億円の壁」と呼ばれている。

 昨年の税制改正の議論では、専門家からこの「1億円の壁」の是正を求める声が相次いだものの、実現には至らなかった。

だが、石破茂総理と立憲民主党の野田佳彦代表はいずれも「富裕層に対する金融所得課税の強化」に意欲を見せていることから、今年こそ改正が現実味を帯びてきている。

ただし、衆院選後に新政権が樹立すると、年内は残り2ヶ月ほど。明らかな「増税」で各方面からバッシングを受ける可能性もあるだけに「短期間で決め切れるか」という疑問も残る。

2024年6月24日 (月)

中小企業倒産防止共済制度を見直し 節税目的の不適切な利用を抑制

 中小企業倒産防止共済制度は、取引先企業が倒産した場合、積み立てた掛金総額の10倍の範囲内(最高8000万円)で回収困難な売掛債権等の額以内の共済金の「貸付け」が受けられ、その掛金は損金(必要経費)算入できるものだが、短期間で解約・再加入を繰り返す節税目的の利用が多いことから、2024年度税制改正において、本年10月以後、一定の場合には掛金の損金算入ができないこととする見直しが行われている。

 同共済制度の掛金は会社等の法人の場合は税法上の損金、個人事業の場合は事業所得の必要経費に算入できる。

この特例が、2024年10月1日以降に共済契約を解約し、再度共済契約を締結(再加入)する場合には、解除の日から同日以降2年を経過する日までの間に支出する掛金については、損金(法人)、必要経費(個人)算入できないことにされた。

改正の背景には、中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用がある。

 中小企業庁によると、2011年10月に掛金積立限度額を増額(320万円→800万円)して以降、共済金貸付の発生は減少傾向にあるにもかかわらず、加入が急増。

解約手当金の支給率が100%となる、加入後3年目、4年目に解約が多くなるが、近年その傾向が特に顕著になっているという。

加入者へのアンケートによると、約2割~3割が節税目的による加入と推定されるとして、中企庁は制度の不適切な利用への対応を求めていた。

2024年6月17日 (月)

6月から実施される定額減税 給与明細に減税額明記を義務付け

 2024年度税制改正の柱の一つである所得税・個人住民税の定額減税は6月から実施されるが、政府は企業に所得税の減税額を給与明細に明記することを義務付ける。

手取り額が増えたことを実感してもらう狙いがある。

給与を支払う企業や地方自治体にとっては一定の負担が生じるが、政府は理解と協力を求めている。減税額明記の義務付けは、関連する法律の施行規則を3月に改正済み。

 定額減税は、納税者(合計所得金額1805万円超(給与収入のみの場合、給与収入2000万円超に相当)の高額所得者については対象外とする)及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、2024年分の所得税3万円、2024年度分の個人住民税1万円の減税を行うこととし、2024年6月以降の源泉徴収・特別徴収等、実務上できる限り速やかに実施する。

例えば、夫婦と子供2人の4人世帯であれば計16万円が減税される。

 会社員などの給与所得者であれば、2024年6月1日以降最初に支払いを受ける給与等(賞与を含む)から、源泉徴収されるべき所得税の額から特別控除相当額を控除するが、控除しきれない分は翌月以降に繰り越して順次控除する。

個人住民税は、2024年6月分は特別徴収をせず、特別控除の額を控除した後の個人住民税の額の11分の1の額を7月から2025年5月まで11ヵ月間、均等に減税分を引いた税額を毎月徴収する。

2024年6月 5日 (水)

税務署の内部事務のセンター化 内部事務を専担部署で集約処理

 国税庁では、税務署における内部事務の効率化・高度化を図るとともに、納税者利便の向上や外部事務(調査・徴収事務)の充実・高度化を目指し、2021年7月から、一部の税務署を対象に、複数の税務署の内部事務を専担部署(業務センター)で集約処理する「内部事務のセンター化」を実施している、として周知を図っている。

内部事務とは、例えば、申告書の入力処理、申告内容についての照会文書の発送などの事務をいう。

 各国税局での「内部事務のセンター化」の実施に当たっては、(1)業務センターへの申告書、申請書及び添付書類等の提出、(2)業務センターから納税者・税理士への問合せ、(3)その他の案内、で協力を呼びかけている。

まず、内部事務のセンター化の対象となる税務署に、申告書、申請書及び添付書類等を提出する場合、e-Tax(データ)により提出する場合は所轄税務署へ送信、書面により提出する場合は業務センターへ郵送となる。

 次に、業務センターでは、納税者や税理士に対し、内部事務を処理するため、電話や文書により問合せをすることがあるとしている。

 また、その他の案内としては、国税に関する相談(納付に関する相談を含む)、税務署の窓口で対応している納税証明書の交付、閲覧申請、情報公開、現金による国税の納付のほか、申告書・申請書等の用紙の送付依頼は、業務センターでは対応していないことに注意を促している。

2024年5月 2日 (木)

2024年度税制改正法案が成立!所得税の定額減税の実施など

 2024年度税制改正における所得税法等の一部改正法案及び地方税法等の一部改正法案が3月28日、参院本会議で賛成多数で可決、成立した。

両法律案は、一部を除き、2024年4月1日から施行する。

所得税法等の一部を改正する法律案は、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和し、物価上昇を上回る持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す観点から、所得税の定額減税の実施や、賃上げ促進税制の強化等を行う。

 個人所得課税では、所得税の定額減税がある。

居住者の2024年分の所得税額から、居住者並びに配偶者及び扶養親族1人につき3万円を控除するが、合計所得金額1805万円以下の場合のみ対象となる。

ストックオプション税制の利便性向上を図り、スタートアップが付与したものについて、年間権利行使価額の限度額を最大3600万円に引き上げる。

住宅ローン控除を拡充する(2024年分につき子育て世帯の借入限度額上乗せ等)。

 法人課税では、賃上げ促進税制を強化する。

従来の大企業向けの措置について、税額控除率の上乗せ措置等を見直し、適用期限を3年延長。

中堅企業向けの新たな措置を創設。

中小企業向けの措置について、5年間の繰越控除制度を創設し、適用期限を3年延長。

教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置についての適用要件を緩和。

子育てとの両立支援や女性活躍支援に積極的な企業への税額控除率の上乗せ措置を創設する。

2024年3月19日 (火)

少額減価償却資産特例を2年延長 常時使用従業員数300人超を除外

 2024年度税制改正においては、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象法人から電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により法人税の確定申告書等に記載すべきものとされる事項を提供しなければならない法人のうち、常時使用する従業員の数が300人を超えるものを除外した上、その適用期限が2年延長される(適用期限の延長は、所得税についても同様)。

 中小企業者等が、取得価額が30万円未満である「少額減価償却資産」を取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を全額損金の額に算入(即時償却)することができる。

この特例の対象となる法人は中小企業者または農業協同組合等で、青色申告法人のうち、常時使用する従業員の数が300人以下の法人(「中小企業者等」)に限られる。

 この特例の対象となる資産は、取得価額が30万円未満の減価償却資産だが、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度となる。

 特例の適用を受ける資産は、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳と重複適用はできない。

2024年2月22日 (木)

法人版事業承継税制等の見直し 承継計画の提出期限を2年延長

 2024年度税制改正では、法人版事業承継税制における特例承継計画の提出期限が2026年3月末まで2年間、また、個人版事業承継税制における個人事業承継計画の提出期限についても2年間それぞれ延長される。

 法人版事業承継税制は、2018年度税制改正において、2018年1月から10年間の特例措置として、2024年3月末までに特例承継計画の提出がなされた事業承継について抜本的拡充を行われている。

 具体的には、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置が創設された。

 2024年度税制改正では、この特例措置について、コロナの影響が長期化したことを踏まえ、会社の後継者や承継時までの経営見通し等を記載した「特例承継計画」の提出期限が2026年3月末まで2年延長される。

 この特例措置は、日本経済の基盤である中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上が待ったなしの課題であるために事業承継を集中的に進める観点の下、贈与・相続時の税負担が生じない制度とするなど、極めて異例の時限措置としていることを踏まえ、2027年12 月末までの適用期限については今後とも延長を行わない。

あわせて、個人版事業承継税制における個人事業承継計画の提出期限についても2年延長される。

2024年1月22日 (月)

24年度税制改正大綱を公表 平年度で4兆円近い減収見込み

 政府は昨年12月22日、所得税等の定額減税や賃上げ税制の強化などを中心とした税制措置を盛り込んだ2024年度の税制改正大綱を閣議決定した。

今年召集予定の通常国会に税制改正法案を提出し、今年度中の成立を目指す。

閣議決定された税制改正大綱によると、2024年度税制改正による増減収見込額は、平年度で国税が2兆9010億円の減収、地方税が9733億円の減収となり、平年度で合計3兆8743億円と4兆円近い減収を見込んでいる。

 国税関係での平年度の減収項目は、個人所得課税での「定額減税」の▲2兆3020億円を始め、「住宅ローン控除の拡充」▲290億円、法人課税での「賃上げ促進税制の強化」▲3460億円、「戦略分野国内生産促進税制の創設」▲2190億円、「イノベーションボックス税制の創設」▲230億円など減収項目が並ぶ一方で、増収項目は、「研究開発税制の見直し」(230億円の増収)など少なく、平年度では差し引き▲2兆9010億円の減収となる見込み。

 地方税関係では、個人住民税の「定額減税」の▲9337億円(道府県税3288億円、市町村税6049億円)を始め、国税の税制改正に伴う「個人住民税」▲85億円、「法人住民税」▲247億円、「法人事業税」▲70億円の計▲403億円など減税項目がほとんどを占め、平年度では差し引き9733億円の減収を見込む。

このほか、国税の税制改正に伴う特別法人事業譲与税の減収額は平年度▲48億円、初年度▲1億円と見込まれている。

2023年12月 5日 (火)

令和6年度税制改正の議論が大詰め 中小企業への影響は?

 自民党の税制調査会が税制改正大綱の策定に向け本格的な議論に入った。

相続・贈与税制の大改正が盛り込まれた前年度と比べると小粒な改正になると予想されるものの、意外と中小企業に影響しそうな改正もありそうなので注意しておきたい。

一番の目玉となるのは、岸田首相肝入りの「所得税の定額減税」だろう。

「来年6月に一人当たり4万円(所得税3万円、住民税1万円)を差し引く」とのことだが、現時点で制度設計は不明。

「6月の給与支給時に所得税・住民税から4万円を差し引く」とすれば、金額によっては“引ききれない”という可能性もある。

過去に定額減税を行ったケースがあるためそれに準ずる形になると予想されるが、どのような制度になるか注目しておきたい。

16〜18歳の扶養親族を持つ人が受けられる38万円の控除については、政府が今年6月にまとめた「こども未来戦略方針」で児童手当の対象を16〜18歳に拡大することをすでに決定しているため、制度間の整合性の観点から廃止は既定路線だ。

それから「外形標準課税の適用拡大」。

外形標準課税は資本金が1億円を超える企業が対象だが、資本金を資本剰余金に振り替えることで課税対象から逃れる動きがあり、政府としてはこれに対応する狙いがある。

「資本金1億円超」の適用要件を「資本金と資本剰余金の合計額」に改める案が有力視されてきたが、これでは一部の中小企業への影響が懸念されることから、「資本金と資本剰余金の合計額が50兆円超」という案が浮上している。

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