年末調整事務を誤りなくスムーズに行うためには、従業員から提出された「扶養控除等(異動)申告書」などの必要書類が漏れなく正しく記載されていることが必要です。経理担当者が、従業員への記入の説明、及び記載内容を確認する際のポイントをまとめました。
平成23年分の年末調整のための準備
Q1 どのような書類が必要ですか?
A1 従業員から平成23年分の次の書類を提出してもらう必要があります。
・扶養控除申告書(異動)申告書
※平成23年分については、年初または入社時に提出されているかどうかを確認します。
また年内に扶養親族等の異動があった場合、その内容が反映されているかを確認します。
・保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書
・住宅借入金等特別控除申告書
添付書類
・生命保険料控除証明書(生命保険会社等発行)
・地震保険料控除証明書(損害保険会社等発行)
・国民年金保険料または国民年金基金の控除証明書
(厚生労働省または国民年金基金発行)
(その他)
①本年中途採用の人
・前職分の源泉徴収票(前勤務先事業所発行)
②住宅ローン控除の適用を受けている人(2年目以降)
住宅借入金等特別控除証明書(税務署発行)
※既に年末調整で住宅ローン控除の適用を受けた方で、翌年以降も同一の給与の支払者の下で年末調整をする場合は省略できます。
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関発行)
<<ここに注意!>>
一般に、年末調整の際、㍻24年分の「扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいます。これは、㍻24年分、すなわち来年1月からの源泉徴収事務のために必要な書類になります。扶養控除等申告書の内容に誤りがあると、源泉徴収税額に誤りが生じるため、記載内容を必ず確認してください。
特に配偶者や扶養親族がパート・アルバイトをしている場合には、「平成24年中の所得の見積額」を必ず記入してもらいます。
※㍻24年分の「扶養控除等(異動)申告書」は、来年の最初に給与を支払う前までに提出してもらう必要があります。
Q2 税制改正により、16歳未満の扶養親族に対する扶養控除が廃止されましたが、
記載にあたって気を付けることはありますか?
A2 .16歳未満の扶養親族については、「控除対象扶養親族欄」には記載することができなくなりました。ただし、「住民税に関する事項」欄については、記載が必要になります。
Q3 年の途中で出生や死亡などにより扶養親族に異動が生じた場合はどうなりますか?
A3 例えばその年に出生した子供は、その年の扶養親族になりますが、㍻23年分からは、A2のとおり「住民税に関する事項」欄のみ記載することになります。
死亡の場合は、死亡した年の扶養親族として、扶養控除を受けることができます。
ここに注意!
年初に控除対象扶養親族になると見込まれる者としてこの申告書に記載されている人が、12月31日現況において実際に控除対象になるかどうかを確認する必要があります。
特に奥さんや大学生の子供がパート.アルバイトを行っている場合や、年の途中に、子供が就職や結婚をした場合には注意してください。
Q4扶養親族の要件として、同居は必要ですか?
A4.扶養親族に該当するかどうかは同居、別居を問いません。「生計を一にする」
※かどうかで判定します。ただし、70歳以上の人や特別障害者の人を扶養している場合、同居、別居の違いにより控除額が異なるので、区分が必要になります。例えば、病気治療のため長期間入院しているような場合でも同居として取り扱われますが、老人ホームなどに入所している場合は別居として取り扱われます。
※勤務、修学、療養費等の都合上、別居していても、余暇には生活を共にすることが常であったり、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合を
含みます。
Q5 従業員Sの母親はパート収入(給与収入)が100万円、遺族年金が70万円の他に所得がありません。この場合、扶養親族になりますか?
A5. まず、遺族年金は非課税所得となり所得に含めません。一方、パート収入は給与所得となり、給与収入100万円から給与所得控除額65万円を差し引いた35万円が所得
となります.他に所得がないのであれば、合計所得金額は35万円となり、基礎控除の
38万円以下となるため、従業員Sの扶養親族に該当します。
図 パート収入100万円 遺族年金 70万円
35万円 給与所得控除65万円 非課税
合計所得金額 35万円 < 基礎控除 38万円
Q6.個人で事業を営んでおり、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、
妻と子に給料を支払っています。年末調整の注意点を教えてください。
A6. 奥様と子供から前述A1に掲げた必要書類を提出してもらい、他の従業員と一緒に年末調整を行うことになります。
ここに注意!
奥様や子供を青色事業専従者とした場合、奥様や子供の合計所得金額にかかわらず
あなたが配偶者控除や配偶者特別控除または扶養控除を受けることはできません。
保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書の注意事項
Q7 配偶者特別控除の注意点について教えてください。
A7 配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満の場合に適用があります。
配偶者の合計所得金額は配偶者特別控除申告書の
「配偶者の合計所得金額(見積額)」の表を使って正確に算出します
Q8 親族の負担すべき国民年金を支払った場合、控除の対象になりますか?
A8 本人が本人と生計を一にする親族の国民年金を支払った場合、本人の控除の対象なります。
保険料控除申告書の「社会保険料控除」欄に記載し、国民年金控除証明書を添付してもらってください。
Q9 生命保険料控除の添付がないものがあります。控除できませんか?
A9 翌年1月31日までに提出してもらうことを条件に控除できます。
地震保険料控除についても同様です。
(事務所通信 平成23年12月号)