2024年6月 1日 (土)

奥様の「へそくり」に相続税が・・?

 2015年の相続税改正で基礎控除が40%減らされてから、相続税の申告をしなければならない方が増えています。最近は、死亡者の約1割近くの方に申告義務が生じているようです。私の事務所にも相続税がかかるのではないかと心配して相談してくる方が増えています。先日も相続税の申告の相談を受けてざっと資料を拝見したところ、どうやら基礎控除以下なので申告は必要ないなと考えましたが、これまでの経験から、念のため亡くなった被相続人の奥様の通帳も見せてもらいました。すると「えっこれは・・・・」という金額が目に飛び込んできました。専業主婦の奥様名義の通帳に3000万円が預けられていたのです。奥様に尋ねると、ご主人は、生前、奥様に生活費として毎月の給料をすべて預け、その管理を任せ、自分は毎月決まった額を小遣いとしてもらっていたそうです。奥様はやりくり上手で、無駄使いをせずにコツコツといわゆる「へそくり」をしてきたのです。さらに奥様は純粋に、そのへそくりを自分のものと思われているのです。ですがこの場合、結論から言うと、亡くなったご主人の名義預金として相続税の課税対象になるのです。

 「えっそんな馬鹿な・・・」と誰でも思われると思います。しかし、これまでの税務訴訟で争われた事件の判決や裁決の中で示された名義預金の帰属の判定要素は下記の通りですから上記の場合は、奥様名義の預金もご主人の名義預金として申告せざるを得ません。

すなわち、①誰が稼いだ?②誰が管理・運用者していた?③誰が利益を受け取った?④なぜ名義人が異なる?⑤名義人と所有者の関係は?を総合的に判断されます。今回、取り上げた事例の場合は、ご主人が稼いだお金を自分名義にしていたのですから、明らかに名義預金としてご主人の相続財産に加えなければなりません。

 さて、難しい理屈はさておき、名義預金とされないためには、まずどうしたら良いかということが大事ですね。実行しなければならないことは簡単です。家族のお金が混ざらないように、稼いだ人と預貯金の名義人を合わせることです。たとえ家族であってもご主人が稼いだお金はご主人の口座に入れて、奥様が稼いだお金は奥様名義の口座に入れるのです。これが基本となります。「そんなこと言っても、妻が全部管理しているから・・・。」勿論生活費はどちらのお金でも問題はありません。残ったお金が問題なのです。残ったお金はご主人名義の通帳に戻す必要があります。「残ったお金は自由にしていいよ」とご主人から言われているから問題ないでしょうと言われる方がいますが、そのままではその残金は勿論名義預金としてご主人の相続財産になります。その場合は、夫婦間でもしっかりと「贈与契約書」を作成しておきましょう。・・口頭でも贈与契約は成立しますが、相続の調査の時に、ご主人はすでに亡くなっていますので、証明が難しいからです。そして110万円を超える場合は、贈与税の申告も済ませておきましょう。そうすれば後日「名義預金」として課税されることもないでしょう。奥様・・くれぐれも「へそくり」にはご用心ください。

2024年5月 1日 (水)

家族信託の活用

 当事務所では10年程前からこの「家族信託」に取り組んできたが、ここ数年でやっと周りにも浸透し始めた感がある。「家族信託契約」とは、家族に財産を信託して管理してもらうことで、受託者が親族で受けることが多いため「家族信託」と言われる。例えば下図のように委託者が父親で、受託者が長男、受益者は父親が健在のうちは父親で、死亡した際の次の受益者を指定しておくというものだ。この場合、信託契約を終了させることもできるが、指定された次の受益者で信託を継続していくことも可能だ。それに対して「商事信託」とは、信託会社や信託銀行に財産を託して管理してもらう形だ。信託会社や信託銀行は、営利を目的にするため、報酬も当然発生する。

 家族信託で一番多い活用法は、「認知症対策」である。認知症になると、遺言や不動産取引、相続税対策などが一切できなくなる。もちろん銀行口座も凍結され(家族が施設費用を引き出すなどに限り一部引き出しが認められつつあるが、資金使途の証拠資料を提出しなければならず手続きが面倒だ。)やむなく成年後見人を立てざるを得ないが、成年後見人は本人の財産の保護が目的なので、施設の費用を引き出すことはできるが、相続対策のためにアパートを建てることなどの行為は本人の財産を減らすことになるので出来ない。

 それに対し、信託にしておけば、自宅(自宅を信託しても権利として当然住み続けることはできる。)、アパートの建築や大規模修理や場合によっては売却までも受託者が実行することができる。

 この「家族信託」だが、当然のことながら家族に信頼して財産を託せる人がいないと成立しない。勿論この場合親族でなくて信頼している友人でも構わないが、現実には難しいと考える。ただ事業オーナーの場合には、自社の別法人(一般社団法人・不動産管理法人など)を受託者として、更に信託監督人を選任しておく方法を活用して信託契約する方法がある。その場合の信託契約も委託者(父親)と受託者(別法人)の間の信託契約はできるだけシンプルな形にして、信託監督人には事例の取り扱いが多い税理士、司法書士へ頼み、しっかり公正証書にしておく形を勧める。自分でできないこともないが、色々と落とし穴があるので、注意が必要だからだ。皆さんの早い決断を祈ります。

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2024年4月 1日 (月)

遺言について

 コストもかからず、すぐに取り組めるのが自分で遺言を書くことだ。(自筆証書遺言)通常は、白紙の用紙にボールペンか筆で書く。ただし、この自筆証書遺言だが、本文のすべて、署名、日付は必ず自筆で書き押印しないと無効になる恐れがある。何通か私も自筆証書遺言書を預かっているが、預けた人の中には、私より若い人もいて、その人に何かあった時に責任を果たせるかどうか気が気でならなかった。そんな時、2020年に自筆証書遺言の法務局保管制度が始まり、早速、私の手から法務局に預け替えしてもらうようにし、肩の荷を下ろした。法務局では、預ける時に最低限の形式的要件を満たしているかどうかの確認もしてもらえ、費用も格安なことから、すでに20241月までに67000件を超える保管申請があったようだ。家庭裁判所での検認も不要ということで、使い勝手が良いが、公正証書遺言と異なり、遺言の内容についての有効性までは保証されていない。

 また、自筆でしっかり遺言書を書いていても、自分に不利な内容を書かれた相続人の中には「本当に親が書いたものか」「親の本心ではないのでは」とか疑う人もいる。そこで出来ればこっそり書かないで、生前会議のようなものを開いて相続人に自分の意向を伝えておくのが良いと思う。また法的には弱いものの、遺言書の付言事項に自分の思いを書いておくことも後日の争いを最小限に抑えるのには効果が大きい。遺言漏れをなくすために、「残りのすべての財産は・・・」の文言を忘れずに遺言の中に入れておく必要がある。もし漏れていた場合には、その財産について相続人の間の遺産分割協議になり、まとまらないことが多いからだ。私は、出来れば少しコストがかかるが、公証人役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」をすることを勧めている。それは、せっかく残した遺言が無効になることがないからだ。そして、「自筆証書遺言」でも「公正証書遺言」でも最後に遺言執行者を指定しておくことを付け加えておく。

 私が永年にわたり、顧問させていただいた会社の会長が数年前に、長寿を全うされ、亡くなった。実はこの会長には何十年にもわたり、遺言を勧め、本人もその必要性を十分に理解し、何度も遺言を書こうとしたが書けないまま亡くなった。これは世間にはよくあるケースかも知れない。通常の場合は、相続人よる遺産分割協議が進まず、申告も未分割でせざるを得ないことが多々ある。しかし、この会長の場合は相続人の間で揉めることもなくスムーズに手続きは進み、申告も終了した。何故なら、何度挑戦しても遺言が書けない会長に私は「家族信託」を勧め、会長もそれならできそうだということになり、会長の資産をすべて盛り込んだ「家族信託契約」を締結していたのだ。当初の委託者は、当然会長、受託者はグループの資産管理をしている別会社、受益者は会長だ。死亡後の委託者、受益者を指定していたため、相続財産の移行がスムーズに進んだ。預金を信託にして預けていたので預金口座も凍結されず日常業務が停滞しなかった。不動産の名義も受益者の変更の登記なので、登録免許税も格安で済み、相続後の名義変更等の手続きのコストが抑えられた。そのようなことから次回は、「遺言」以上の強力な効果のある「家族信託」について書きたいと思う。

 

2024年3月 1日 (金)

分掌変更による役員退職金

最近、社長の退職金の相談が多い。丁度、創業者が70代に差し掛かり、後継者への事業承継が多くなってきたことがその原因だ。多くの場合は、創業者もまだまだ元気なので、代表権はなくなるものの会長として残るケースが多い。いわば「非常勤取締役会長」として新社長を後方支援する形だ。新社長も会長の実践を踏まえた長年の経験と勘は、とても心強く、まだまだ頼りにしているのが現実だ。会長となった前社長には、代表取締役退任に伴い、退職金が支払われるケースが多い。この場合の退職金の金額は、過大退職金として否認されないように支給することは勿論だが、それ以上に退任そのものを否認されないよう気を付けなければならない。退任したと認められなければ、支払った退職金は全額否認されるからだ。

 役員退職金の額は、法人税法上、損金算入が認められ、所得税法上も退職所得となり有利な取り扱いになっている。しかも役員退職金を出した翌期は株価も下がるケースが多く、そのタイミングで自社株の移転などの対策も取りやすいというメリットもある。そのため逆に否認された場合の負担は大変なものになる。否認された役員退職金は法人税では役員賞与と見なされ全額損金不算入となる。法人は修正申告をし、修正分の本税を支払う上に過少申告加算税と延滞税が付いてくる。また役員賞与=給与所得と見なされ、その分の源泉所得税を徴収しなかったとして、こちらも本税は勿論だが不納付加算税と延滞税が付いてくる。さらに社長自身も所得税の修正申告をすることになり、所得税が急激に増え、言うまでもなく、過少申告加算税と延滞税が付いてくる。これがいわゆる「トリプル課税」と言われるものだ。否認されないためには、あくまでも「実質的に退職したと同様の事情にあると認められる」ことがポイントだ。代表権を返上し、役員報酬を下げただけでは退職したとは認められない。退職した後も、退職前と同じように出勤して、取引先、銀行等と交渉したり、会社の採用や昇給に口を出したり、会社の大きな設備投資の決済などをしている場合には、退職前と同様の経営上主要な地位を占めていると考えられ実質的には退職してないとして、退職金は全額否認されてしまうので注意が必要だ。社長の中には、「調査が来るときには会社に来ないようにしますよ。」などと軽く考えている人もいるが大きな間違いだ、調査官はその会社の社員や取引先にも聞き取り調査を行うからだ。私は「退職金をもらい退職した社長は、週に半分くらいの出勤にして、できるだけ取引先や銀行の交渉には前面にでないように」と話している。つい先日までバリバリ仕事をしていた社長には辛いと思うが、仕方がない。いつの世も世代交代は避けて通れないものだ。そこで、新社長にいつも私がお願いしているのは、退職した会長への定期的な「報告」である。普段からコミュニケーションを取り良好な関係を保っていれば会長の孤独感も少しはやわらぎ、社長自身も後方支援を受けやすくなるからだ。新会長、新社長・・応援しています。

2024年2月 1日 (木)

常に自社の出口を考えておこう!

人はこの世に生を受けたときから死に向かっている。肉体は有限だからだ。会社は生身の肉体は持たないので、永遠の命かと思いきや会社も創業した時から倒産・廃業に向かっているのだ。会社を取り巻く環境は厳しく、事業者数は、創業20年で半分に減り、100年以上の老舗となると1%以下の生存率だ。この生存率を見ても経営者は常に出口も考えておく必要があると言える。以前にも話したが、会社の出口は5つしかない。それは、①上場②親族あるいは社員等への事業承継③M&A④自主的廃業による解散、清算⑤倒産・破産だ。①は全事業者の0.1%だけが成し得る特別なケース。私の知り合いでは今まで1人だけだ。今や東証1部で自己資本比率80%の超優良企業だ。会社設立時、私もお手伝いしたが、まさかこのようになるとは夢にも思わなかった。創業者が、時代のニーズを敏感に感じ、追い風に乗りながら進んだ結果だと思う。また⑤は当然避けなければならないケースだが、避けられない場合もあるのが経営だ。一度⑤のケースを選ばざるを得なくなったが、再起業し成功している人も私の知り合いにいるが、日本ではなかなか再起業は難しいというのが私の実感だ。それは破産することで多くの人に迷惑をかけ、信用を失ってしまうからだ。勿論、資金調達も難しくなる。2020年4月の改正民法で連帯保証人制度の見直しがあり、連帯保証人の負担が幾分緩和されたが、法人破産をすると個人破産も同時に行わざるを得ないケースがいまだに多い。そうなると個人の信用情報が信用情報機関に5年~10年登録されてしまい、再起しようにも金融機関からの借り入れができないのだ。また已むを得ず「破産」をせざるを得なくなった場合にも、先立つものはお金だ。お金が用意できないと破産手続きにも進めない。しかしだからと言って「夜逃げ」だけは決してしてはいけない。夜逃げをしてしまうと再起の道が完全に閉ざされるからだ。まずは専門家の弁護士に相談することが重要だ。しかしながら、多額の連帯保証を抱えてしまった経営者の方でも「自己破産」せず、金融機関の理解を得ながら規模を縮小して何とか頑張られている方もいる。お客様がいて何とか売り上げがある程度確保できる場合には、安易に自己破産せず上手に経営を続けていければ、信用も失わず、自宅も失わず暮らしていける。高齢の経営者が自己破産して、再就職は現実問題として難しい。年金は差し押さえもされないので、慣れた仕事で自分のマインドを保ちながら仕事を続けるのが一番と私は考える。安易な「自己破産」はできるだけ避けたいものだ。

さて、廃業や倒産・破産があり得ることだと心得てほしく、説明が長くなってしまったが、上手に事業承継している企業も多い。その多くは常に自社の数値を把握し、分析、反省、改善を欠かさない。そのために、経営計画や承継計画も立て、常に5年先、10年先のわが社の姿を検証しながら進んでいる。最悪の出口を避けるためにも日頃から自社の数値を把握し、経営計画をしっかり立てて進んでほしい。そうすれば必ず最悪の出口は避けることができると確信している。そのための後方支援のお手伝いは、是非我々にお任せください。

 

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