2025年6月 1日 (日)

外国人の日本不動産の購入

 私の趣味仲間の一人にタクシー運転手の方がいる。

先日、彼が「僕も北海道のニセコに行きたいよ。」と私に話してきた。

その理由を尋ねると、どうやら彼の友人がニセコでタクシーの運転手をしていて、中国人の顧客をタクシーに乗せるたびに高額なチップをもらえていることが原因のようだ。

 ニセコの雪は、世界一のパウダースノーと言われ、冬には世界中の富裕層がスキー、スノーボードを目当てにやってくるようだ。

冬のシーズン中は日本人の姿は見当たらず、外国人だけらしい。

そのためかレストランもホテルも料金は外国並みで、おにぎり一個1000円、ラーメン一杯2500円、カツカレー一皿3200円、ホテルにおいては一泊300万円以上のところもあるようだ。

ホテル清掃、飲食業、観光施設などのアルバイトは時給2000円以上だそうだ。

そのため、そのような高額な時給を出せない近隣の町の事業所はアルバイトも雇用することが出来ないまま、廃業に追い込まれたところもあるとのことだ。

ある訪問介護事業所などは時給1500円で募集したが5年間1件も申し込みがなかったそうだ。

外国人が沢山訪れて町が潤うから良いだろうという方もいるが、ホテルもレストランも所有は外資系の資本なので、外国人が使ったお金は外国人にほとんど回収されてしまう。

 外国人は、日本の不動産に関して、軍事基地、原発などの周囲などの一部を除いてほぼ自由に購入できる。

日本は世界で一番、外国人の不動産購入の規制が緩い国になっている。

一例をあげれば、すでに北海道の土地のうち静岡県以上の面積を中国資本が購入しているようだ。

また沖縄の石垣島や宮古島も中国資本にかなりの土地をすでに購入されているようだ。

5年前の2020年には30代の中国の女性の実業家が屋那覇島の51%を購入し話題になったことが記憶に新しいところだ。

他の諸外国は安全保障上も外国人の自国の不動産購入に関してはかなり厳しい規制を設けている。

まず中国においては、外国人が自由に土地を購入することはできない。

アメリカも外国企業がアメリカの不動産を購入する場合は政府の審査が入る。

オーストラリアは、外国人の土地所有には厳しい制限があり、新築不動産のみに限定している。

タイやフィリピン、カンボジアでは外国人が土地を所有することを禁じている。欧米諸国も厳しく規制している。

趣味仲間のちょっとした雑談から私もいろいろ調べて、日本の外国人による不動産購入の実態に驚いたので、今回は少しでも皆さんにお伝えしようと思った次第だ。

 上記のことはテレビでもあまり報道されないので、ぼんやりと知ってはいるものの詳しくは知らない方も多いと思う。

我々は、いろいろな正しい情報を知り、自分の頭でしっかり考えていくことが、仕事でもプライベートでも大事なことだと思う。

早いものです。

急に暑くなり、いよいよ今年も折り返し月に入ってきました。健康に気をつけて過ごされますことを心から祈ります。

2025年5月 1日 (木)

厳しい外部環境に企業はどう対応すべきか

 いくら募集をかけても応募者がこない。政府は賃金を上げろ、上げろと言うけれど売り上げも利益も変わらないのにどこに財源を求めればよいのか・・税金も重く負担に感じていたが、更に社会保険料の会社負担分が重くのしかかり、その双方の負担だけで利益の半分以上が吹き飛び将来に備えるための内部留保もままならない等々・・中小企業を取り巻くわが国の外部環境は年々厳しくなっている。

この傾向は大分前から感じてはいたが、何とか頑張ってきた。しかし、もうこれ以上は踏ん張れない状況にまで追い詰められているというのが現在の実態ではないだろうか?

そのことを裏付けるデータとして我が国の少子高齢化の傾向は2004年12月をピークに急激に進んでおり、人口は、年間約50万人~70万人ずつ減り続け2030年には高齢化率(65歳以上)も30%を超す勢いだ。

またその国が生み出す付加価値の指標である一人当たりの日本のGDPは2023年の統計では、世界で34位、さらに2024年では39位に下降する予定だ。2024年の企業倒産もこの物価上昇と人手不足で11年ぶりに1万件を超した。

 このようなわが国の経済環境の中で従来の経営戦略は役立たないとして、経営を登山に例え現在の外部環境の下では「下山経営」という名で経営に取り組むことを唱える大手経営コンサルタント会社がある。その内容はこうだ。

外部環境が良い時は、「登山経営」の手法が適しており、そのキーワードは①売上、利益最優先②急成長③大量販売、不特定客④大量採用、大量退職⑤オーナー一族の幸せとする。対して、外部環境の厳しい時は、「下山経営」に取り組むことが重要と唱える。その経営手法のキーワードは①幸せ度・ミッションを重視②会員化・特定客③少人数採用・退職0④安定成長⑤関係者すべての幸せとする。

すなわち、「下山経営」では一人一人の社員が生きがいを感じ、生き生きと働けて、退職しない職場作りをし、一人一人の業務の生産性を上げることを最重要課題としている。

私も「下山経営」の社員を大切にして退職しないような環境作りを目指した経営には大賛成だ。

ただこれを成功させるためには、一人一人の生産性を上げなければならないことは必須の課題である。

「机上で話すだけでなく具体的に指導してくれ」という方もおられ、それに答えるべく、4年前から実際に現場に入り現場改善ワークショップを実施してきた。

研修を受けていただいた企業からはいずれも大好評を頂いた。しかし、研修期間が約半年にも及び、費用も高額なことからなかなか気軽に取り組んでいただくというわけにはいかないのが実態だ。

そこでもっと手軽に取り組めて効果も出せるものはないかと検討していたところ私の所属する「一般社団法人日本中小企業経営支援専門家協会」(略してJPBM)で、「OTRS」というツールを用いて現場の動画を撮影することで、具体的に現場改善ができる仕組みが出来たので、早速導入することにした。

昨日「将軍の日」に参加いただいた企業さんに話すと早速実施してくれることになったので、まずは実践し、その結果をまたの機会に皆さんにお伝えできればと考えている。まずは一歩踏み出しましょう。

現場改善、経営改善に!経営者の皆さん応援しています。          

2025年4月 1日 (火)

究極の相続対策

 結論から言うと、究極の相続対策は、自分が稼いだ資産は死ぬまでに使い切ることだ。

そうすれば、遺産の奪い合いの相続争いも起きないし、相続税もかからないので、納税対策も必要ない。

相続税の節税対策も考える必要がなくなる。私の仕事も弁護士の仕事もなくなるが、そのような些末なことより一人一人が幸せになることが一番大事なのでここでは無視する。

相続税がかかるほどの資産を生前残された方の多くは、勤勉でまじめな方が多いと思う。

私の友人にも今まで不眠不休で頑張って十分な資産を築いているのに、まだ資産を作ろうと日夜頑張っている人が多い。

そんなに資産を残してどうするかと聞くと、年を取って病気になったらどのくらいお金が必要かわからないし、施設に入るにしてもどのくらいお金が必要になるかわからない。また相続税も心配だ。

そしてできるなら子供や孫にも残してあげたいし、世の中のために少しは寄付もしたい。と答える。

私の知り合いに死んでから自分の母校に寄付された方がおり、私は、その被相続人の母校を訪問し、手続きをお手伝いさせていただいた。

勿論、関係者の皆さんがとても喜んでくれた。子供に残してあげたい。

もし遺産を少し寄付したいと考えられる方がいたら、死んでからでなく今すぐしたほうが良いと思う。

生きているうちに自らが母校を訪問して寄付していたら被相続人も周りの感謝を肌で感じることができて、大いに感動を体験できたのではないだろうか。

子供や孫に残してあげたいときも同様だ。子供たちも若い時の方が収入より支出が多くて現金を必要としている場合が多いからだ。

私も若い時、海外留学をしたかったが、いくらアルバイトしてもお金が不足してあきらめた。

もしそのような時に子供にお金を出してあげられれば子供からも大いに感謝されるのではないだろうか。

ある方が90歳の母親に大金を誕生祝いをあげたそうだが、その母親は、息子のためにそのお金で、セーター1枚を買っただけで、残りは手も付けていなかったそうだ。お金の贈与ももらう人がほんとに必要な時に出してあげることが大事なのだ。

もし予定以上に長生きした場合に老後の資金を心配して、自分の資産を使えない人は保険でカバーする方法を活用してはいかがだろうか。

一生涯もらえる「長寿保険」のような年金保険などを上手に活用すれば自分が予定以上に長生きしたときも安心なのだ。

毎月亡くなるまでもらえ続けられる国の年金と同じようなものだ。

ただ予定より早く亡くなった場合には、掛け金以下の保険金だけもらうことになり、損することになる。

予定以上長生きした場合には、国から頂ける年金と自分の用意した年金で十分なのではないだろうか。

健康、時間、お金のバランスを考え、自分の余命も想定して、今しかできないことにしっかり投資して、体験を積み、良い思い出を一つでも多く作っていくことが一番の相続対策になるものと思う。

一度しかない人生。まずは自分のために有効にお金を使いましょう。

 

2025年3月 1日 (土)

建物を相続時精算課税で贈与!

 昨年のエッセイ「よくある相続対策・・落とし穴」(4)で「建物を相続時精算課税で贈与してはいけない。」と書きました。その理由は「相続時精算課税は贈与した時点での評価額で持ち戻されるからだ。建物は、年々評価額が下がっていくものと考えると・・・。つまり間違いなく評価額が下がると思われるものは、相続時精算課税で贈与してはならない。」ということです。建物の評価は将来必ず下がっていきますので、それだけを考えると確かにこの税制を活用すると不利になることは明白です。しかし、その建物が収益物件の場合は、一概に不利とは言えません。例えばアパートの建物をこの制度を活用して子どもに贈与した場合を考えてみましょう。相続税評価額2500万円(時価では約6000万円のアパートになります。)で利回りは6%と仮定します。子どもにはアパートの建物と毎年約360万円の家賃収入を渡すことができます。必要経費や税金などコストはかかりますが、手取りを貯めることで、子どもは、将来それを納税資金の原資にすることもできます。

 所得税は累進課税なので、所得が多いほど税額は増えます。高所得者の親から税率の低い子どもへ収益物件を贈与すれば、家族全体の所得税額を抑えるというメリットもあります。また建物だけでなく土地も一緒に移せば土地の値上がり分の相続税も抑えることができます。ただし評価額2500万円の建物だけでしたら「相続時精算課税制度」の適用を受ける届け出を出せば、その時点での贈与税はかかりませんが、贈与額2500万円を超えた分には20%の贈与税が課されます。納めた税金は、将来の親の相続の時に精算されるのですが、土地の評価が高すぎる場合には無理せず建物だけの贈与でも効果はあると考えます。贈与の時に建物が古い場合には親がリフォームを済ませてから贈与した方がいいでしょう。修繕程度のリフォームでは評価額は上がらないからです。

 注意しなければならないことは、贈与したい建物にローンが残っている場合です。贈与したい物件にローンが残っている場合には、通常の売買と見なされ、通常の取引価額からローン残高を差し引いた金額が贈与されたとみなされます。更に、親は譲渡収入があったと見なされ、譲渡税が課されてしまいます。これが「負担付贈与」といわれるものです。借金が残っている物件は、すべて返済してから贈与するのが良いでしょう。

 もうひとつ注意が必要なのは、アパートの賃借人の敷金です。アパートの建物を贈与するわけですから、当然、敷金も引き継がれることになります。この敷金は返済義務のあるローンと同じ性格のものなので、建物だけを贈与すると負担付贈与とみなされます。この場合は、敷金相当額の現金を同時に贈与することで、負担付贈与を回避することができます。さて現金を贈与したらその現金にも贈与税がかかるのではと疑問が残るかもしれませんが、この現金は贈与者が入居者から預かっていた敷金分(債務)を受贈者に移した(精算)だけですから、そこには経済的利益は発生しません。ですから贈与した敷金相当分の現金には贈与税はかからないのです。

 「負担付贈与」とならないためにも、ローンが付いていないアパートなどの建物を贈与する場合にも、忘れずに敷金分の現金も付けてあげるようにしましょう。

 

2025年2月 1日 (土)

自社の株式の評価が高い!

最近、顧問先の社長さんから、自社の株式の評価が高くなりすぎてどうしたら良いかという相談が増えてきた。自社株式の評価とは非上場の経営者一族が保有する株式の評価のことをいう。周知のように会社の株式には上場株式と非上場株式があり、上場株式は証券市場で株価が決まる。それに対して日本の中小企業の99.9%が発行している非上場株式は、特別な方法で、かつ複雑に計算をしなければならない。社歴の長い会社や業績の良い会社ほどその結果の数値を見て驚く。何故なら非上場会社の株価は、その多くは内部留保を加味しながら計算するからだ。そのため業績の良い会社ほど自社の株式の評価額は高くなる。額面の10倍から20倍になるケースが珍しくない。顧問先ではなかったが、私が相談された中には100倍近くになった会社もあった。その結果を見て呆然とする社長に、「社長の会社は優良企業ということの証ですよ。会社は利益を出すことが一番ですから。まずは慌てず一緒に対策を考えていきましょう。」と話したことを覚えている。

一概には言えないが、順調に利益を積み上げてきた会社には、しっかり後継者も育っているケースが多い。事業承継は自社株の引継ぎなしではできない。その後継者に社長が所有する自社の株式をいかにコストを抑えて渡すかが課題になる。一時的に株価の評価を引き下げて、そのタイミングで一気に後継者に渡すかあるいは、毎年少しずつ贈与するか、又は、事業承継税制を活用するかなどの方法が考えられる。しかし、ここで上手に事業承継するには忘れてはならないことがもう一つある。

参考に、まずは日本の老舗企業に目を向けて見よう。統計には、ばらつきがあるが、日本には5万社から10万社の創業100年以上の老舗企業がある。世界の約半分の老舗企業が日本に集中していると言われている。日本だけに老舗企業が集中している理由はいろいろあるが、ひとつに古くからある家督を継ぐという考え方が根底にあると考える。戦前約50年続いた日本の旧民法の「家制度」では、この考えが法制度化されたわけだ。「家制度」では家長となる長男がすべての財産を受け継ぎ、家族全員の生活を見る責任を負う。そして長男が家を継ぎ親の面倒をみるが、家の財産も受け継ぐというものだ。そこには他の兄弟から財産分けを主張されるような余地は当然なかった。家族は家長を中心に仲良く一丸となって家業にいそしむ。そのため家の財産の分散が避けられ、長男は家業を継ぎ、継続することができたのだ。それに対して戦後の新民法では法定相続分が定められ、しかも遺留分の制度も盛り込まれた。会社を継がない他の相続人に遺留分の請求をされ、もし現金がなければ「自社株」を分けざるを得ない形になる。結果、経営権が揺らぎ、経営の危機になることもある。現代の事業承継はこの点の対策を立てないと事業の継続が難しいのが現実だ。これは代々農業等を続けてきた土地持ちの方にも共通する悩みだ。対策として当主は後継者以外の遺留分にもしっかり配慮した遺言書を作っておくのが一番大事だ。

また事業承継税制を活用する場合は、「除外合意」という方法で遺留分請求対象から自社株を外しておかなければならない。株価を一時的に引き下げただけでは片手落ちであることを経営者の皆さんにはしっかり知っておいていただきたい。早いものです。今年ももう一か月が過ぎました。時が過ぎるのは早いです。一日も早い着手をお願いします。

«新年おめでとうございます。今年も「事業承継対策」を大きく前進させましょう。